13世紀に建てられた古い寺院に一人の老人がたたずむ。この老人、ズアネッリ(U・ズアネッリ)は、この礼拝堂の音の反響のよさが自慢で、過去に数々の名演奏会が、行なわれてきたのを知っている写譜師である。今日のオーケストラ・リハーサルには、テレビ局が取材にくるということで、ズアネッリ老人も、次々に到着する演奏家たちも、心持ちウキウキと興奮している。早速、テレビの取材班は彼らにインタビューを始める。美人ピアニスト(エリザベス・ラビ)は、ピアノは玉座についた王様のような存在だと言い、フルート奏者はフルートこそ人間の声に最も近いと主張する。あるトロンボーン奏者はトロンボーンは天使の楽器だというが他のトロンボーン奏者は、誰もいない冬の海岸できく孤独な楽器だと言う。また、クラリネットのおかげでポー河の霧につつまれた生活を脱出して自分の人生を開拓することができたというクラリネット奏者等、みんな、それぞれに自分の楽器について意見を述べる。そこヘやがて指揮者(ボールドウィン・バース)が登場してリハーサルがはじまった。気持ちが昂ぶってくるとドイツ語が出てしまう指揮者だ。演奏中に、勝手な態度をとる演奏者がいる。ラジオのイアフォンでスポーツ番組を聞いていたり、上着を脱いで半裸で演奏する者もいる。カンシャクをおこす指揮者。“ダ・カーポ(はじめから)”という彼の声が響きわたる。マネージャーやユニオン代表の合図で休憩時間がとられる。早速、休憩中にもインタビューが行なわれる。練習が再開されると同時に、演奏者たちは巨大なメトロノームを持ち出し騒ぎ出す。さらに、マネージャーとユニオン代表の口論がはじまった。と、突然、地ひびきのような音と共に礼拝堂の壁がひびわれ、激しい震動が襲う。その震動のショックでハーピストが死んだ。演奏者たちは、厳粛な面持ちで楽器を取り直す。そして、再びリハーサルが再開された。指揮者の声が礼拝堂に響いた。“ダ・カーポ”。