荻上直子さんの作品、何か観ているかと調べたがこの映画が初めてだった。
荻上の経歴をウェキおじさんに教えてもらうと、千葉大の画像工学科ですか。ちょっと縁がありますねえ。昔は印刷学科と言って、私がかつて勤めていた会社にはここの卒業生がたくさんいた。とても映画監督が輩出されるような学科じゃ無いんだけど、やっぱりアメリカ留学が転機になったんだろうなあ。そしてPFFから出てきた監督とのこと。こんなのを教えられると、PFFも観ないといけないか、と思うんだけど、あまりに数が多すぎてちょっと観きれないな。それに玉はめったにないだろうし。
原作も荻上直子とのこと。小品ながらなかなか面白いストーリーを作り上げている。映画自体もほんのりとした雰囲気で楽しく観ることが出来た。どんな人だって真面目に生きていけば、そして背伸びしなければ幸せは何処にでも転がっているよ。
主人公の山田(松山ケンイチ)は何かの犯罪を犯したのだろう(何をしたかは後に判る)、刑務所を出て水産加工会社で働くことになる。そこで毎日イカをさばく仕事をする。住まいは会社からの紹介なのか、古い長屋の一室。キッチン、ダイニング、風呂、それと6畳の和室。でもそれだけあれば暮らしていけるんだよね。暑くなってきたら燃えないゴミが積んであるところから扇風機を持ってくる。水産会社の社長(緒形直人)は彼のことを励ましてくれる。長屋の住人は変わった人ばかり。隣は自称ミニマリストの島田(ムロツヨシ)、他にお墓を訪問販売している溝口父子(吉岡秀隆)、大家は母子家庭の南(満島ひかり)、そして幽霊の大橋(田中美佐子)。
最初に溝口父子を見たとき、「どですかでん」の三谷昇演じる乞食の父子を思い出した。父子2人で一緒に動く姿は似ているなあと思った。そうしてみるとこの映画、「どですかでん」のあの変わり者たちが住む集落と似ている。この映画の長屋に住む住人たちもどこか社会になじんでいないが、それでもなんとか生きている。お互いが無関心なようで、お互いつながって支え合っている。それは山田の父親が孤独死して役所から遺骨を引き取る様連絡を受け、ラストにみんなでお葬式をするところまでつながっている。そんなところがほっこりさせる映画なのだろう。
それにしてもムロツヨシはどの映画に出てもムロツヨシだなあ。たまには全然違う役柄を演じないのかな。もうキャラがついちゃっているんだろうが、たまにはとんでもない殺人鬼とか演じてみたらどうだろうか。仲間の佐藤二朗なんか「宮本から君へ」では一目で嫌いになるようないやーな人物を演じていたよ。
満島ひかりちゃん、もう母親の役をやるようになったのですか。時の経つのは早いなあ。まだまだ、若者を演じる役者だと思っていたのに。
緒形直人はなんか画面で見るのは久しぶりだ。この映画では登場シーンはあまりないが、善良な社長を演じていて印象に残ったよ。
主演の松山ケンイチ、あまり好きな役者じゃ無かったけど、本作は良かった。少し好きになったかも。