愛情の決算

あいじょうのけっさん|----|----

愛情の決算

レビューの数

13

平均評点

66.3(36人)

観たひと

54

観たいひと

4

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1956
公開年月日 1956/3/28
上映時間 112分
製作会社 東宝
配給 東宝
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダ-ド
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督佐分利信 
脚色井手俊郎 
原作今日出海 
製作藤本真澄 
宇佐美仁 
撮影山田一夫 
美術北猛夫 
清水喜代志 
音楽団伊玖磨 
録音宮崎正信 
照明石井長四郎 
編集庵原周一 
助監督川西正義 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演佐分利信 楢崎雄吉
三船敏郎 大平俊太郎
小林桂樹 武内廉平
千葉一郎 吉野八郎
田中春男 木原実
堺左千夫 東郷一彦
内田良平 田口良三
原節子 勝子
杉山治久 
渋沢準 
中村知 
八千草薫 朝子
藤間紫 八重子
宮内順子 武内マツ
浜田百合子 吉野カヨ
南美江 隣家の細君
賀原夏子 若い女
恩田清二郎 カストリ屋の主人
沢村いき雄 酒屋の主人
塩沢登代路 飲み屋の女
沢村宗之助 倉庫会社々長
水の也清美 倉庫会社々長夫人
土屋嘉男 池田
河美智子 佐田澄江
立花満枝 荷主のめかけ
三條利喜江 八重子の母
旗持貴佐夫 八重子の弟
白鳩真弓 貴金属店々員

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

『別冊文芸春秋』所載の今日出海の小説『この十年』を「見事な娘」の井手俊郎が脚色し、「黒帯三国志」に出演した佐分利信が監督、主演「吉川英治作宮本武蔵より 決闘巌流島」の山田一夫が撮影を担当した。主なる出演者は前記佐分利信、「驟雨」の原節子、「暗黒街」の三船敏郎、「乱菊物語」の八千草薫、「見事な娘」の小林桂樹、「黒帯三国志」の田中春雄、「チエミの初恋チャッチャ娘」の藤間紫、文学座の南美江、賀原夏子など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

昭和二十一年の夏、楢崎、大平、木原、東郷の四人が彼等の戦友で、比島で死んだ田口の未亡人勝子の家に一周忌のために集った。勝子には六歳の弘があった。その年の暮に雑誌社に務めていた楢崎は勝子と結婚した。楢崎、勝子、弘の三人の団欒は楢崎の戦友の吉野が和歌山の田舎から妻子四人をつれて転がりこんできたことから破れてしまった。そのうちに楢崎は脚の怪我がもとで失職してしまい、勝子は大平の世話で丸の内の劇場の売店に務めることになった。大学を出て新聞社に務めるようになった大平は勝子をひそかに恋するようになった。二十五年の秋に戦友達はまた会合した。武内は特需ブームで巨万の富をもつようになっていた。武内は家に戦災孤児の朝子を引きとっていた。武内の紹介で楢崎は倉庫会社に職を見つけることが出来た。吉野も武内の世話で仕事を得、楢崎の家を出て行った。ある夜大平は勝子に愛情を告白した。夫の愛情に不満を持つ勝子は大平のひたむきな愛憎に抗しきれず二人は結ばれた。大平は楢崎を会社に訪れ、勝子とのことを打ち明けた。楢崎は勝子にもう一度はじめからやり直そうというだけだった。また五年たち、武内は美しい娘に生長した朝子と結婚した。その頃、勝子は五年前に勤めをやめてから会わなかった大平に再会した。二人の情熱は再び燃えあがった。哀れみから結婚した楢崎との家庭生活は勝子には耐えられなかった。勝子の心を知る楢崎は折角親子三人の静な暮しを破りたくなかった。しかし、「何もなかったことにして出直そう」という夫の言葉にも勝子の決心はゆるがなかった。彼女は弘を楢崎のもとに残して家を出て行った。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1956年4月下旬号

