戦国無頼

せんごくぶらい|Sword for Hire|----

戦国無頼

レビューの数

7

平均評点

68.3(31人)

観たひと

48

観たいひと

13

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1952
公開年月日 1952/5/22
上映時間 135分
製作会社 東宝
配給 東宝
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督稲垣浩 
脚本稲垣浩 
黒澤明 
原作井上靖 
製作田中友幸 
撮影飯村正 
美術北猛夫 
音楽団伊玖磨 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演三船敏郎 佐々疾風之介
三國連太郎 立花十郎太
市川段四郎 鏡弥平次
山口淑子 おりょう
浅茅しのぶ 加乃
東野英治郎 藤十
志村喬 研師惣治
香川良介 三好兵部
小杉義男 木下の武士
青山杉作 浅井の老將
三好栄子 老女中

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

製作は「霧笛」の田中友幸。井上靖の原作で「サンデー毎日」に連載された『戰國無頼』。最近松竹で「稲妻草紙」を自分の脚本でとった稲垣浩が監督し、「決闘鍵屋の辻」の脚本を書いた黒沢明が脚本に協力している。撮影は「結婚行進曲」の飯村正。出演者の主なものは、「西鶴一代女」の三船敏郎、「本日休診」の三國連太郎、「霧笛」の山口淑子、「慶安秘帖」に出演した歌舞伎の市川段四郎、「海賊船」に出た宝塚の浅茅しのぶなどのほか、志村喬、東野英二郎、青山杉作、香川良介などである。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

天正元年、織田信長の大軍に包囲されて、浅井長政の小谷城が陥ちたとき、その家臣で風雲の志をもった佐々木疾風之介、立花十郎太、鏡弥平次の三人の武士には、異った運命が待っていた。十郎太は疾風之介の恋人加乃を托されて信濃におち、二君に仕えずの気持から討死を覚悟で敵陣へ斬り込んだ疾風之介も弥平次も離れ離れなってしまった。疾風は深傷を負って倒れているのを野武士の藤十の娘おりょうに助けられた。おりょうは疾風に想いを寄せ、その小屋へ忍んで行った。これを知って斬りかかった藤十を疾風は心ならずも刺して逃げた。弥平次も生き永らえて海賊になっていたが、ある日子分の連れて来たおりょうを救った。一方十郎太は、加乃と共に研師惣治の家に厄介になっていたが、次第に加乃への思慕と共に功名心をつのらせ、かつての敵方織田家へ仕えた。天正三年、丹波の八上城を攻める織田勢のなかに十郎太の姿があり、八上城の城には疾風之介と豪の者として名の聞こえた三好兵部の姿が見られた。おりょうは疾風之介のあとを追ってこの城へ向かって馬を走らせ、加乃もやはり彼を慕ってさまよううちに弥平太に救われ、おりょうのあとを追う弥平太と一緒に八上の城へ向かった。十郎太はおりょうを捕らえてこれを囮に疾風を城へおびき出したが、かえって流れ弾丸に当たって死んだ。疾風が城へ戻ろうとしたとき、おりょうはその体にしがみついた。そしてこれを見ていた三好兵部は、疾風の健在を祈って縄梯子をひきあげてしまった。が、加乃と疾風の結ばれる運命を知ったおりょうは断崖から身を投じ果て、おりょうを失った弥平次は呆然として琵琶湖へ帰って行った。疾風之介は愛のため栄達の野望をすて、加乃と二人で旅を行くのであった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1952年6月下旬号

日本映画批評:戰國無頼

2024/01/30

2024/01/30

60点

VOD/YouTube 


戦乱の世。織田信長の軍勢に取り囲まれた浅井長政の陣営にいた三人の侍。忠義を全うすることを旨とする者。その男に義を感じる者。戦局不利と見てその場を逃れようとする者。この三人と二人の女の物語。山口淑子が父親の仇と思いながらも心惹かれてしまう女を演じるあたりはうまい。戦に向かう男たち、戦から逃れようとする女たち、そここに躯と化した兵士などの迫力ある描写は見もの。

2022/11/19

2022/11/23

60点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 


山口淑子の凄み

ネタバレ

戦国版の『君の名は』。ご都合主義丸出し。三国連太郎のオチは失笑もの。しかし、そんな事は隅に追いやるほど山口淑子が圧倒的である。時には三船に喰らいつくかのような野生的な恋心。そんなこんながあっても、恋人と自分の道を歩き出す三船。なんて大らかなラスト!

