グラン・トリノ

ぐらんとりの|Gran Torino|GRAN TORINO

グラン・トリノ

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レビューの数

160

平均評点

83.2(1417人)

観たひと

2336

観たいひと

197

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基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ / 社会派
製作国 アメリカ
製作年 2008
公開年月日 2009/4/25
上映時間 117分
製作会社 Village Roadshow Pictures=Malpaso Productions=Media Magik Entertainment
配給 ワーナー・ブラザース映画
レイティング 不明
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 ドルビーSRD/DTS/SDDS

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

誰にも心を開けず、死を待つだけの生活を過ごす孤独な老人と少年とが心を通わせていくヒューマン・ストーリー。「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー賞の作品賞と監督賞に輝いたクリント・イーストウッドが、激しくも静かに暴力の否定を訴える。製作・監督・主演をイーストウッドが務め、自身の主演作は「ミリオンダラー・ベイビー」以来となる。脚本は、本作が映画デビュー作となるニック・シェンク。他のキャストでは、「大いなる陰謀」のクリストファー・カーレイ以外は、ほぼ無名な新人たちで固めた。テーマ曲も、イーストウッド自身が手掛けている。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

妻を亡くしたウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、二人の息子や孫とも疎遠になった頑固で偏屈な老人だった。朝鮮戦争の帰還兵である彼は、戦場で人を殺した重い記憶から逃れられず、愛犬のデイジー以外には心を開けなくなっていた。妻と交流の深かった神父ヤノビッチ(クリストファー・カーレイ)からの懺悔の誘いも、ひたすら拒み続ける。かつてフォード社の自動車工だった彼の宝物は、ガレージで眠る72年型の愛車グラン・トリノだった。 ひとり暮らしを続ける彼の自宅の隣に引っ越してきたのは、東洋からやって来たモン族の一家だった。その息子タオ(ビー・バン)は従兄たちの不良グループからけしかけられて、グラン・トリノを盗もうとするが、それをきっかけにウォルトと出会う。タオの姉で人懐っこいスー(アーニー・ハー)とも知り合って、孤独だったウォルトの生活にも潤いが生まれた。父親のいない気弱なタオに対して、ウォルトは男としての誇りを教えていく。祖父と孫ほど年齢の違う二人は、次第に心を通わせあっていった。 しかし、不良グループたちは執拗なまでにタオを狙った。タオが傷つけられたことを知ったウォルトは、不良グループのメンバーのひとりを暴力で威嚇する。その報復として、タオの家は銃弾を浴びせかけられ、スーは暴行を受ける。 ウォルトの怒りは爆発した。一緒に戦いに行こうと叫ぶタオを部屋に閉じ込めたウォルトは、単身で不良グループの家へと向かう。彼らを怒らせたウォルトは、銃弾によって蜂の巣にされる。そして不良グループは警察から逮捕された。ウォルトの葬儀がヤノビッチ神父によって行われ、その遺言で愛車グラン・トリノはタオに与えられた。まるで新車のように輝くグラン・トリノには、ウォルトの半生が刻み込まれていた。デイジーを助手席に乗せてタオがハンドルを握ったグラン・トリノは、今日も街を駆け抜けていく。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2015年4月下旬号

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ軌跡)」、その正体は果たして?:映画のキャラクターに俳優自身が重なって泣いてしまう映画 「グラン・トリノ」のイーストウッドは引退後のハリー・キャラハンだ

2009年5月下旬号

評論家発映画批評:「グラン・トリノ」

評論家発映画批評:「グラン・トリノ」

2009年5月上旬号

巻頭特集 イーストウッドは「神」じゃない 「グラン・トリノ」:クリント・イーストウッド「グラン・トリノ」を語る

巻頭特集 イーストウッドは「神」じゃない 「グラン・トリノ」:対談 小林信彦×芝山幹郎

巻頭特集 イーストウッドは「神」じゃない 「グラン・トリノ」:作品評

2009年3月下旬号

特別企画 いま、アメリカ映画は本当に面白くないのか?:短評「レイチェルの結婚」「グラン・トリノ」

2019/08/14

2019/08/15

86点

VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 
吹替


老人が立ち上がって

「運び屋」のレビューに、ウォルト・コワルスキーが生き返って、アール・ストーンをやっている旨のものが少なからずあり、見直しをしてみた。

10年前の初見では、よほど雑な見方をしたせいか、幕切れの衝撃さに驚いて、そこに至る理解が薄かった。異文化との交流を経て結ばれた孫ほどの違いがある少年、少女との友情、そして自らの上官の命令なしで犯した殺人という戦争体験が、この老人の中では充分に醸成されていた。そのテンポは、まるで西部劇のようで、アメリカ社会の今昔も活写していた。

