シネマヴェーラ渋谷の日本ヌーヴェルヴァーグ特集「三味線とオートバイ」は、高校時代に一度観たあと10年近く前にも観ましたが、真鍋博のタイトルデザインにヌーヴェルヴァーグらしさが出ていたものの、川口松太郎原作を柳井隆雄が脚色した題材は、番匠義彰あたりが撮るのに相応しいような大船調母娘ドラマでした。
「三味線とオートバイ」は、何やら前衛調を狙った時にはことごとく滑ってしまうくせに、ごく普通のメロドラマだと素直な作劇で上々の成果を挙げる篠田正浩の、その後者のほうに当たる映画で、桑野みゆきと月丘夢路の母娘それぞれが抱えた事情を、所々に才気を覗かせながら組み立ててみせています。
2010年にフィルムセンターでこの映画を観た時、わたくしはメモに“こういう通俗的な題材を、へんにインテリぶらずに素直に撮ると、篠田は決して悪くありません。大島「青春残酷物語」などと比べると、実に浅い話ですが、それくらいが篠田にはお似合いなのです”と書いていますが、まあ今も同じような感想です。