14世紀のフランス。フランソワ(=コルトマール公)は幼いが父が戦いに出た城を守る者として生まれながらの君主としての風格を身につけている。母親の浮気も許さず、相手を刺し殺し三ヵ月間城の楼上に篭もる。時は流れて14世紀も半ば、城の王となったコルトマール公(ベルナール・ピエール・ドナデュー)は以前、彼の父がそうしたように、戦いに出て息子アーノルド(ニルス・タヴェルニエ)と共に捕われの身となる。城は娘のベアトリス(ジュリー・デルピー)の采配によって守られる。しかしいつ帰るとも知れぬ主に城は貧し、土地や家具を売って生計をたてていた。ベアトリスは共に過ごす事の少ない父を慕うが、父は君臨する者として娘への愛を表現できない。さらに離れている間に同じ強い血を持つ親子は、父は“悪”、娘は“善”へと持てるエネルギーを向け、対極をなしてしまう。ある雪の日、武人から賊と化した父は悪行を重ねながら帰城する。母を罵倒し、女たちを連れ込み、飽きるとまた略奪を繰り返す様をまざまざと見せられたベアトリスは優柔不断な弟を正しい道に導きながら、自分が父を愛せるように祈るのだった。コルトマール公は、自分の受けられる歪んだ愛は、娘からの聖なる裁きである事を悟っていた。そして、娘を犯し、その幸せな恋を奪い、最後の瞬間を待った。妊娠に気づいたベアトリスは、刀剣を手に父の寝所に入る。父は心臓の位置を示しながら、もはや自分の力ではどうにもできない運命をベアトリスに託し、血を流すのだった。