1966年、松竹大船撮影所製作「炎と掟」(脚本は梅次と立花明のオリジナル)は、安藤昇主演のヤクザ映画で、ある町の南北に分かれて河野秋武の組と菅原謙二の組が対立している中、河野の組幹部である安藤が、親分を殺された復讐を果たすという、ありふれた筋立ての映画ですが、安藤が少年時代から想いを寄せ続けている“崖の上の家のお嬢様”高千穂ひづるへの思慕を物語の中心に据えている点がユニークで、安藤が住むアパートの向かいの男が弾き語りするメランコリックなラヴソングが安藤の記憶を呼び覚ますあたりが梅次らしいところですし、回り燈籠が小道具として活用されている点も工夫が効いています。
ヤクザ映画としての作りの面では、河野秋武の組の幹部で安藤昇とは兄弟分に当たる菅原文太が密かに敵方・菅原謙二と繋がる一方、河野とは兄弟分の安部徹が、表明上は河野の味方と言いながら実は河野の縄張りを狙っており、そんな関係の中で安藤昇は微妙な立場を強いられるあたり、いくつかの輻輳したしがらみを劇構造の中に盛り込むのを得意とする梅次の特徴が出ていますし、結局最後には三つ巴の勢力が一堂に会して拳銃で殺し合いを演じるあたり、梅次らしい決着の付け方でした。
まあ普通の出来のヤクザ映画ではありますが、つまらなくはありません。