つづり方兄妹

つづりかたきょうだい|The Child Writers|----

つづり方兄妹

レビューの数

4

平均評点

72.6(8人)

観たひと

24

観たいひと

3

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1958
公開年月日 1958/8/23
上映時間 103分
製作会社 東京映画
配給 東宝
レイティング
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督久松静児 
脚色八住利雄 
原作野上丹治 
野上洋子 
野上房雄 
企画松本常保 
製作滝村和男 
撮影高橋通夫 
美術北猛夫 
安倍輝明 
音楽斎藤一郎 
録音西尾昇 
照明今泉千仭 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演織田政雄 野村元治(父)
望月優子 野村みつ(母)
藤川昭雄 野村圭一(長男)
竹野マリ 野村まち子(長女)
頭師孝雄 野村文雄(次男)
藤川清子 野村君子(次女)
上田智子 野村政代(三女)
香川京子 杉田はる(文雄の先生)
津島恵子 井東なつ(まち子の先生)
森繁久彌 河原(ブリキ屋の親方)
菅井きん 河原とき(親方の妻)
乙羽信子 はま(みつの妹)
左卜全 中原(医者)
二木てるみ 桂キリ子(文雄の友達)
池田栖子 まち子の友達
小笠原恭子 文雄の友達
桑名亮輔 喧嘩する六年生
国友和歌子 洗濯屋のおかみ
滝田裕介 新聞記者
酒井茂 キャメラマン
浜田寅彦 村木先生

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

モスクワ国際つづり方など種々のコンクールに第一位を獲得、話題となった野上丹治・洋子・房雄三兄妹の物語を映画化したもの。「駅前旅館」の八住利雄が脚色、「母三人(1958)」の久松静児が監督、「嵐の講道館」の高橋通夫が撮影した。出演者は望月優子・織田政雄・香川京子・津島恵子・森繁久彌・乙羽信子らに、京阪神の劇団関係子役から選抜された藤川昭雄・竹野マリ・頭師孝雄が三兄妹弟に扮している。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

枚方市のはずれ、柿の木の下にある小さなボロ家。ここにブリキ職人の野村元治と妻みつそれに六人の子供が住んでいた。学校へ行っている圭一・まち子・文雄の三人は、みな天才と評判をとるほど作文が上手だった。圭一は作文コンクールで貰った自転車で新聞配達をしソロバンを習っている。まち子はみつ口だが、それでも学校の先生になろうと思っている。誰からもフウフウという愛称で呼ばれている文雄は、小学二年生だ。頑固な気性の元治は、出先きで面白くないことがあると、仕事を中途にして帰ってきて、酒をあおってゴロ寝してしまう始末だった。こんな不甲斐ない夫を見てみつは夫婦別れをする決心で妹のはまの許を訪れた。けれども、戦争未亡人のはまの口から、元治が月々生活の足しにと、いくらかのお金を届けていると聞かされ、みつは夫の心遣いにうたれた。こんな兄妹の生活に流れこんだ大きなニュース--モスクワの国際作文コンクールの話である。三人揃って書いた綴方は、いじらしい祈りをこめて遥か北の国の都へ送られた。折返し受取の通知が来たが、なぜかフウフウのだけは来なかった。フウフウは、学校の帰りに茶色の仔犬を拾った。マルと名づけて可愛いがった。フウフウは新しい夢を得たのだ。ある雨の日。いなくなったマルを探して駈けずり廻った文雄は、その夜高熱を出した。家庭薬で間に合わせたりしている間に、容体は取りかえしのつかないものになってしまった。文雄はわずか八歳で亡くなった。悲しみの中へ、新聞社の人たちが駈けつけて来た。そして、フウフウの作文が、モスクワで一等当選になったことを知らせた。せめて文雄の生きている間に--一同は新しい涙を拭った。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1958年10月上旬40年記念号

日本映画批評:つづり方兄妹

1958年9月上旬号

新作グラビア:つづり方兄妹

日本映画紹介:つづり方兄妹

1958年7月下旬号

特別口絵:「つづり方兄妹」の久松組

新映画評:つづり方兄妹

1958年臨時増刊 名作シナリオ集(夏)

