無法松の一生(1958)

むほうまつのいっしょう|Muhomatsu,the Rikisha-Man|Muhomatsu,the Rikisha-Man

無法松の一生(1958)

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レビューの数

47

平均評点

78.3(217人)

観たひと

360

観たいひと

16

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1958
公開年月日 1958/4/22
上映時間 104分
製作会社 東宝
配給 東宝
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督稲垣浩 
脚色伊丹万作 
稲垣浩 
原作岩下俊作 
製作田中友幸 
撮影山田一夫 
美術植田寛 
音楽団伊玖磨 
録音西川善男 
照明猪原一郎 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演三船敏郎 富島松五郎
芥川比呂志 吉岡小太郎
高峰秀子 吉岡良子
笠原健司 吉岡敏雄
松本薫 吉岡少年時代
笠智衆 結城重蔵
飯田蝶子 宇和島屋おとら
田中春男 俥夫熊吉
大村千吉 ぼんさん
多々良純 木戸番清吉
稲葉義男 巡査
宮口精二 撃剣の師範
土屋嘉男 高校の先生
左ト全 居酒屋の亭主
小杉義男 松五郎の父
有島一郎 オイチニの薬や
山田巳之助 奥大将
西条悦朗 副官
沢村いき雄 俥上の客
谷晃 虚無僧
中村伸郎 良子の兄
中北千枝子 良子の兄の妻
馬野都留子 茶店の女房
本間文子 茶店の老婆
上田吉二郎 茶店の客
村松恵子 町の娘弓子
高堂国典 町の古老
今泉廉 町の青年
渋谷英男 太鼓打つ青年
袴田康夫 競走する男
中野俊子 子を呼ぶ母親
長島正芳 酔払いの男
桜井巨郎 人足甲
熊谷二良 人足乙
久世龍 結城の乾分
平奈淳司 少年松五郎

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

岩下俊作の原作から伊丹万作と稲垣浩が脚色、「柳生武芸帳 双龍秘劔」の稲垣浩が再び監督する往年の名作の再映画化。撮影は「遥かなる男」の山田一夫が担当した。「柳生武芸帳 双龍秘劔」の三船敏郎、「張込み」の高峰秀子という顔合せに、芥川比呂志、笠智衆、宮口精二、多々良純、有島一郎などが出演。色彩はアグファカラー。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

明治三十年の初秋--九州小倉の古船場に博奕で故郷を追われていた人力車夫の富島松五郎が、昔ながらの“無法松”で舞戻ってきた。芝居小屋の木戸を突かれた腹いせに、同僚の熊吉とマス席でニンニクを炊いたりする暴れん坊も、仲裁の結城親分にはさっぱりわびるという、竹を割ったような意気と侠気をもっていた。日露戦争の勝利に沸きかえっている頃、松五郎は木から落ちて足を痛めた少年を救った。それが縁で、少年の父吉岡大尉の家に出入りするようになった。大尉は松五郎の、豪傑ぶりを知って、彼を可愛がった。酔えば美声で追分を唄う松五郎も、良子夫人の前では赤くなって声も出なかった。大尉は雨天の演習で風邪をひき、それが原因で急死した。残る母子は何かと松五郎を頼りにしていた。松五郎は引込み勝ちな敏雄と一緒に運動会に出たり、鯉のぼりをあげたりして、なにかと彼を励げました。そんなことが天涯孤独な松五郎に、生甲斐を感じさせた。世の中が明治から大正に変って、敏雄は小倉中学の四年になった。すっかり成長した敏雄は、他校の生徒と喧嘩をして母をハラハラさせ、松五郎を喜ばせた。高校に入るため敏雄は小倉を去った。松五郎は愛するものを奪われて、めっきり年をとり酒に親しむようになった。酔眼にうつる影は良子夫人の面影であった。大正六年の祇園祭の日、敏雄は夏休みを利用して、本場の祇園太鼓をききたいという先生を連れて小倉に帰って来た。松五郎は自からバチを取った。彼の老いたる血は撥と共に躍った。離れ行く敏雄への愛着、良子夫人への思慕、複雑な想いをこめて打つ太鼓の音は、聞く人々の心をうった。数日後、松五郎は飄然と吉岡家を訪れた。物言わぬ松五郎のまなこには、涙があふれていた。それ以来、松五郎は夫人の前から姿を消してしまった。雪の降る日、かつて敏雄を連れて通った小学校の校庭に、かすかな笑みをうかべた松五郎が倒れていた。残された柳行李の中には、吉岡家からもらった数々のご祝儀の品々が手をつけられずにあった。その奥底には敏雄と夫人宛の貯金通帳もしまわれていた。良子夫人は泣きくずれるのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1958年7月下旬号

