サマー・ソルジャー

さまーそるじゃー|----|----

サマー・ソルジャー

レビューの数

6

平均評点

65.6(29人)

観たひと

36

観たいひと

8

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 戦争
製作国 日本
製作年 1972
公開年月日 1972/3/25
上映時間 129分
製作会社 勅使河原プロダクション
配給 その他
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督勅使河原宏 
脚本ジョン・ネースン 
企画勅使河原宏 
製作富沢幸男 
撮影大島満洲夫 
デザイン粟津潔 
美術金杉正弥 
音楽武満徹 
録音大橋鉄矢 
菊地進平 
照明山本嘉治 
編集守随房子 
助監督大澤豊 
スチル吉田ルイ子 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演キース・サイクス ジム
李礼仙 礼子
岸輝子 母親
北村和夫 太刀川
小林トシ子 太刀川夫人
観世栄夫 清水
中村玉緒 清水夫人
小沢昭一 谷川
黒柳徹子 谷川夫人
井川比佐志 太田
田中邦衛 藤村
加藤武 運転手
大川修 日本人私服
バリー・コットン ダリル
グレッグ・アントナッティ ジョー
ジョン・ネースン ピート

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ベトナム反戦、沖縄闘争など、流動する現実世界で、闘い悩む人々、自己の生を主張しさすらう人々、実在の二人の脱走兵を匿まった協力家庭で起こった実際の出来事をドキュメンタリー・タッチで描く。脚本を執筆したジョン・ネースンは日本文学研究家として著名。監督は「燃えつきた地図」の勅使河原宏。撮影は大鳥満洲夫が担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

戦乱のインドシナから遠く離れた沖縄、そして日本本土には米兵たちの補給、休養基地が散在している。戦争の長期化と泥沼化には米兵たちに厭戦気分を植えつけ、ようやくこの愚かな悲劇の虚しさを気づかせ始めている。岩国--本土内で最大、核すら装備されている噂のある米軍基地の町。沖縄同様、基地周辺に屯する歓楽街に勤める礼子のアパートには、店で知りあった若いGIのジムが転り込んでもう三週間。片言の日本語も喋れぬジムを溺愛する礼子は甲斐甲斐しく世話をする。しかし、ジムは志願して派遣されたベトナムで数多くの死を目撃し、自らも負傷して送還されて療養中に、二度と軍隊に戻るまいと決意した脱走兵だった。礼子の部屋に隠れ、隣り近所警察の目を気づかう焦燥と不安の生活。礼子はジムの安全を願って日本人による脱走兵援助組織に頼る。組織に身柄を引き渡されたジムの逃亡生活が始まる。一般家庭を転々とするジムは、見知らぬ夜の大海をさまよう盲魚だった。さまざまな家庭での借り猫のような生活。しかし、ジムは得意のギクーで、日本人と連帯を求め自動車修理工場で工員たちと一緒に働いているうちに「私の任務は、今、この戦争の悪をあらゆる方法で世界にアッピールすることだ」と考えるようになった。組織には他に何人もの脱走兵が身を寄せてくる。しかし「イントレビッド号の四人」がスウェーデンに脱出した後、潜入スパイの手で国外逃亡ルートは破壊され、脱走兵たちは取口なしの逃亡生活に苦悶する。酒に酔ったあげく協力家庭の主婦に挑みかかり追い出されたダリル。毎日黙々とマラソンを続け、肉体と精神の堕落を喰いとめるジョー。彼はいつか世界が解放される日を待ち続けているのだ。逃げ続けるGIたち、匿まい続ける日本人たち。両者の絆は一体何なのか。反戦?同情?善意?--ジムはその絆が何であるのかわからず、或る日面会にきた礼子と、協力家庭から脱走する。さらに礼子の里からも脱走するジム。長距離トラックに便乗して京都神戸とさまよう中で、唯一自分を取り戻せたのは、脱走兵の身分を証さない時だけだった。再び岩国、組織の米人カウンセラー、ビートの説得もあって、自分に貼られた脱走兵の烙印を、軍隊へ投げ返し、軍体自体へ闘いを挑むために基地へ戻る決意をする。そして、今日もジョーは街を走り続ける。又ダリルの行方は依然として判明しない。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1972年4月下旬号

