この声なき叫び

このこえなきさけび|The Soundless Cry|----

この声なき叫び

レビューの数

6

平均評点

70.3(17人)

観たひと

25

観たいひと

3

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1965
公開年月日 1965/1/30
上映時間 100分
製作会社 松竹大船
配給 松竹
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督市村泰一 
脚色柳井隆雄 
石田守良 
今井金次郎 
原作西村京太郎 
製作脇田茂 
撮影小原治夫 
美術熊谷正雄 
音楽小川寛興 
録音熊谷宏 
照明佐久間丈彦 
編集杉原よ志 
スチル篠崎友克 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演香山美子 石母田幸子
田村正和 佐々木晋一
南田洋子 松浦時枝
園井啓介 古賀
荒木道子 佐々木辰子
菅井きん 田辺ウメ
志村喬 大坪
笠智衆 館野
野々村潔 城東署々長
高野真二 木崎警部補
庄司永建 田島刑事
宗方勝巳 広瀬刑事
倍賞千恵子 聾学校教師
丹英二 樫村雄介
木村俊恵 樫村富子
山本幸栄 北見徳助
北村和夫 宝井清太郎
林家珍平 町工場の工員
吉野憲司 町工場の工員
田原弘二郎 町工場の工員
青山宏 クリーニング屋
水木涼子 たばこ屋のお内儀
中田耕二 陶東飯店主人
世志凡太 町村
信欣三 裁判長

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

西村京太郎原作“四つの終止符”を「女嫌い」でコンビの柳井隆雄、石田守良、今井金次郎が共同で脚色「孤独」の市村泰一が監督したシリアスドラマ。撮影は「落第生とお嬢さん」の小原治夫。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

佐々木晋一は、生れながらにして耳が聞こえないという不幸を背負い、病弱な母との生活を支える工員であった。不幸に閉された晋一の心は、工員相手のバーに勤める石母田幸子に出会って、わずかに明るさを加わえた。そんな晋一を誰よりも喜んだのは母の辰子であった。晋一が幸子から母の好物を買うようにともらった金で、ワカサギを買ったその日、辰子は白い汚物を吐いて死んだ。原因は晋一の与えた栄養剤の中に砒素が入っていたのだ。晋一は母親殺しで逮捕された。たどたどしい言葉で、耳の聞えない晋一に、訴えるすべはなく、同情を寄せる者もなかった。だが幸子と聾学校長館野、教師だけは晋一の無実を信じていた。幸子は貯金を使って、宝井弁護士を雇った。刑事の執拗な追求にも幸子は晋一をかばい続けた。幸子には晋一と同様不幸な弟がいた。そして弟は交通事故で即死していたのだ。宝井弁護士は被告人を救う道は「母を安楽死させたと言わせることだ」と言った。無罪を信じながらも、晋一を救うために、幸子は晋一に自白をすすめた。信頼する幸子にも自分の心は解ってもらえない……そんな自分に孤独を感じた絶望感で晋一は独房で自殺をはかった。自責の念にかられた幸子はこの事件に真剣にたちむかった。一方、新聞記者古賀は、薬剤師樫村富子の夫雄介に目をつけていた。学歴もなく出世の望みのない夫が、妻の財産に目をつけて妻の栄養剤に砒素を混入した。その犠牲が思いがけなく辰子となったのだ。幸子の執念はこの事実をつきとめた。無罪が確定した晋一の耳に「君を心から信じている人々が多くいる」と読みあげる裁判長の言葉が虚しく響いた。だが幸子の真心に触れた時、晋一の心は初めてやわらいでいった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1965年3月上旬号

日本映画批評:この声なき叫び

1965年1月下旬正月特別号

日本映画紹介:この声なき叫び

2023/07/16

2023/07/16

-点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 

『この声なき叫び』。名作と言っていいだろう。聾者が故に親殺しの嫌疑をかけられる晋一(田村正和)。ハンデを背負っているため周りから邪魔者扱いされる。晋一の無罪を信じる幸子(香山美子)と新聞記者(園井啓介)が事件の真相を探る。面倒見の良いおばちゃん役の菅井きんがいい味出している。

