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日本映画のススメ Vol7 第86回 キネマ旬報ベスト・テン記念特集 歴代1位作品をピックアップします!

2012年 第86回 キネマ旬報ベスト・テン作品を一挙公開

今回で86回目を数える『キネマ旬報ベスト・テン』。そのベスト・テン入りした作品の中から17本を、2013年2月2日OPENの映画館、「TKPシアター柏 supported by KINEJUN」にて一挙上映します! 見逃した作品や、もう一度観たい作品を、ぜひスクリーンで!

  • 開催期間:開催中~2013年3月1日(金)
  • 開催場所:TKPシアター柏 supported by KINEJUN
  • (千葉県柏市末広町1-1 柏高島屋ステーションモール S館隣り)

※詳細や最新情報は公式HPをご確認ください。

TKPシアター SUPPORTED BY KINEJUN

2012年の映画界を総括する、2012年キネマ旬報ベスト・テンならびに個人賞の結果が発表されました。(詳細はこちら

1924(大正13)年に第1回が開催されたキネマ旬報ベスト・テンは、今回で86回を数えます(これはアメリカのアカデミー賞より1回多い数です)。

国内の他の主要な映画賞との大きな違いは、他の映画賞が選考委員による合議制でベスト作品や個人を決めることが多いのに対して、映画評論家や一般紙・スポーツ紙の映画担当記者たちからなる選考委員(2012年はのべ129名)が挙げたベスト・テンの順位や個人賞が誌面で全て明らかにされているということ。合議制による偏りがなるべくないよう、透明性・公平性をはかった結果なのですが、ファンにとってはベスト・テンの詳細についてオープンになっているので、誰がどの作品に入れたのか、1位と2位の得点差がどのくらいあるのかといったこと、等々、ベスト・テンに対する楽しみがより増します。

というわけで、皆さんもこのベスト・テン結果だけをただ知るのではなく、外国映画1位の「ニーチェの馬」と2位の「別離」はどれくらいの得点差があったのかとか、日本映画監督賞は周防正行さんだが、次点の監督は誰だろうとか、是非その詳細を掲載した『キネマ旬報』2月下旬決算特別号もご覧になって調べて下さい。(決算特別号の詳細はこちら

今月の「日本映画のススメ」の特集では、このキネマ旬報ベスト・テンの歴代1位作品の中から何本かピックアップし、その受賞理由や受賞コメントなどと共に紹介します。

文=編集部

1958年 日本映画第1位

  • 「楢山節考」

  • 楢山節考
  • 製作年:1958
  • 監督:木下惠介
  • ブルーレイ 4,935円(税込)
  • 発売・販売元:松竹

「ぼくがベスト・ワンをいただいたのは、昭和二十九年の『二十四の瞳』以来で、久方ぶりの受賞。嬉しいのは、ひとしおです。『楢山節考』は自分でも力を入れ、自信をもって発表した野心作でした。ヴェニス映画祭では、残念ながら落ちましたが、日本の観客には必ずわかってもらえると信じておりました。これが今回ベスト・ワンに選ばれたと云うことは、ぼくの考えの正しかったことを、改めて立証するものでしょう。次にぼくは、この映画でいろいろな試みをやりました。映画は、まだやらなければならぬことが、たくさんあると思います。あまりに実験的だと云うので、最初はずいぶん反対されたが、できるだけの冒険もやりました。これが、観客の方々にわかっていただけたのだから、もうぼくとしては何も云うことはありません。これからも、こうした試み、新しい傾向をどんどん発展させたいと思います。だが映画は監督一人ではできません。『楢山節考』をぼくのイメージ通りつくることができたのは、外ならぬスタッフ一同の努力です。ちょうど暑い時に、冷房もないステージの天井で、ライトの熱にやかれながら仕事をした人々、こんな原始的な設備の中で、不平も云わず働いてくれたスタッフには、感謝のしようもありません。ぼくは、今回のベスト・ワンに力を得て、ますます自分の野心を推進したい、日本映画をよりよりよくあるために力をつくしたいと思います。何よりも日本人にわかってもらえる映画。日本人にわかってもらえば、外国人をわからせることができる。ぼくは、このように信じているのです。」

木下惠介(1959年2月特別号)

