母を数年前に癌で亡くして以来曉陽(楊林)は、兄曉方(高捷)や妹の面倒をみている。家、夜学、そしてバイト先の夜のファースト・フードショップが彼女の場所。彼女にとってジゴロの兄の経営する金持ち女相手のレストラン“ピンクハウス”の眩いの世界はまるで彼女の読みふける日本のコミック「ナイルの娘」の中のように非現実的な幻想的な場所だった。都市台北は神秘の都、バビロン。そして兄のジゴロ仲間阿三(楊帆)は彼女のメンフィス王。しかし、やはり彼女にとっては家が現実だった。警官として他の町で勤務する父(崔福生)は兄と衝突を繰り返し、隣に住む祖父(李天祿)は言葉が聞き取れない。そんなある日阿三は組織の掟を破り、ヤクザの情婦と恋に陥ちて、ついには殺されてしまう。曉方は「ピンクハウス」を閉じ、盗みを繰り返すようになるが、やがて姿を消してしまう。そして勤務中の事故で寝込むようになってしまった父親の看病をする日々を送っていた曉陽はある日、曉方が盗みに入って殺されたとの新聞記事を見つけるのだった。幻想の世界が音を立てて崩れてゆくのを感じる曉陽の眼に映るのは今や不気味なほど静まり返った家の佇まいだけだった。