2022/01/22

2022/01/29

64点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


純愛映画と犯罪映画

市村泰一監督のデビュー作は「黄色い手袋」である。観ないうちから、その垢抜けしない低俗感に苛まれて観る気を無くしていた。第一作だけで決めつけてはいけないと思ってきたが、でも、市村監督はその後もテレビの売れっ子や人気歌手で客を呼ぶプログラムピクチャーに専念しているかに見えた。なんだかなぁ...と思いつつ日を経てきた。そしてこの映画である。

田村正和の昔が見られるので、ちょっと覗いてみようと思った。クレジットを見ていて、スターの顔見せ映画にしては配役の層が意外に厚いことに気が付いた。志村喬、笠智衆のほかに、北村和夫、荒木道子、木村俊恵、菅井きん、園井啓介、南田洋子、倍賞千恵子らが顔を揃えている。熊井啓の「帝銀事件」で主人公を演じた信欣三も出ていたりする。

暫く観ていて、意外と丁寧な作りであることが分かってきて襟を正した。

内容は身体障害者(聾唖者)の冤罪事件を扱っていて真摯なドラマ作りだった。犯罪の謎解きは本格的で、殺意と善意が交錯して思いがけない事件に至る組み立てはさすが売れっ子作家西村京太郎である。
犯罪の実態が弁護士(北村和夫)によって解明される法廷シーンが意外な展開になっていて推理ドラマとして工夫されている。
そのため純愛物語と犯罪の解明と一粒で二度おいしいと言えるが、ドラマとしては山が二つになってしまった。もう少し脚本段階で工夫してほしかった。でも、監督市村泰一は良い仕事をしていた。チャンスを与えられれば力量を発揮する人でした。

2019/02/20

2019/03/19

80点

選択しない 


冤罪、真実、無罪を貫き通す事

生まれながら耳の聞こえない晋一。ただ一人の肉親母親毒殺の疑いで逮捕、起訴される。唯一信頼するのは幸子と、聾唖学校長の舘野。幸子にも裏切られたと思い、獄中で自殺を図る晋一。事件は、真犯人が解り解明。心に傷を持った幸子と、聾唖者の晋一が再び生きていく最後が印象的でした。

2019/02/21

2019/02/21

82点

映画館/東京都/ユーロスペース 


冤罪はかくも安易 死刑週間1

冤罪に落とされる過程のあまりの安易さに呆れると同時にこんなものなんだろうという恐怖と納得が伴う。
事件の真相はきちんと構成すれば、それなりだったろうが、実際ははしょりすぎて陳腐。せっかくの面白い着想が作品をちゃらにしてしまった。

2019/02/20

2019/02/20

80点

映画館/東京都/ユーロスペース 


逆転無罪、信じる事の大事さ

病気の母親と聾唖の息子。母を毒殺した疑いで逮捕起訴される。息子晋一が思いを寄せるバーに勤める幸子と聾唖学校長の舘野だけは、晋一の無実を信じる。
幸子は貯金で弁護士を雇う。弁護士のアドバイスで、刑を軽くする為「安楽死させるためにしてしまった」と自白するように晋一に勧める。信じていた幸子に絶望感で自殺を図る。
晋一の遺書から、信じる事の重要さを思い知らされる。薬局の女主人とその年下新婚6カ月の夫から事件の真相を弁護士と解明する。
信じる事が大切。無罪となった晋一は、もっとも信じる母親は亡くしたが、信じあえる幸子と生きる希望で新しい未来に向かっていく。1965年、松竹映画。懐かしのオールキャスト。

2017/12/09

2018/02/27

65点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


意外な方向に話が展開

ネタバレ

ラピュタ阿佐ヶ谷の松竹文芸映画特集「この声なき叫び」は、聾唖青年・田村正和とバー女給・香山美子の弛い美談として始まったかと思ったら、あれよあれよという間に田村に母親殺しという殺人の疑いが掛けられるという、西村京太郎原作の映画化で、後半は、一貫して無罪を主張する田村に対して、弁護人・北村和夫は罪を認めて情状酌量を図ったほうが得策だと言い出し、弁護人にも信じて貰えない聾唖の田村が自殺未遂を起こすほどに絶望するものの、田村のことを信じ続ける香山美子が、親身な新聞記者・園井啓介の協力を得て、田村の母親である荒木道子の死因となった毒の入った栄養剤の購入元である薬屋・木村俊恵の夫との不和に行き着くという意外な方向に話が展開する面白さがあり、市村泰一にしては上出来の映画でした。