シネマヴェーラ渋谷のニッポンノワール特集「俺にまかせろ」は、ラピュタ阿佐ヶ谷で2013年8月に観たことがある映画ながら、ほとんど覚えていませんでしたが、正当防衛で釈放された男が怪しいと佐藤允が潜入捜査する話が、いつの間にか麻薬団の摘発の話に刷り代わり、その麻薬団の何を掴もうとするのかも良くわからぬ変な脚本です。
「俺にまかせろ」は、殺された男・山本廉の恋人だった浅田美恵子に刑事としての素性を隠した佐藤允が接近し、山本の背後を探るうちに浅田と佐藤が恋仲になる話や、新任部長刑事の佐藤允と古いタイプの刑事である佐藤の父親・宮口精二との対比などが、捜査の話以上に映画の中心を構成しますが、バランスが悪いので、取り散らかって見えてしまうという欠点を持っています。
原作のせいなのか、脚本の須崎勝弥のせいなのか、監督日高繁明のせいなのか、とにかくお話のまとまりを欠いていますが、これが主演第1作である佐藤允のイキイキした魅力が映画をなんとか救っており、彼の芝居を観ているだけで画面を追うモティヴェーションは保てるのでした。