一人の老人の犠牲で、当然何も解決がされることはないけれども、一人の青年が新たに社会に立ち向かうことになったことは確かである。

2019/08/14

2019/08/14

80点

その他/TSUTAYADISCAS 
字幕


心に突き刺さる。

ネタバレ

ウォルトは朝鮮戦争で人を殺した心の傷を抱え、妻の葬儀でやってきた息子たちや孫たちともギクシャクした関係のままだった。妻の遺言で教会に来るよう説得しにきた若い神父にも暴言を吐いて追い返してしまう。
そんなウォルトの隣にモン族の一家が越してきた。苦々しく思うウォルトだったが、たまたま一家のヘタレ息子・タオや、気の強い姉・スーをチンピラから助けたことから一家との交流が始まる。従兄弟であるチンピラに唆されてウォルトの愛車グラン・トリノを盗もうとしたお詫びのため、母親と姉に連れられてウォルトの家にやってきたタオは、一族の決まりで1週間ウォルトの手伝いをさせられることに。追い返そうとしたウォルトだったが、モン族の女たちに押し切られ、渋々承知する。退役後にフォードで修理工をしていたウォルトのガレージでは様々な工具にで一杯だった。息子が父から教わるように、タオはウォルトからさまざまなことを吸収していく。大学へ行く費用を稼ぐため、ウォルトの紹介で工事現場での仕事を紹介してもらったタオだったが、ある日の仕事帰りに従兄弟たちチンピラに絡まれて、顔にタバコを押し付けられる。それを知ったウォルトは怒りに燃え、チンピラの1人を痛めつけて今後タオたちに関わるなと警告するが、彼らは後日報復のため一家を銃撃した上に、スーを攫って暴行する。自分を責めるウォルトは、1人で決着をつける決心をする。

"運び屋"を見たあと、どうしてもまたクリント・イーストウッドに会いたくなってこのDVDを借りてしまった。彼は家族との間に結べなかった絆を他人との間に深く結んでいく話を繰り返し映画の中で描いているが、それがとても心に突き刺さる。この映画ではそれに加え、理不尽な暴力に対して非暴力で対峙する男の姿も描かれているが、暴力の連鎖は何も生まないのだという強い思いを受け取った。

頑固で差別的だがどこか憎めないウォルトは、運び屋のアールと何処か似ている。隣から次々に花やてんこ盛りの料理が運ばれて、戸惑うシーンがとても好き。ウォルトを翻弄する気の強いモン族の女・スーもキュートで魅力的だ。
そしてタイトルにもなっているグラン・トリノ。車に詳しくない私の目から見ても、とてもクールでカッコいい。

2009/05/04

2019/07/31

100点

映画館/静岡県/MOVIX清水 
字幕


ウォルトは心で銃を撃つ

イーストウッド演じる主人公のウォルトは、こてこての差別主義だが何故かそれほど不快感はない。それはこの映画に散りばめられた程良いユーモアと、イーストウッドのキャラクターに共感できる部分も多いからだろう。床屋の友人との悪口の言い合いを見ても分かるように、その悪口雑言がコミュニケーションの手段となっている。どこまでも素直になれない不器用な頑固爺の唸り声に、ついこちらも表情を緩めてしまう。ヘソピアスのすぐむかつく孫娘には、観ているこちらがむかついてくる。

ウォルトは事件をきっかけに、モン族の若者タオに人生の先輩として指導する立場になる。彼には大人として、若者に教えられることがたくさんあった。老人に出来ることの素晴らしい特権だ。かなり偏屈ではあるが、ウォルトの揺ぎ無い生き様からは、タオは学べることがたくさんあった。そしてタオからの信頼を勝ち取り、頼られることの喜びを感じたウォルトがとった行為が新たな火種を生む。