日本映画批評:無法松の一生

1958年4月下旬号

特別口絵:「無法松の一生」の稲垣組

新作グラビア:無法松の一生

1958年春の特別号

日本映画紹介:無法松の一生

2023/08/14

2023/08/14

65点

VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 


初見。

落語「住吉駕籠」「蜘蛛駕籠」等で駕籠かきは非常に低級な職業、低劣な人種と見下されている。
この映画でも高峰秀子は息子に『松五郎さんはめぐり合わせが悪くて、駕籠かきをしているけれど』『人間は少将にもなれる人』などと言う。駕籠かきより軍人の少将の方が偉いのである。それは昭和の敗戦まで続き、今もまだ続く差別かもしれない。
奥さんは松五郎に突然、告白されてどう思っただろう?封建時代の武家の奥様が中間小者に告白されて、予想もしていなかったことで戸惑ってしまった、というところか?
だが、松五郎が死んで、息子と自分の名義で多額の貯金がされていたことを知り、彼を自分と対等か、人間性においてはもっと上等な人間だと思い知ったのではないか?
やはり運動会と特に祇園太鼓のシーンが傑出している。
あと子供の松五郎が父親に会いに行くシークエンス。

2023/03/19

2023/05/12

75点

映画館 
字幕


恋愛とは幸せになることではなく、返って不幸になることである。

阪東妻三郎の好演によって、本作の三船敏郎は見劣りするなんて評価があったりするのだが、そんなことはない。三船もとても好演している。これで彼が賞を取っていないのが不思議なくらいだ。稲垣浩監督も最初は当時40代で演じた阪妻のことを考えると、30代の三船にはちょっと若いかと考えていたそうだ。ところが「生きものの記録」の老け役を観て、これはイケると考え直したそうだ。だが、三船は阪妻の好演が自分にできるだろうかと出演を渋った。稲垣監督は阪妻のことは忘れて、この作品では三船なりの無法松を作ろうと説得したようだ。

そして三船はうまく無法松を演じた。無教養で乱暴な男ではあるが、情に熱いし女性には奥手であるというのは三船の柄にあっているのもあるだろうが、自分の地を演じると言うのは難しい。自分の持っている個性は客観的に見る事ができない。客観的に見て演じるのであれば、自分にはないキャラを演じた方が良いのだ。

三船と言えば黒澤明とのコンビが世界中を席巻したけれども、稲垣浩監督とも20本組んでおりこれは黒澤と組んだよりも本数が多い。二人は黒澤以上に気が合ったのではないだろうか。改めて三船と稲垣の作品を観直して検証したくなる。

この映画は邦画の恋愛映画としては屈指の傑作だと思う。恋愛映画と言えば女性が夢見そうなロマンチックな場面が印象的であれば名作になるだろう。だが、この映画は男目線での恋愛映画である点も恋愛映画としては異色であると思う。

無法松は軍人の未亡人に恋をした。だが、昔の日本男子なので素直に惚れちょるなんて言えない。そうでなくても自分は車夫で向こうは軍人さんの未亡人、身分の違いも感じただろう。真剣に恋をすればするほどプロポーズするのにためらうという気持ちはよく分かる。無法松と自分では性格が正反対であるが、同性としてこの主人公の気持ちはよくわかるのである。だからこそ切ない。

無法松が思いきってプロポーズをすればたとえ未亡人が亡夫に操を立てて断るという結末を迎えようとも、これで彼の気持ちのモヤモヤは解消されたはずである。これをいつまでも引きづっていたらなんにも前に進めない。彼は未亡人を愛するあまり、自分が汚く見えるというというのも、それも分かる。自分が未亡人に恋する資格がないと卑下する。自分をそうやって否定する。これが切ない。
大林宣彦監督は人を恋することの切なさ、辛さを描いてきたが、この稲垣浩監督も「無法松の一生」では大林監督と同じように不器用な男が恋したことの悲劇を描いている。