作品研究:愛情の決算

日本映画批評:愛情の決算

1956年4月上旬春の特別号

新作グラフィック:愛情の決算

1956年3月下旬号

日本映画紹介:愛情の決算

2024/04/25

50点

選択しない 


原節子が不倫妻を演じる戦争の終わらない男と女の物語

 今日出海の小説『この十年』が原作。
 フィリピンで終戦を迎えた男と戦友の未亡人の戦後10年、戦争の終わらない物語。
 年長の楢崎(佐分利信)は6歳の子供のいる戦病死した田口(内田良平)の未亡人・勝子(原節子)に同情して結婚する。ところが上京した戦友の一家を同居させたり、怪我をして失業した楢崎が再就職できず、生活費を得るために勝子が丸の内のショップに働きに出たのを機に夫への不満を募らせ、戦友の一人・大平(三船敏郎)と不倫してしまう。
 物語は終戦10年後から始まり、誕生日プレゼントのカメラを買うために息子と銀座に出た楢崎が勝子の不倫現場を目撃してしまい、終戦から10年間の回想となる。
 その夜、離婚を決断した勝子は家を出て行くが、誕生日を忘れていた母に愛想を尽かした息子は楢崎を選ぶ。楢崎は家に供えていた田口の遺品を捨て、漸く戦争を終わらせることができる。
 戦争の傷から癒えない男の悲劇で、同時に戦争未亡人・勝子が自らの意志に従い戦争を終わらせる物語でもある。
 そのためクレジットでは原節子が主役となっているが、その影はやや薄く、佐分利信が主役の物語になっているのは演技力の差か。
 原節子が不倫妻を演じるのがイメージにそぐわないが、そのためか夫からも息子からも見放されてしまう悪妻になりきれてなく、ミスキャストに感じる。
 自分に正直に生きる女を演じ切れていれば、ただの不倫妻ではなく、楢崎同様に戦争に翻弄されたその悲劇性を際立たせることができた。
 他に小林桂樹、藤間紫。八千草薫25歳の若き姿も見どころ。

2024/01/06

2024/03/07

71点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


夫(佐分利信)と妻の愛人(三船敏郎)と妻の愛人を愛する娘(八千草薫)が重層的に絡み合う宴会シーンが良い

ネタバレ

佐分利信の監督作品は「悪徳」に続いて2作目の鑑賞である。
細かいショットを積み重ねてキレが良い。
この映画は後半になって、戦友たちが一堂に集まる場面になり、佐分利信と三船敏郎が久しぶりに再会するシーンでドラマとして盛り上がる。このシーンには他には小林桂樹、田中春男、藤間紫、それに八千草薫が顔を揃える。
三船敏郎は佐分利信の妻(原節子)と不倫の関係にある。佐分利信は妻の不倫の相手が三船敏郎であることを知っている。これに加えて、戦災孤児だった八千草薫が昔から異性として三船に強い関心があり、しかも、彼女は三船敏郎と原節子の不倫関係を知っていて透徹した眼差しで三船敏郎と佐分利信を見ている。
したがって観客は、佐分利信と八千草薫の視点が三船敏郎に絡んでいくメインストーリーと、同席している戦友仲間のかなり入り組んだサイドストーリーが微妙に交錯する緊張感を伴ってこのシーンの展開を見ることになる。
八千草薫の視点を加えたことで、メインストーリーの3人の愛憎関係の描写に深い陰影を与えた脚本(井手俊郎)の功績も大きい。

馴染みの俳優が監督をやる。カメラワークをはじめとするテクニックにどんな味を出してくれるのかと俗物的な観点から関心を持つ。最初はローレンス・オリビエの「リチャード三世」だった。それからヴィットリオ・デシーカ、ピエトロ・ジェレミそして佐分利信となり、山村聰、田中絹代と続いた。日本の場合は、レベルの高い作品を連発したが、何故か作品発表が長く続かなかった。特に佐分利信の場合、キネマ旬報ベストテンに一度に2本も入った実績を持ちながら、残っているフィルムが少ないのは残念だ。その意味で、この作品は貴重である。

2024/01/16

2024/01/16

65点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


煮え切らない物語

佐分利信、原節子、三船敏郎ってキャストが気になって観たのだが、他も豪華キャスト多し。
煮え切らない無口な夫に佐分利信、これは
ありがちな役柄。
で、その妻の原節子と、三船敏郎(佐分利信の戦友)が不倫カップルという意外な役柄。
表情を見てると最初から原節子と三船敏郎は両思いに見えるんだが、それならなぜ佐分利信と結婚したんじゃ。
それとも家で夫だけを待ってる妻にはなれない女だったんか。
とにかく結婚した経緯がわからないのでなんとも言えない。
物語自体も佐分利信の役柄のようで煮え切らなかくてちょっとイラッ。
そんな中で若い男の子みたいな八千草薫がキュート。なんか、オードリーヘップバーンって雰囲気。

