深い河

ふかいかわ|----|----

深い河

レビューの数

12

平均評点

64.7(38人)

観たひと

59

観たいひと

11

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 文芸
製作国 日本
製作年 1995
公開年月日 1995/6/24
上映時間 0分
製作会社 深い河製作委員会=仕事作品(製作協力*大広)
配給 東宝
レイティング
カラー
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督熊井啓 
脚色熊井啓 
原作遠藤周作 
製作総指揮今井康次 
松永英 
企画正岡道一 
製作佐藤正之 
プロデューサー香西謙二 
北川義浩 
神成文雄 
撮影栃沢正夫 
美術木村威夫 
音楽松村禎三 
録音久保田幸雄 
照明島田忠昭 
編集井上治 
監督補原一男 
助監督高根美博 
スクリプター小山三樹子 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演秋吉久美子 美津子
奥田瑛二 大津
井川比佐志 磯辺
沼田曜一 木口
菅井きん 塚田の妻
杉本哲太 江波
沖田浩之 三條
白井真木 三條の妻
内藤武敏 住職
香川京子 磯辺の妻
三船敏郎 塚田

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

遠藤周作の同名小説を原作に、インドの母なる大河ガンジスを舞台として、愛と悪と魂の救済をテーマに描く文芸ドラマ。インド政府の協力により、日本映画としては初めてインドにおける長期ロケーションが実現した。監督・脚色は「ひかりごけ」の社会派・熊井啓。主演は「レッスン Lesson」の秋吉久美子と「棒の哀しみ」の奥田瑛二。95年度キネマ旬報ベストテン第7位。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

成瀬美津子は満たされぬ心を埋める“何か”を求めて、インドツアーに参加した。観光客を乗せたバスは聖地ベナレスを目指し、大平原の中を疾走する。美津子は自由奔放な学生生活を送りながら、耐え難い空しさに心を支配されていた10年前を回想した。秋のある日、美津子はクリスチャンの大津と出会い、彼を誘惑して、「神を捨てろ」と迫った。彼女にとっては全てがゲームだったが、真剣に揺れ動く大津を眺めて、美津子は「自分は神に勝ったのだ」と思った。たが心の空虚さは広がるばかりであり、結局彼女は大津を捨てた。傷心の中で大津は神学を志し、フランスへと旅立っていく。数年を経て、ふたりはリヨンで再会した。美津子は実業家と結婚し、何不自由ない生活を送っていたが、心の空しさは満たされることはなかった。神学校で学ぶ大津は「日本に戻ったら、日本人の心に合う基督教を考えたいんです」と夢を語る。美津子は大津との再会で、かつて紙屑のように捨てた彼が自分の心に少なからぬ痕跡を残していることを意識し始めた。満たされない心が癒えぬまま美津子は夫と別れ、病院でのボランティアを続けていた。そんな彼女の下にインドのベナレスに行くことになったというイスラエルの大津から手紙が届く。ベナレスへ向かう車中には美津子のほかにも、苦悩を抱き“何か”を求めるためにツアーに参加した日本人たちがいた。家庭を顧みることなく一途に働き続けてきた壮年の男・磯辺の目的は、死んだ妻の生まれ変わりと思われる少女を探すことであった。またビルマ戦線での命の恩人である戦友が、死の床で打ち明けた衝撃の事実に苦悩する老人・木口もいた。一行はベナレスの街に到着。美津子はガンジス河とガートで一心に祈る人々に圧倒される。彼女は磯辺や木口との交流を通じて、それぞれが人生の苦悩を背負い、ツアーに参加してきていることを知った。ベナレスの街で大津を探す美津子は、突然背後から呼び止められる。そこには薄汚れた身なりの大津が立っていた。彼はベナレスの街で教会を離れ、今はヒンドゥー教徒たちと生活を共にしているという。彼の心は昔と少しも変わっていなかった。美津子は大津との再会の後、意を決したようにガンジス河に身を浸した。自分が欲しかったものが何であったか、少しだけ解ったような気がすると、美津子は自らに語りかけた。やがて美津子は、あらゆる人間の哀しみや苦悩、死までも包み込んで流れる“深い河”に、いつしか自分自身が溶け込んでいくような安らぎを憶えていくのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1995年9月上旬号

劇場公開映画批評:「深い河」

1995年5月下旬号

特集 深い河:座談会 熊井啓×森永秀史×平千佳

特集 深い河:印度雑記

特集 深い河:作品論

特集 深い河:撮影現場より

特集 深い河:座談会 熊井啓×森永秀史×平千佳

特集 深い河:印度雑記

特集 深い河:作品論

特集 深い河:撮影現場より

1994年10月下旬号

グラビア 《Talky Talk(News)》 :「深い河」クランク・イン

2020/10/21

2020/10/25

60点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 


三船敏郎最後の出演作

遠藤周作の原作小説は未読。様々な理由でインドのガンジス河へのツアーに参加する人々を描く群像劇。学生時代に後輩の神学生(奥田瑛二)を弄んだがために彼に会うために参加する秋吉久美子。先立つ妻(香川京子)から、「私は必ず生まれ変わるから、見つけてね」と言われ、インドに日本人女性の生まれ変わりの少女がいるという情報を確かめに参加する井川比佐志。インド国境の戦線で自分を助けてくれた戦友(三船敏郎)が病死したことを契機にインドを再訪することにした沼田曜一。それぞれに、生と死、生きる意味、宗教等々を考えさせる格調高い映画。香川と井川の夫婦が、エピソードも含めて最も印象的だった。秋吉と奥田の関係は、結局よくわからなかった。遠藤周作のメインテーマは、キリスト教→イスラム教→ヒンドゥー教と変遷するこの神学生だったのだろうか。三船は、かなり痩せていて、これが最後の出演作。熊井啓監督(脚本も)と三船のコンビは、「黒部の太陽」('68)「お吟さま」('78)「千利休」('89)と4度目。杉本哲太が髭もじゃのガイドツアー役。原一男が監督補だった。【生誕100年 映画俳優 三船敏郎】

