金星と連なる戦車や軍用自動車が見えている。時計、時刻表、電車、座席の女、闇の中の光、発電所や海岸など、さまざまな印象が並べ立てられていく。かもめ、馬、雲、太陽、大波、眼球などが次々と幻想されたかと思うところ、キャメラは揺れ、部隊は砂浜で蠢いている。
小便が落ちている。お祭りのような騎馬隊から自衛隊に矢が射込まれ、逆に自衛隊からは機関銃掃射が返礼される。名乗りを上げる侍に対し、自衛隊は敬礼を返す。長尾景虎は好奇心一杯に自衛隊の中を走り回り、笑っている。兵器をツールにして新旧の軍人たちが交流を始める。しかし舞台は歴史に対し禁じられた介入も始める。非対称は暴力が行使され、現在は過去の殺戮へと傾いていく。刀、槍、首、ブルマの女たちが現れるなか、戦死者と逃亡者たちの停止と運動が見えている。
褌一丁で男景虎(夏木勲)と男義明(千葉真一)は、戦いと生き方を見せつけようと語る。昔の女(小野みゆき)と今の男(中康次)は、川の中でじゃれあう。哨戒艇で自由と暴力をほしいままにする矢野(渡瀬恒彦)は戦国の時代に適応しているように見える。ヘリから吊られる義明は、時をつかもうと空中でもがいているようにも見える。
絶妙なタイミングで挿入歌が聞こえている。本心で暴力的に動こうという義明もいれば、時の中に残ろうという根本(かまやつひろし)もいる。ヘリで城の天守閣を襲撃する感覚も不可思議でシュールでもある。砂浜では男と男がじゃれあい、二人して逆立ちをしている。雨の中、武田軍に向かい舞台は進軍をしていく。テントが張られ、挿入歌が聞こえ、夜這いがかけられる。草むらの向こうからは異様な音が聞こえ、旗が見え隠れする。兵器の火力を持って部隊は、戦国の騎馬兵や歩兵を殺戮していく。侍たちはその量と群れで自衛隊を囲み、殲滅させようとする。車両は戦国を蹂躙していく。火があり、爆破があり、真田鉄砲隊も火を吹いている。ヘリからも容赦ない攻勢が地上に向かってかけられる。義明は特段に隊の作戦司令など下すこともなく、無言で、しかし鬼の形相でただ撃ちまくっている。武田勝頼(真田広之)はヘリを仕留め、馬は菊池(にしきのあきら)の周りをメリーゴーランドのように回り、その恋人の和子(岡田奈々)は現代で馬追を眺めている。
武者のように馬を駆り、刀を扱い、拳銃で信玄(田中浩)を殺害し、その首級を見せびらかす義明は、どうも戦国武将にでもなったらしい。少年(薬師丸ひろ子)とおっさん木村(竜雷太)が相打ちで倒れる中、自衛隊の一行は亡霊のように彷徨い歩いている。昭和に戻りたくない男とこれ以上、戦国ごっこをしたくない男たちは対立し、そこには銃声とともに秋の虫たちの声が聞こえている。
仏像の前で、石灯籠の前で部隊は最期の時を過ごしているように見える。景虎と義明はこの寺の境内で愛し合うように殺し合おうとしている。幾本もの矢に貫かれ男たちの時は止まっている。火は終え上がる。