2022/11/19

2022/11/19

-点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 

『戰国無頼』。短縮版(105分)上映。原版は135分。30分欠落しているが特に違和感は感じない。やや暗めの映像で顔には汚し化粧をしているので役者の顔を判別しにくい。顔に大きな傷痕がある弥平次(三代目市川段四郎)のキャラがいい、忠義には篤いが女には弱い。「君の名は」のようなすれ違い。

2012/02/03

2021/06/02

80点

選択しない 


落武者三人の運命は

 井上靖の原作を、稲垣自身と黒澤明が共同で脚本を担当した一作。團伊玖磨が音楽を担当してゐます。時代は天正元年(1573年)、小谷城の戦ひで、浅井長政が織田信長に攻められ落城寸前といふところ。結果長政は自害し、家臣だつた疾風之介(三船敏郎)、十郎太(三國連太郎)、弥平次(市川段四郎)の三人のその後を描く作品であります。

 疾風之助には将来を誓つた加乃(浅茅しのぶ)といふ女性がゐましたが、出陣に際して十郎太に託す。疾風之介は戦場で暴れまくりますが、何分多勢に無勢、大勢の決つた戦に勝ち目はなく、傷つき倒れるのでした。意識を失ふ時に、何やらキラキラする演出が印象的。

 瀕死の状態の疾風之介を救つたのが、野武士・藤十(東野英治郎)の一味。殺してしまへとの意見もありましたが、藤十の娘・おりょう(山口淑子)が助け出します。次第に疾風之介に惹かれてゆくおりょうは、彼との逢瀬を重ねます。その現場を目撃した藤十は怒つて疾風之介に斬りかかりますが、弾みで自分を刺し絶命してしまつた。間抜けであります。そのまま姿を消す疾風之介。

 サテ加乃を託された十郎太は研師の惣治(志村喬)の元に身を寄せてゐました。身を立てるには戦で功を挙げるしかないとして、嘗ての敵、信長軍に加はります。丹波八上城の戦で、再会する疾風之介、十郎太、そして弥平太に救はれた加乃。おりょうは疾風之介と加乃の関係を知り絶望して、ああ......!

 戦国の世を借りた、落武者三人と若い女性二人の群像劇と申せませうか。戦闘場面も多くありますが、三船を巡る浅茅と山口との三角関係めいた物語の側面も強い。特に山口淑子の野性的な演技は特筆ものであります。何方かといふと、巻き込まれヒロインの印象がある彼女ですが、ここでは活き活きと能動的な女性を演じてゐます。対照的に浅茅の可憐さも中中です。正直、疾風之介は加乃と再会するまではおりょうに心が寄つてゐたのではないかと邪推致します。

 それだけに悲恋に終つた山口の最期の呆気なさは残念。三船と浅茅も、この先必ず幸せになれる保証はありますまい。しかし稲垣浩監督はジメジメしません。からッとしてゐます。この空気感、現在の日本映画に乏しいと感ずるのはわたくしだけでせうか。ああ、わたくしだけですか、それならいいけど。

2020/12/13

2020/12/24

80点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 


山口淑子の魅力

稲垣浩作品としてはそれほどの出来ではないが、三船を中心に据え、主要人物が三船を探し回る構成。言うなればマクガフィン的役割が三船で、悪役は三國が引き受けている。稲垣は、役者の魅力を引き出しているが、なかでも山口淑子に魅了された。山口淑子はほかの作品では環境に流されるだけの、受け身の女性を演じているが、本作では一途に三船を追い続ける、幸せは自分の努力で獲得するものというキャラクターで、これほど生き生きとした山口淑子は初めて見た。

2017/02/22

2017/02/22

70点

映画館/東京都/新文芸坐 


いつの世でも戦争は残酷

信長に滅ぼされた浅井長政の家臣三名は逃げ延びて落武者となり、それぞれの思いの道を歩む。
彼らに付かず離れず女二人も慕うように後を追う。
そして三年後、三人は戦場で再び出会う。

戦国時代、運命に翻弄される男女を描いた作品であるが、男3人よりも女、とりわけ山口淑子演ずるおりょうが一番存在感があって他を圧倒している。
煮え切れない三船敏郎に対して、ほとばしる想いを隠しもせず追い続け、叶わぬと知るや自ら命を絶ってしまう姿はいじらしくもあり、あっぱれでもある。