1962年 日本映画第1位

  • 「私は二歳」

  • 私は二歳
  • 製作年:1962
  • 監督:市川崑
  • DVD 3,990円(税込)
  • 発売・販売元:角川書店

「助監督のころ、監督になったら、なんとかしてキネマ旬報賞を貰いたいなァ、貰ったら監督をやめてもいい、と思っていた。これは私だけではなく、当時の映画青年たちはみんなそう思っていたようです。さて、監督になってみると、そんなことは忘れてしまったように、ただフィルムにものを写すことだけに精を出して十年ばかりを過してしまった。一昨年『おとうと』がキネマ旬報賞に選ばれたとき勃然と、助監督時代に考えていたことを思い出して、あわてました。それほどのショックであり、感激でもありました。自分の出発はこれからだと思いました。しかし、監督をやめようなんて気持は微塵もありませんでした。人間なんて勝手なものです。二度目をいただくには、私としては少し早すぎるんじゃないかと危ぶまれますが、『私は二歳』は、一年八カ月のほとばしる生命力に対決するという、未経験の作業にぶつかったスタッフや俳優諸氏の努力と、フィルムの素材の限界をのり越えようとした夏十さんのシナリオに与えらえた栄誉を、私がかわりにいただくのだと思い、心からよろこんでいます。」

市川崑(1963年2月上旬決算特別号)

1963年 日本映画第1位

  • 「にっぽん昆虫記」

  • にっぽん昆虫記
  • 製作年:1963
  • 監督:今村昌平
  • DVD 2,380円(税込)
  • 発売元:日活
  • 販売元:ハピネット

「黙々と自分の仕事に精魂をこめる人で、決して自己を曲げることをしない人である。その、苦節何年もの忍耐とねばりが、一九六三年のスクリーンに、確固たる重量感をもった作品を生み出した。 」

編集部(1964年2月下旬号)

1987年 日本映画第1位

  • 「マルサの女」

  • マルサの女
  • 製作年:1987
  • 監督:伊丹十三
  • ブルーレイ 4,935円(税込)
  • 発売・販売元:東宝

「映画は作るときから映画史を意識しています。どんな作品でも、そのなかにくみこまれてゆくもんですからね。特にキネ旬の場合はね。そのなかに純娯楽作品として作った『マルサの女』がベスト・ワンとして入っていいんですか、って感じしますね。それにしても、いきなり、ヌーッと賞というのではなく、評論家の人たちには、現場も知ってもらって悪口もありの緊張関係を持ちたいものですね。作品だけでのコミュニケートじゃなくて。」

伊丹十三(1988年2月下旬決算特別号)

ちょっと休憩! 2011年 助演男優賞(でんでん)

  • 「冷たい熱帯魚」

  • 冷たい熱帯魚
  • 製作年:2010
  • 監督:園子温
  • ブルーレイ 5,985円(税込)
  • 発売元:日活
  • 販売元:ハピネット

「昔福岡で4年ほど、書店に勤めていたんです。店に『映画の友』や『キネマ旬報』といった映画雑誌が並んでいて、『キネマ旬報』は写真もしゃれた雑誌だなと思ったんです。その雑誌の賞をいただけたのは喜びもひとしおで、受賞の知らせを聞いたときは本当に嬉しかったですよ」「俳優は男優三段とか、段が付くわけではないので、こういう賞をいただくことで自分の仕事が形になるんです。人様に評価されるのが、これほど嬉しいものかと思いました。今後はいつか、『飢餓海峡』で伴淳三郎さんがやったような人間を演じてみたい。そのためにも己の人間性を磨いていこうと思っています」

でんでん(2012年2月下旬決算特別号)

1992年 日本映画第1位

「賞などは意識もしなかったし、ほとんど無関係って思ってたんです。映画を作っているときから“これは賞狙い”とか言うのは、ジョークだと思っていたら結構本気だったりして“信じられない”って感じでしたから。一般劇場用は二本目で、自分の力がどんなものか、どんなものになるかあてもなく、ただなんとか面白がらせたい、ということで作ったんです。それがいきなり賞の対象になって……お前プロなんだぞ、って念を押されたのかなって気がしますね。ちょっとやっかいな状況にもなるんじゃあないでしょうか、これから。賞をもらわないと物さびしく思ったりして。人間ってきっとそんなもんだろうし。ただ、一方では賞というのはもらえるならもらってしまった方が楽なんだろうってこともある。ボクの作品を全く見てない人たちにも、賞は肩書きになりますからね。肩書きがないことで自信を持って提出した作品が相手にされないってこともあるでしょうし。でも、賞というのは結果に対してのおほめで、ボクの次の作品に対する保証じゃないから、もらった瞬間は喜んで、あとは忘れることにしようと思ってます。」

周防正行(1993年2月下旬決算特別号)