ウォルトは朝鮮戦争のトラウマをずっと抱えて生きてきた。そんな過去に決着をつけたいとも思っていただろう。人を殺してしまうという行為が、その人間やその人間の身内、そして殺してしまった人間に、どのような癒せない心の傷を残してしまうのか。

ラストには涙が溢れた。ある特定の条件下のウォルトだからこそ成し遂げられた解決法だったが、タオやその家族を守るための最善策であったと思う。ウォルトこそタオの人生最高の恩師となるであろう。その想いや教えは、確実にタオの一生から離れ難い教訓となるに違いない。

1972年製グラン・トリノ。ウォルトの頑固さを感じるが、若者が憧れるに足る魅力の車だ。エンディングに聴こえてくる、最初の歌声はイーストウッドだろうか。胸に沁みる。

2009年キネマ旬報ベストテン第1位。

2009年

2019/07/10

90点

映画館 
字幕


不器用な頑固じじい

妻に先立たれ、頑固な元軍人で、自動車修理工もしていたウォルト(クリント・イーストウッド)は、若い神父や隣に引っ越してきたアジア人家族が気にくわない。ある時、大切にしているグラン・トリノを盗もうとした隣に住んでいるタオ(ビー・ヴァン)が、お詫びのために家の手伝いに来ることになり...。

クリント・イーストウッドすごすぎ!どうしてこんなに心に響く作品ばっかり作れるのだろう。全部観ているわけではないけれど、今のところ観た作品にははずれがない。今年は「チェンジリング」と、2本も観られて幸せ。タオ家族との交流を描く前半は緊張する部分もあるけれど軽やかに進み、後半は...。鋭くてひどい痛みを覚えながら、ほんわかした気分にもなれる作品でした。

2009/05/16

2019/05/09

75点

映画館 
字幕


孤高のヒーロー

絶賛するほどではないものの決して嫌いではない本作を含め、ここ十数年にわたるイーストウッド作品への雪崩を打ったような高評価には何だか違和感が募るばかり。その礼賛ぶりは一方向になびき易い日本特有のものなのか、それとも、監督としての再評価機運に乗じた世界的潮流なのか、といったことが気にかかる。

観ていて飽きることはないけれど、イマイチ盛り上がりにかける予定調和なドラマ展開に飽き足りない思いが募る。ただ、マッチョであることが美徳のひとつでもある米国的価値観をストレートに体現し、映画俳優としてのスタートから一貫して孤高のヒーローを演じ続けたC・イーストウッドの偉大なる俳優人生に敬意を表しての5点加算とした。

2009/05/04

2019/02/19

-点

映画館/東京都/109シネマズグランベリーモール 
字幕


イーストウッド記念碑的傑作!

 リモコン片手にザッピングしていたら、耳に飛び込むエンニオ・モリコーネの曲。
CSで『夕陽のガンマン』をやっていた。
クリント・イーストウッドのガンマンは中学生のときから私のスーパースターだったが、
この映画のイーストウッドは35歳。今観ると本当に若い。
リー・ヴァン・クリーフ40歳(!)。ジャン・マリア・ボロンテ32歳…ううう、信じられん。
そして悪党一味の中でリー・ヴァン・クリーフにコケにされて逆上するチンピラ、
ずっと印象に残っていたのだが、何と無名時代のクラウス・キンスキーではないか。
そんな具合にゴールデンウィーク最中の夕陽の眩しい午後にひとり悦に入っていた。
しかし、イーストウッド最新作のレイトに出掛ける前に『夕陽のガンマン』を目にするとは何という偶然なのだろう。

 そして、イーストウッドの最新作『グラン・トリノ』を観終わった今、
それは偶然などではなく、大いなる僥倖だったのではないかと思い始めている。

『グラン・トリノ』

 かつて、朝鮮戦争を戦った偏屈な老人ウォルト・コワルスキーは、妻を失い、子供たちにも疎んじられながら隠居暮らしを続けていた。親友もなく外国人を毛嫌いしていた彼の家に、名車グラン・トリノを盗みに隣家のモン族の少年タオが忍び込むが、ウォルトの構えた銃の前に逃げ去った。その後なりゆきでタオの姉を愚連隊から救ったウォルトは、彼ら家族の暖かさに親しみを覚え、タオに一人前の男として仕事を与えてやろうとするのだが…。

