「タイタニック」と同じように、回想形式で話は進みます。「タイタニック」が架空の恋愛を描くことで、処女航海での沈没というドラマ性を高めたのに対して、この作品は直球勝負という感じで、大和特攻をごくごく正攻法で描いていて、一捻りあってもよかったな、と感じました。
とはいえ、6億をかけたと言われる原寸大の大和のセットは、どの角度から見ても見劣りすることはなく、最後の戦闘シーンも迫力充分です。
この作品の公開からすでに20年がたちました。松山ケンイチや蒼井優が非常に若いですが、名優の一端を垣間見せてくれます。渡哲也、林隆三、奥田瑛二は木偶の坊という感じですが、意外に光っていたのが、長嶋一茂です。彼の役どころは、臼淵巌 海軍少佐。特攻前夜、意見の違いで殴り合っている兵士を制して、これから死のうとしている者どうしがケンカをしてどうするか、と次のように言います。長いですが、引用します。
進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。日本は進歩ということを軽んじ過ぎた。私的な潔癖や徳義にこだわって、真の進歩を忘れた。敗れて目覚める以外にどうして日本が救われるのか。今目覚めずして、いつ救われるのか。俺たちはその先導となるのだ。
このあたりが、この作品のポイントと思われました。
教養のない私は、この言葉が吉田満著「戦艦大和の最期」からのものであることを先日知りました(この映画の原作は、辺見じゅん「男たちの大和」ですが)。吉川英治が小説化を勧め、GHQの検閲で一旦全文削除されたあと、日本が独立回復した昭和27年に発表され、小林秀雄、白洲次郎、三島由紀夫などの絶賛を受け、世に広まり、日本人は戦艦大和の存在を知ったのです。
北緯30°43′17″、東経128°04′00″は、戦後60年を超え、80年にあっても、日本人の不敗の神話が眠る場所と言えるでしょう。