映画の出来はそれほど良くはなくても、時折気に入ってしまう作品がある。この映画は、とにかく自転車で一番にならなければ気が済まないチャリンコ野郎が、初めてロードレースの世界に足を踏み入れる。そして共に走る仲間たちの、自転車に賭ける熱い思いと、チームとしての連帯感を感じるにつれ、次第にチームプレーに目覚めていく姿を、それこそシャカリキな演出で描いていく。まあ、作品的には突っ込みどころはたくさんあるだろうが、ここは彼らのひたむきな自転車愛に免じて許していただきたい。僕は不覚にも思わずホロリとさえしてしまった。何事も一所懸命な姿を見るのは、とても清々しい。テルの走りもそれは滅茶苦茶で、涎垂らしながらの走行は決して見栄えのいいものではない。しかし、そのひたむきさは、時として美しくもあった。
オープニングの山の天辺まで続くと思われる、物凄い長さの坂。坂道になると何故か燃え上がるテル。限界を超えた時、彼の身体は飛翔する。そんな浮遊の快感が、彼を自転車の虜にしているように感じられた。彼は坂道の自転車では、誰にも負けたくなかった。それは子供時代の経験が、テルを負けず嫌いに育ててしまっていた。一人で勝つことの小さな喜び、自己満足を取るのか、自分がトップでなくても、チームとしての勝利を選ぶか。みんなの心が一つになった時、強いチームが完成する。
後半のクライマックスは、市民ロードレース大会だ。時折マンガチックな演出もあるが、なかなか盛り上がったと思う。ギアチェンジのどアップ。下りの坂道のスピード感はとても良く出ていて、少し間違えば大事故になる位のスピードを実感出来た。チーム優勝を目指して、それぞれの役割を果たすチームメイトの頑張りには拍手を送った。そして、確かに駆け引きもあるが、相手と正々堂々の勝負を挑むための、亀高の紳士的な行動にも好感が持てる。そして、彼らが自転車で走ることが、純粋に好きだと気付いてくれたことが、何よりも嬉しい。