 もう何といっていいのだろう、イーストウッドが泣きたくなるくらい素晴らしい。
これはファンの贔屓目でも何でもなく、彼は78歳の肉体で映画を完全に支配していた。
そういえばアメリカ合衆国はしばし、父親として見立てることがある。
理由はよくわからないが、合衆国独立宣言または合衆国憲法に署名した政治的指導者、あるいは愛国者たちの指導者として独立戦争に関わった者たちを「合衆国建国の父」と定義したことが発端になっているかもしれない。
父親は強くなければならない。家族から疎ましがられようが、息子や孫に妥協しない。
それでいて、ただ強いだけでは父性は成立しない。見守ること、決断することも必要だ。
そんな保守、排他的で頑迷なほど愛国心にあふれる典型的な古きアメリカ白人の父性を、
イーストウッドはこれでもかと完璧に演じきっている。
モン族の家族との距離が近づき、タオとの交流が始まることに、ウォルト自身にも戸惑うこともあっただろうが、次第に目に優しさが灯ってくる過程が物語の進行とともに観る者を心地良くさせてくれる。
しかしハートウォーミングな映画では終わらない。いや終わらせない。
『グラン・トリノ』は“アクションスター”クリント・イーストウッド主演映画なのだ。

 監督・イーストウッドの素晴らしさについては、先の『チェンジリング』の時にたっぷりとオマージュを捧げさせてもらった。演出術については『グラン・トリノ』においても同じ言葉を繰り返すのみとなる。まったく素晴らしい、感服したい。
同時に『グラン・トリノ』のウォルト・コワルスキー役を代わりに演じられる俳優は絶対にクリント・イーストウッド以外にはあり得ないと断言させてもらいたい。
長い俳優のキャリアの内で、強靭なヒーローを演じ続けてきたスターは現在のハリウッドでは彼を置いて他には見当たらない。そして、これは実に重要なことなのと思う。
イーストウッドのフィルモグラフィのひとつひとつの記憶が我々の内にあるが故に、ウォルトの最後の行動がとてつもない説得力になっている。
そしてイーストウッドはそのことを十分に意識しながら、稀有な経歴を持つスターである自分自身を素材に見立て、監督の視線で映画を作り上げているのだから、そのプロデュース能力や恐るべしといったところだろう。

 嫌煙家であり、例え役柄であっても煙草を断っていたと伝えられるイーストウッドが、この映画では全編で煙草を吸う(しかし家中では煙草をやらないあたり、ウォルトはそこそこの恐妻家だったのではないかと想像させて楽しい)。
曖昧な記憶で自信があるわけではないが、イーストウッドがここまで煙草を吸う映画はマカロニウエスタン以来なのではないか。そこに我々が、かつて葉巻を煙たそうに咥えながらポンチョ姿で砂埃舞う荒野をゆくガンマン像を投影するのは簡単だったし、苦みばしった表情で舌打ちをしながら唾を吐くというお馴染みのスタイルを78歳の彼が踏襲したことに大きな意図を見出すことも簡単だった。
『ペイル・ライダー』で自らが演じてきたガンマンの系譜を伝説とし、『許されざる者』でウエスタンヒーローを総括したイーストウッド。
『グランド・トリノ』では遂にヒーローを演じ続けた自らの歴史を集大成として見せた。

 この拙文を読んで、『グラン・トリノ』を観てやろうかと思う奇特な方がいるのだとすれば、ぜひ『続・夕陽のガンマン/地獄の決闘』と『ダーティ・ハリー』のDVDを観ておくことをお薦めしたい。

 エンディングで流れる主題歌ではイーストウッド自身がワンコーラスを歌う。
「俺のグランよ~俺のトリノよ~♪」と。
タイトルロールを眺めながら思わず聴き入ってしまうほどの名曲であるのだが、
馬力は凄いが燃費は悪く、重厚だが小回りは利かなそうなレトロでアンティークな名車は、主人公そのもの。
そして間違いなくイーストウッドの半世紀にも及ぶキャリアの象徴でもある。