2020/10/21

2020/10/22

-点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 

『深い河』。インド・ツアーの参加者たち。その中の3人(井川比佐志、秋吉久美子、沼田曜一)の思い出を紹介していく。戦時中のシーンは旧作「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」の映像を引用。若い沼田曜一が出演している。東大寺お水取りの炎が彼らが潜り抜けてきた戦火に重なってくる。

2020/10/21

2020/10/21

95点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 


熊井啓監督の壮大な映画

未見だった熊井啓監督作品、ようやくスクリーンで鑑賞。
雄大な風景の中、「人はどう或るべきか…」を描いたスケール大きくて、カラー映像が綺麗な傑作!

ロケ地も、インド・フランス・イスラエル・日本…と幅広く、ひたすら眼を見張るばかり…(^_^)
ほとんどが外国ロケで描かれ、出演も秋吉久美子・奥田瑛二・井川比佐志、そして三船敏郎、香川京子など。
今回は「三船敏郎特集」で上映されたが、香川京子の存在感が見事だった。

原作は遠藤周作。
なんと深いテーマ。
人生に空虚な想いを抱き続けている現代女性の「自分探しの旅」を描きながら、登場人物それぞれの人生も丁寧に描いた映画。

成瀬という女性(秋吉久美子)はインドツアーに参加した。成瀬は10年前、自由奔放な学生時代を送りながらも心に空しさを抱えていた。結婚してフランスに住むが、虚しさのためか離婚。そしてインドに何かを求めてやって来たのだった。

成瀬は学生時代にクリスチャンの大津(奥田瑛二)と出会い、誘惑して信仰を捨てさせた。「神とのゲームに勝った」ものの、心の空虚さを埋めることはできず、結局大津を捨てる。そして、いま彼女の乗ったバスは大津のいるベナレスに向け走っている…。

恐らく、こんな壮大で深淵な映画は二度と撮れないであろう。
熊井啓監督の代表作のひとつと言って良いと思う。

<映倫No.114401>

2020/10/16

50点

選択しない 


小賢しいテーマは悠久のガンジスに流されてしまった感

 遠藤周作の同名小説が原作。
 訳あってインドの聖地ベナレスへの旅行ツアーに参加した3人の男女の物語で、タイトルの深き川はガンジス川のこと。
 僧となった学生時代の男友達に会いに来た美津子(秋吉久美子)の物語を軸に、癌で亡くなった妻の転生という少女を探しに来た磯部(井川比佐志)、インパール作戦で戦死した戦友を弔いに来た木口(沼田曜一)のエピソードが絡むが、過去話が終わり現在形になると物語が若干弛む。
 美津子は敬虔なクリスチャンの男友達・大津(奥田瑛二)とからかい半分にセックスし捨てたことがきっかけで、大津はリヨンの修道院からイスラエルのガラリヤを経て、インドでヒンドゥー僧のように暮らしている。
 一方の美津子は浮ついた生き方を見つめ直すために大津に会いに来る。大津は貧乏僧となって貧者の救済に尽くすが、美津子との再会後に事故死してしまう。
 大津の汎神論とイエスの受難、人々の苦悩を受容するガンジスに流れなどが語られるが、要は不器用な大津の生き方に俗物の美津子が感化されてしまうというもので、大津の思想の勝利で終わる。
 もっとも熊井はそれを描き得たかというと疑問で、インドの大地と人々の姿に圧倒されて、それを収めるためにカメラを回すのが精一杯。美津子同様に小賢しいテーマなど、悠久なガンジスの流れに押し流されてしまった感がある。
 「すみません」を連発する奥田の演技が光るが、秋吉の突っ張った演技もオバサンとなっては無理がある。井川と亡妻を演じる香川美子、沼田の演技も渋くて泣かせる。(キネ旬7位)

2000年代

2019/04/16

55点

レンタル 


遺作

異国の地へと自分探しの旅に出る主人公をメロドラマチックに描いた物語よりは、これが遺作となった三船敏郎の最後の雄姿に胸が熱くなる映画だった。

2017/08/04

2017/10/14

60点

映画館/東京都/新文芸坐 


世界名所紀行じゃもったいない

熊井啓監督による遠藤周作原作の映画化最終作。過去の映画化作品が高評価を得ていることに異論はない。ところが、本作は……残念ながら、熊井監督、老いたな、という一言。

リヨンの古い街並み、ベナレスの雑踏、ガンジス河畔に集まる巡礼者……丁寧に描かれた美しい光景、珍しい光景だけど、それが世界名所紀行だけで終わってしまっている。それぞれの人生の終着点をガンジス河に求める日本人たちの描き方はそれなりに感動的だが、主人公とキリスト教との関係がよくわからない。ここにこそ、日本人とキリスト教の関係を生涯のテーマにした遠藤文学の核心があるのだろうに。

救いは、秋吉久美子の熱演。性に奔放な女子大生から有閑マダム、そして満たされない人生にさまよう女性までを時系列に演じて素晴らしい。サリーをまとい、ガンジス河で沐浴する姿は、神々しいまでに美しい。