文化七年(1810)一月十六日、江戸・木挽町。歌舞伎の芝居小屋「森田座」では『仮名手本忠臣蔵』が大入満員で千穐楽を迎えていた。その舞台がはねた直後、森田座のすぐそばで、仇討ちが起きる。芝居の客たちが立会人と化し見守るなか、美濃遠山藩士・伊納菊之助(長尾謙杜)が、父・清左衛門(山口馬木也)を殺害し逃亡していた男、作兵衛(北村一輝)の首を見事、討ちとったのである。雪の舞う夜、若き美男子が成し遂げたこの事件は「木挽町の仇討ち」として江戸の語り草となった。それから一年半後、同じ遠山藩で、菊之助の縁者を名乗る加瀬総一郎(柄本佑)が「仇討ちの顛末を知りたい」と森田座を訪れる。総一郎にとってこの仇討ちは、腑に落ちぬ点がいくつかあり、それを解明したいのだという。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞くうち、徐々にある事実が明らかになっていく……。