映画批評:サマー・ソルジャー

1972年3月下旬号

日本映画紹介:サマー・ソルジャー

1972年2月下旬号

旬報試写室:サマー・ソルジャー

1972年1月上旬新年特別号

特別グラビア:勅使河原宏/サマー・ソルジャー

2021/06/10

50点

選択しない 


ベトナム脱走米兵という化石化した現代史の断片を描く

 ベトナム戦争時、岩国基地から脱走した若い米軍兵士の逃亡を描くドキュメンタリー・タッチのドラマで、実話に基づく。
 バーの馴染みのホステス(李麗仙)のアパートに匿われ、脱走兵援助組織によって支援者の日本人家庭を転々とした後、籠の鳥の生活に嫌気がさし、長距離トラックをヒッチハイクして京都へ。頼る者もなく野宿を重ねていたところを再び脱走兵援助組織に保護され、岩国に戻る。
 脱走兵として脱走兵援助組織に組み込まれて利用され、ベトナム反戦運動の広告塔となるか。それとも、米軍に戻って内部からの改革に取り組むか。脱走兵が後者を選び、岩国基地に出頭するところで映画は終わる。
 もっとも米軍内部からの改革といっても良心的兵役拒否が軍法違反にならないようにするといった程度のもので、そこに日本の反戦運動と脱走米兵との間に意識の大きな溝があり、それが数週間に及ぶ米兵の迷走に繋がっている。
 公開から半世紀経てば、脱走米兵の事件も遠い記憶の彼方にあり、まして事件を知らない者が見ても何のことやらさっぱりわからないという賞味期限切れの作品。今では良心的兵役拒否は普通のことで、言葉そのものが死語になっている。
 化石化した現代史の断片としての歴史的価値もあるのかないのか…ただ李麗仙の崩れた水商売の女ぶりが名演で、いちいち語尾に「ね」が付く英語がまたいい。
 支援者の日本人家族に、北村和夫、小林トシ子、観世栄夫、中村玉緒、小沢昭一、黒柳徹子。脱走兵援助組織メンバーに井川比佐志、田中邦衛。トラック運転手に加藤武とバラエティ豊かなのが見どころか。(キネ旬9位)

2019/06/20

2019/06/20

69点

その他/ツタヤ渋谷、VHSレンタル 


ベトナム戦争、続行中。

その最中に、脱走兵に眼を向けた本作は、出来以上にジャーナリスティックに意味があったのだろう。

作劇的には、脱走兵の行く先々で、有名俳優が出てくるのは見易いが、作り物臭い事もたしか。

黒柳徹子の、どこかセクシーな演技が面白かった。(当時38才)
戦後すぐの木下惠介作品で覚えた小林トシ子の顔も出て来た。(当時39才)

残念なのは、中盤以降、脱走兵が二人三人と増えていき、終盤の印象が散漫になったことだ。
カラー、スタンダード、1時間43分。

年表
1964.8. 2 トンキン湾事件
1965.3.26 北爆開始(ローリングサンダー作戦)
1965年末までに、アメリカ地上軍18万4300名投入。
1972.3.25 「サマーソルジャー」封切
1972.6.17 ウォーターゲート事件発生
1973. 3. 29 アメリカ軍撤退完了
1974.8. 9 ニクソン大統領辞任
1975. 4. 30 サイゴン陥落 ベトナム戦争終結

アメリカがベトナムで負けたことは、ソビエト連邦崩壊の次に来るような大事件だったと思う。

2013/01/21

2019/04/23

70点

レンタル 


ジャーナリスティック

ネタバレ

軍隊という体制権力に盾突くことは、脱走する米軍兵士にとっても、それを手助けする市民にとっても、人生を賭けた戦いであり、生命を賭した異議申し立てでもある。ただ、その実相をつぶさに見れば、性にまつわるいざこざや、さらなる脱走の上塗りや、その挙句のドン詰まりといった身近な些事の集積でしかなく、一般庶民の日常と大差ないものであることを再認識。

登場人物たちの殺伐とした心情を不安定なカメラワークで掬い取り、そこから漂う禍々しい閉塞感を粒子の粗い画面に封じ込めることで、米国の実質的従属下にある日本の鬱屈した現状や、ベトナム戦争に加担する他ない日本政府の姿をそこはかとなく照射する勅使河原宏。そのジャーナリスティックな視座が光る異色の社会派ドラマ。

それにしても、スッピンに近いナチュラルメイクで登場する若かりし黒柳徹子にはビックリだった。

2010年代

2013/08/18

86点

レンタル 


歴史に埋もれた傑作

反戦市民賛歌の映画と思いきや、脱走兵を受け入れる「進歩派市民」の欺瞞、浅薄さ、狼狽を小沢昭一、北村和夫、黒柳徹子、観世栄夫らが巧みな演技であぶりだした秀作。特にノーメイクで最初誰だか分らなかった黒柳は、後の自分自身を戯画化したような役柄を見事に表現。一方で「哀れな脱走兵」という記号化された生身の人間の苦悩は、勅使河原作品のテーマである失踪や自己喪失に通底する深いテーマだ。最後の主人公の選択は正しかったのかどうかはわからないが、無垢な団塊世代が考えそうな「脱走兵を市民がリレーで匿い、最後は貨物船で無事出国させる(E.Tかw)」というステレオタイプを40年前に淡々と否定したこの作品は、この時代にこそ再評価されるべきであろう。

2000年代

2012/01/17

56点

レンタル 


悪い意味で勅使河原監督らしくない作品。だが、過ぎて行った日々への郷愁を飛び起こすような、武満徹作曲のテーマ音楽は素晴らしいと思います。

2011/11/13

2011/11/14

36点

レンタル 


徹子の若さと邦衛の威圧感

外人にはたまらなかったのでしょう。