特別グラビア:つづり方兄妹

「名作シナリオ集」東京映画作品:つづり方兄妹

2020/02/22

2020/02/22

78点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


劇場鑑賞2回目―長男の言葉が胸に突き刺さる

 かなり気に入ったので、もう1回鑑賞した。貧しくとも元気いっぱいに生きる兄妹たち。その姿に、ふと、黒柳徹子がハイチを訪れた時のエピソードを思い出した。
 政治が不安定で経済的なしわ寄せが全て子どもたちに押し寄せているというハイチ。しかし現地の子どもたちはそんな貧しく、困難な暮しの中でも笑顔と感謝を失わなかったという。彼等との出会いを通して彼女は、人間は豊かさだけで幸せになるものではない、と感じたそうだ。考えてみると、いつの時代も、何処の国でもそうなのかもしれない。この映画を観ても、人の幸せとは何か、考えさせられた。
 それからやはり、終盤の長男の言葉が胸に突き刺さる。自分たちはただ好きで、楽しくて、皆に読んでもらえるのが嬉しくて書いていた。しかし作文が賞をとるたびに世間から何だかんだ言われる。ワイワイ騒がれては忘れられ、またワイワイ騒がれては忘れられる―そういうのはうんざりなんだ!…という。
 喜ばしいはずの次男の作文の入選を機に、長男は世間の冷たさ、卑しさ、浅はかさを思い知らされる。怒りを見せる。しかしそれをも受け止めなければならないと悟ったのか、その後「算盤が出来るようになって良いところに就職しなくちゃ…!」と吐き捨てる。そこにはもう、作文が好きだった少年の面影は、ほとんどない。これから彼等兄妹はどうなっていくのだろう…。

2020/02/16

2020/02/16

78点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


好きで書いていたのに・・・

 冒頭、スタッフのクレジットが何故か重複している。原版に起因するもののようだ。こういうこともあるのかぁ。キャストは最後にクレジット。
 主人公の一家の貧乏臭さが半端ない。まるで豚小屋のような家に住んでいて、父親は真面目に働かず、飯もろくに喰えない。風呂は月1回程度という極貧家族。まるで成瀬巳喜男監督作品によく出て来そうな家だ。
 その中でも長男・次男・長女は元気いっぱい、作文を書くことが大好きで、何よりの楽しみとしている。何かを書くことが好きだという気持ち、俺にもわかるような気がする。俺もガキの頃は日記を書いたり、手紙を書いたりするのが好きだった。手紙は今でも書いている。自分の思ったこと、感じたことを書くことで伝えたい―そんな気持ちに共感出来る。
 ただ、どうしてもこの家族(父親は別)につきまとう清貧的な雰囲気がどうも鼻につく。ストーリーも初めは退屈に感じた。「雑居家族」(1956年)とかにも観られるような、いくつものエピソードが淡々と、一本調子な感じで進んで行くように思えた―しかし、後半から急にそれが変わる。次男が拾って来た子犬、彼が皮肉なことに悲劇の種になるとは…。この展開が自分としては意外だった。
 次男の作文はコンクールで第1位に。しかし長男は嬉しくない。感想を聞く新聞記者に彼が言った―作文が入選しただけでワイワイ騒がれるのは嫌なんだ。どうせ皆そのうち自分たちのことは忘れてしまうんだ―そんな言葉が切ない。彼等兄妹はただ純粋に好きだったから作文を書いていた。しかしこの次男の功績が結果として、皮肉にも兄妹、特に長男から作文を書くことの喜びを喪失させることにつながってしまったのではないか。少年の、世間に対する怒りを込めたまなざしも印象に残る。本当に切ないラストだ。そこが従来の久松監督のホームドラマとは違うところだと感じた。

2020/02/12

2020/02/14

-点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 

『つづり方兄妹』。クレジットのスタッフが重複して表示。女性ナレーションで状況説明。枚方市香里(こおり)小学校に通う兄妹。綴方が大好きでコンクールで何度も受賞している。子役の頭師孝雄と二木てるみは『赤ひげ』の前に本作で共演しているとは知らなかった。家には畳の替りに藁敷き。

1959/01/27

2016/02/08

-点

映画館 


久松監督の名作

これほど哀れの涙を誘った映画はなかった。貧乏、言い換えれば政治の貧困に対して”つづり方兄妹”が強く明るく生き、社会を鋭く見ていることを映画はやさしく捉える。荻昌弘氏が「前半の活き活きした躍動的描写に感服した」と述べているが、正にその通りだった。特に、頭師孝雄少年の演技が生き生きして目を見張らせる。ほかの少年少女たち(藤川昭雄、竹野マリ、二木てるみ)も自由な演技。嫌味がない。望月優子も「米」に劣らぬ演技だ。織田政雄の酒のみの父もよい。描き方の不足な点は、香川京子や津島恵子らの教師。これを香川一本に絞ってたっぷり教室風景などをも入れて描いたら、「二十四の瞳」を凌ぐとも劣らぬものになったであろうと惜しまれる。映画の進行と共に社会の矛盾が暴かれていく。フーフー(頭師)が病に倒れたころからクライマックスに達し、貧乏のみじめさに同情と金持ちへの怒りの涙がわく。館内すすり泣き。私も涙が堕ちてしばし止まらない。長男の丹治(藤川)が弟妹の手を引いて地蔵さんの前を通って行く時、その背後で嘲笑する群衆。ここで貧乏人をバカにしたがる人間に対する怒りが再び起る。解説で「この子たちはこれから一体どうなるのか」と疑問を与えて終わる。しみじみ感動する味わいのある名作と言える。久松監督に敬意を表す。一番印象に残るのは、大きな病院にムリに連れられて行く金持ちの子をフーフーの兄と妹がじっと見ているシーン。涙が止まらない。