「バラのつぼみ」
大邸宅「ザナドゥ」内で、かつての新聞王チャールズ・F・ケイン(演:オーソン・ウェルズ)が「バラのつぼみ」という言葉を遺して死去する。ニュース記者トンプソンは、上司の指示により彼の生涯を振り返ると共に、彼の死に際に放った「バラのつぼみ」の真意を探ろうとする。新聞社時代の仕事仲間、元妻、使用人の証言か新聞王の実像が浮かび上がる。果たして「バラのつぼみ」とは...。
主演のオーソン・ウェルズが監督も務めた本作は、実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしたこともあり、公開当時は様々な妨害に遭った。しかし年々評価は高まり、現在では映画史上の最高傑作と推す声も強い。個人的にはどうだったか?映画史上最高傑作は言い過ぎだと思う。劇中では様々な撮影技法が駆使されており、それをスクリーンで目にした当時としては割とセンセーショナル、或いは先鋭的に映ったことだろう。ただ、物語としては大風呂敷を拡げながら不完全燃焼だった感が否めない。時系列の再構築は良かったが、当時の撮影技術の限界か、あまり緊張感がないように映った。加えて、個人的に不満だったのがトンプソンだ。関係者にしつこく聞いて回る割には、肝心の「バラのつぼみ」についてあまりにもあっさりした態度をとっているのはいただけない。この辺りは非常に勿体ない。
尤も、(全く共感はできないが)ひとりのメディア王の孤独な生涯と、彼が人生の最終盤に求めた景色、それが明かされる冒頭と最後のシークエンスは良かったと思う。ケーンの真意が分かると、彼の半生はどこか「ラストエンペラー」(1988)を思わせるようでもあり、溥儀とコオロギの関係にも相通ずるようにも映ってくるのである。ケーンが最後の棲家に、フビライ・ハンがかつて過ごした都「ザナドゥ」(これは厳密には北京ではなくモンゴルだが)と名前をつけたのは偶然とはいえ面白い。
個人的には、自分もまたコレクター気質が強いためケーンと同じ轍を踏まないようには気を付けたい。それと、犬の前では「バラのつぼみ」という言葉を口にしないこと。これだけは留意しましょうかね。