それにしてもこの未亡人の鈍感さはちょっとと思う。これだけ自分と息子によくしている無法松の態度に自分に気があるのかしらと少しも思わないなんてどんなに世間知らずなんだと思う。当時は上流階級の軍人の妻になるのであれば、まあ未亡人も蝶よ花よと育てられたのだろう。一般庶民とは感覚のズレがあるかもしれないが、これはいくらなんでも鈍感すぎる。この未亡人の鈍感さもこの悲劇を招いた一因のように思う。

だが、それについてはある人の動画を見てなるほどと思ったことがある。この映画の時代背景では日本人がお互いに助け合って生きるのが普通だった。したがって未亡人が無法松の親切は当たり前のこととして自分に恋愛感情があるとは思わなかったという意見である。うん、その通りかもしれない。当時の日本人の親切心が無法松の恋には仇となったわけだ。それも一理あるかもしれない。
自分の意見を曲げない頑固さと思うかもしれないが、それでもこの未亡人の鈍感さは無法松にとって罪だったと思うぞ。

2023/03/29

2023/04/03

80点

映画館/神奈川県/TOHOシネマズららぽーと横浜 


世界のミフネ

ネタバレ

明治後期、一本気な車夫が急逝した陸軍大尉の夫人に献身的に尽くしながらもひそかに思慕の念を持つ。
戦時下を理由に一部を削除、戦後はGHQの要請でさらに削除(4Kデジタル修復版で復元)を求められた1943年の「無法松の一生」で無念の思いを持った稲垣浩監督が、元の脚本に従ってリメークした作品。
1943年版は何度か見ているうえに本作品鑑賞の2週間前に再見したこともあって、自然と違いを見つけ出そうとしてしまう。このエピソードはなかったなあとか、この役はこの人になったのかとか。
中でも、主役の無法松こと松五郎を演じた三船敏郎で、阪妻ではまり役以上にはまっている役がどうなるのだろうという、よく言えば期待、悪く言えば懸念みたいなものが、ちらちらと頭の中を行き交っていた。
で、三船の松五郎もいいなあというのが見終わっての感想だった。一本気な感じが豪快に、未亡人への思慕が繊細に出ていた。
特に、未亡人(高峰秀子 さすが!)に思慕の思いを告げかけて「ああ、俺は汚い!」と嘆いてしょげかえる姿は目に焼き付く。
三船敏郎というと「用心棒」などの剣豪や太平洋戦争ものの将校役で豪放磊落(ごうほうらいらく)イメージが強いが、繊細さが要求される役も見事に演じられる俳優だと思っている。(疑うなら「七人の侍」で、みなしごになった赤ん坊を見て、それまでの虚勢を崩し「この子は俺だ!」と泣く場面を思い出してほしい。)
いまさらこんなことを言うのもヘンだが、さすがは“世界のミフネ”だと再認識した。

2023/03/28

2023/03/28

90点

映画館/東京都/TOHOシネマズ日本橋 


2本セット

久しぶりに映画を観て泣いた。
以前にも観ている映画なので、自分でも意外であった。

「『吉岡さん』と呼んでください。」

って、あんまりだ。

「奥さん、俺の心は汚ない」

全然汚くない。

阪妻版では検閲でカットされたシーン。
オリジナル脚本に戻しての撮り直し。
ストーリーとして、すっきりとした。
だから泣けたのだと思う。
阪妻版は泣くというより、心にぽっかり穴があく感じ。それもいい。

三船敏郎の渋い声もいい。
けど阪妻の高い声も、それはそれで良い。

2本でワンセットな映画である。

2023/03/28

2023/03/28

80点

映画館/大阪府/TOHOシネマズくずはモール 


坂妻版を今回見逃し残念

坂妻版は1週間しかやらず見逃し。以前に観ているが、これは絶対セットで観たほうが良い。AグループとBグループ交互でやるんじゃないの。同時にやると見逃す。まして1週間なら余計。

2023/03/26

2023/03/27

80点

映画館/石川県/イオンシネマ金沢 


1943年の阪東妻三郎オリジナル版に続けて鑑賞。確かに大幅にカットされたオリジナル版に比べると松五郎の悲恋話が中心になって情感あふれるものとなっている。三船敏郎も阪東妻三郎に負けず劣らずの好演。未亡人となる良子役は登場シーンが多かったせいか園井恵子よりは高峰秀子のほうが印象深かった。そしてほとんど同じ構図で撮っているにもかかわらず、やはり映像はオリジナル版の宮川一夫のほうがいい。