2001年 日本映画第1位

  • 「GO」

  • GO
  • 製作年:2001
  • 監督:行定勲
  • DVD 5,460円(税込)
  • 発売元:東映ビデオ
  • 販売元:東映

「キネ旬は子供のときから購読していて、中学時代には読者の映画評とか何度も投稿したりしてましたけど、1回も採用されたことなかった(笑)。しかし、あの頃はまさか自分がこうなるとは予想もしてなかったし、『GO』を作っているときも、キネ旬は純粋に記録として残るから、ベスト・テンに入るといいなあとは思ってましたけど……」「監督冥利につきるというのは、正にこのことですね。僕は俳優という存在がないと仕事にならない。その人たちがいて、初めて僕の仕事が成り立つわけですからね。脚本の宮藤君とも、僕は俳優として知っているし、俳優から出てくる生理的な感情やアドリブといったアイデアを僕はいつもいただくんだけど、今回の宮藤君はそれを自分で言って自分で書いていた。まるで俳優と監督とのホン直しでもあったような気がしています」

行定勲(2002年2月下旬決算特別号)

2002年 日本映画第1位

  • 「たそがれ清兵衛」

  • たそがれ清兵衛
  • 製作年:2002
  • 監督:山田洋次
  • ブルーレイ 4,935円(税込)
  • 発売・販売元:松竹

「久しぶりにいただくんですね。もうキネマ旬報の賞には縁がないとおもっていたから、嬉しいですよ」「まるで自信なんかなかったんです。時代劇にはそれなりの作り方のノウハウみたいなものが必要じゃないかと思っていたわけですよ。そういう意味では、僕はまったくの素人ですから。でもそう考える一方で、今までの時代劇に対する不満もいっぱいあった。芝居の上で嘘っぽくなってしまうのは何故なんだろうとか、美術、小道具、衣裳、殺陣に至るまで、一度自分の納得のいくようなものを作ってみたい。それで時代劇としての格好が付くのかどうか。それは作っていても不安だったので、こういう形で評価されるのは、これまで受賞した時とはまた違った感慨があります」

山田洋次(2003年2月下旬決算特別号)

2007年 日本映画第1位

「正直に言って、公開中から、年が明けたら賞をいただいて、話題になってほしかった。僕は『Shall we ダンス?』のときも宣伝をがんばりましたが、今回はそれ以上に必死で宣伝しました。でも社会派作品というイメージもあってか、結局は『Shall we ダンス?』の半分の人しか見てくれなかった。受賞で話題になったら、映画館で再上映があるかもしれない、DVDを借りて見てもらえるかもしれない。そう思っていました。この作品を作った意図は、日本の裁判制度の現状を伝えることでした。いい映画にしたいとか、面白い映画を作りたいということではなかった。映画館で見て完結し、気持ちよく帰ってもらうのではなく、その後もずっと引きずってもらうのがテーマ。見なかった人に“おもしろかったのに残念だね”と言うのではなく、“絶対に見てくれ”と最後まで言い続ける映画だと思っています」

周防正行(2008年2月下旬決算特別号)

2011年 日本映画第1位

  • 「一枚のハガキ」

  • 一枚のハガキ
  • 製作年:2011
  • 監督:新藤兼人
  • DVD 4,935円(税込)
  • 発売元:東映ビデオ
  • 販売元:東映

新藤兼人監督の入場だ。孫の新藤風邪さんのサポートで姿を現すと、観客が、壇上の受賞者が全員立ち上がった。スタンディング・オベーション。喝采が響く、20秒、30秒、40秒……。「皆さんこんにちは。映画監督の新藤兼人です。私はこの作品で終わりなんですけど、本当に選んでもらってよかったな、と。こんなことがあるんですね。それならもっと頑張って……」その言葉に、大きな拍手。「まだまだ撮ってください!」と。「いや、頑張りたいんだけど、もう99歳ですからもうダメです。これは私の自叙伝です。兵隊に行って体験したことを原作にしました。だからこれは本当の話なんです。言い残さないで死ぬのは残念だと思いまして、私が抱えたテーマ、なぜ私は存在するかということを全部さらけ出して原作にしまして、脚色しまして、監督しました。だからこれは本当の話なんです……」孫の風さんが耳打ちして監督がうなずく。「“同じことを繰り返してるからしめろ”と忠告されました」会場からはあったかな笑い声。「でもこれは繰り返してもやめない。戦争へ行った、戦争とは何か、戦争は嫌いだ、戦争は嫌いなんだけど行った。なぜ嫌いなところへ行くんだ?日本人だから。キネマ旬報でベスト・ワンをいただくなんて、私みたいなものにあっていいのか、という気がしています。お礼を言いたい。お礼を言うのにも言い方がありますから。私が存在してるんだということがベスト・ワン。どうもありがとうございました」

編集部(2012年3月下旬号)
(2011年 第85回キネマ旬報ベスト・テン 表彰式レポート)