2024/01/03

2024/01/03

63点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


戦争後遺症

フィリピンで戦死した兵隊の奥さん勝子(原節子)と結婚した楢崎(佐分利信)は戦争に奪われた青春を取り戻せないでいた。戦友たちにはヤミ屋で儲けたもの、失敗して楢崎の家に転がり込むものなどがいたが、大平(三船敏郎)は学生に戻っていた。
勝子は楢崎を愛しようと努めるが、楢崎は碁に夢中で一人自分の世界に閉じこもっている。このため勝子は愛情を感じられない夫に不満を持っている。社交的で絵画が好きな勝子は大平に好意を抱く。大平も同じくで、二人は結ばれるが、楢崎はそれを知ってもやり直そうと言い張る。勝子と大平は別れるが、5年後に再開する。そして勝子は楢崎と高校生の息子を捨て大平の元に走る。
当時としては大変な不倫だったろうが、貞淑な妻であろうとした勝子が、女としての生き方を求める勝子に変わっていく過程に焦点があたっている。楢崎の生き方も分からないではないが、ちょっとかたくなすぎる。もっと妻に優しく接しても良いのではないだろうか。もっとも、結婚までのいきさつが省かれているので、楢崎の勝子に対する気持ちや、勝子がなぜ結婚したかが分からない。それがこのドラマを分かりにくくしている。
終わりの一シーンは蛇足。電車の中で知り合いに会うことで勝子の意志がどうだったのか分からなくなる。あれがない方がすっきりする。

2023/12/15

2023/12/15

74点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


佐分利信、監督・主演。

クレジットは、まずバンと原節子と出る。
下手な映画ではないが、どうも見ててイライラするというか、ちっとも面白くならない。
原節子の不倫も、その相手の三船敏郎も、しっくり来ない。
ダメ亭主の佐分利も、はまってはいるが、実に不愉快な人物である。
黒澤の「白痴」での原は《みもの》だったが、あれは不倫が絡んでいたのか。
ドストエフスキーだが、不愉快な演技は通り越して凄味があった。

作中、原が、嫌いで嫌いでしょうがない佐分利に、おべっか笑いをつくりながら無理に会話をするシーンなんかゲンナリする。
私は少年時代に、仲の悪かった父と母をうんざりするほど見せつけられたので、魅力の無い不倫物や仲の悪い夫婦の話は本当にたまらん。

佐分利の暴力が出て来ないのは救いだったか。
でも佐分利の怒りの鉄拳はないものの、怒りのホースがあった。ビックリ!
演出としては《みもの》だった。

靴磨きの少年のような八千草薫が後半、綺麗になって意味深な女性を。
原節子の連れ子の男の子も描写が変に丁寧。
小林桂樹、田中春男らフィリピン帰りの戦友たちの描写も面白いのだが。
どうも映画全体を見た時、話の集中度に欠ける。

冒頭とラストが昭和31年(1956)。
真ん中は、長々と昭和24年(1949)から25年(1950)。
ほんとに日本は貧しかった。
俺は昭和28年生まれだから、だいぶマシになっていたのかな。
最終盤で、冒頭と同じ画面(同じ時)になる。
これはデヴィッド・リーンの「逢いびき」を真似たのか。

佐分利は、1950年代、監督として活躍し、ベストテン入選を連発した。
「執行猶予」1950・4位
「風雪二十年」1951・6位
「あゝ青春」1951・8位
「慟哭」1952・10位
「叛乱」1954・22位。(佐分利は病気で降りて、阿部豊・内川清一郎が完成)
硬派の作品が多いように見え、「愛情の決算」は不似合いの題材に感じる。
同世代のライバル?山村聰が、1953年「蟹工船」で監督デビューし、翌1954年「黒い潮」でベストテン4位入選を果たしている。

2020/09/16

2020/09/17

-点

映画館/東京都/神保町シアター 

『愛情の決算』。見たことあった。倉庫会社の脇の橋は東京都中央区の南高橋ではないだろうか。楢崎家の最寄り駅は世田谷線の山下駅。デハ200の姿も写っている。浮浪児姿の八千草薫は何と可愛いことか。夏には賀原夏子のシミーズ姿がよく似合う。ノンクレジットで佐田豊、中丸忠雄も顔を見せている。