青春の殺人者

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青春の殺人者

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レビューの数

44

平均評点

76.1(306人)

観たひと

447

観たいひと

43

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー
製作国 日本
製作年 1976
公開年月日 1976/10/23
上映時間 132分
製作会社 今村プロ=綜映社=ATG
配給 ATG
レイティング R-15
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督長谷川和彦 
脚本田村孟 
原作中上健次 
企画多賀祥介 
製作今村昌平 
大塚和 
撮影鈴木達夫 
美術木村威夫 
音楽ゴダイゴ 
録音久保田幸雄 
照明伴野功 
編集山地早智子 
助監督石山昭信 
記録浅附明子 
スチル伊藤昭裕 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演水谷豊 斉木順
内田良平 
市原悦子 
原田美枝子 ケイ子
白川和子 ケイ子の母
江藤潤 宮田
桃井かおり 郁子
地井武男 日高
高山千草 漁師の女A
三戸部スエ 漁師の女B

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

一九六九年十月三十日、千葉県市原市で実際に起こった事件に取材した芥川賞作家中上健次の小説『蛇淫』をもとに、両親を殺害した一青年の理由なき殺人を通して、現代の青春像を描き上げる。脚本は元創造社のメンバーの一人で、作家に転向以来五年ぶりに脚本を執筆した田村孟、監督はこれが第一回監督作品の長谷川和彦、撮影は「祭りの準備」の鈴木達夫がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

彼、斉木順は二十二歳。親から与えられたスナックを経営して三カ月になる。店の手伝いをしているのは、幼なじみの常世田ケイ子である。ある雨の日、彼は父親に取り上げられた車を取り戻すため、タイヤパンクの修理を営む両親の家に向った。しかし、それは彼とケイ子を別れさせようと、わざと彼を呼び寄せる父と母の罠だった。母は彼に「順は取り憑かれてるのよ、蛇にぐるぐる巻きにされてる」となじる。早く別れないとあの体にがんじがらめになるという。もともと、スナックを建てる時にケイ子を連れて来たのは父だった。ケイ子は左耳が関えなかった。その理由を順はケイ子のいう通り、中学生の頃、いちじくの実を盗んで食べたのを、順がケイ子の母親に告げ口をし、そのために殴られて聞えなくなったと信じていた。しかし、父は、ケイ子の母親が引っばり込んだ男に彼女が手ごめにされたのを母親にみつかって、たたかれたからで、いちじくの話はケイ子のデッチ上げだという。母親が野菜を買いに出ている間に、彼は父親を殺した。帰って来た母は最初は驚愕するが、自首するという彼を引き止めた。こうなった以上、二人だけで暮そう。大学へ行って、大学院へ行って、時効の十五年が経ったら嫁をもらって、と懇願する。だが、ことケイ子の話になると異常な程の嫉妬心で彼を責める。ケイ子と始めから相談して逃げようとしていたのだ、と錯乱した母は庖丁を手に待った。もみ合っている内に、彼が逆に母を刺していた。金庫から金を奪った彼は洋品店で衣類を替え、スナックに戻った。彼はケイ子に、店を今日限りで閉めると言った。何も知らないケイ子は、自分のことが原因だから両親に謝りに行くという。彼はもう取り返しがつかないと彼女を制した。衝動的に彼がケイ子を抱こうとした時、高校時代の友人の宮田とその婚約者郁子、宮田の大学の同級生日高の三人が訪ねて来た。彼が高校時代に撮った8ミリを皆で見ようというのだ。ガレージの中で、教師と両親を葬れといった内容の8ミリを見終る。順は、日高がトイレに行った時、風呂場で両親の死体を日高に見せる。親とは仲直りして、ごめんなさい、金下さいって言えばいいという日高に、仲直りできない理由を教えようというのだ。日高は、ぶるぶる震えているだけだ。順はケイ子と一緒に、ケイ子のアル中の母親の家に行って、いちじくの一件をたずねるが、八つ手はあったが、いちじくはなかったと、母親はいう。順は、追って来るケイ子を振り切って、一人で家へ戻る。両親の死体をタオルケットで包んでいる時に、ケイ子が家の中に入って来た。ケイ子は、殺人のことを既に知っていたのか、平然としている。彼女も包みを運び出すのを手伝ってから、二人は燃えた。海に死体を捨てたあと、いちじくの話はケイ子の作り話だと彼女から聞かされた。彼の脳裏に幼い日の彼と、貧しい父と母が浮かぶ。食うもんも食わんで、飲むもんも飲まんで、バカだよ。彼は泣いていた。ケイ子は彼と一緒に死ねると思った。「俺はここを燃やしたい、ここじゃなきや燃やしたことにならない」。二人は、スナックにガソリンをまいて、火を放った。梁にロープをつけて首をかけたが死に切れず、ケイ子を連れて外へ出た。見物人の人混みの中で、ケイ子から離れた彼は、一人、走るトラックの荷台から遠い黒煙を見ていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018年8月上旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第2弾 1970年代日本映画ベスト・テン:ベスト15グラビア解説

1976年12月上旬号

今号の問題作:青春の殺人者

日本映画紹介:青春の殺人者

1976年10月下旬号

グラビア:長谷川和彦の「青春の殺人者」

特集 「青春の殺人者」:1 熱気あふれる「青春の殺人者」伊豆・下田ロケ訪問」

特集 「青春の殺人者」:シナリオ

特集 「青春の殺人者」:2 実に恐ろしいシナリオ

特集 「青春の殺人者」:3 長谷川和彦という男

2024年

2024/03/03

70点

選択しない 


刑法200条「尊属殺人罪」規定削除('95年)

「時代」のひと言では片付けられない若気の血、たぎり、闇。迷者不問。見つからない出口。
 親殺しの凄惨からの、甘っちょろい青春ラブロマンス逃避行。フラッシュバック過多に、怖いもの知らずな製作者の清新がみなぎる(モノクロ8ミリの撮影者は相米慎二だとか)。アイコニックなタイトルは、監督自らがつけた。

 本作品について中上健次は「血を見つめた者の、モノローグからダイアローグへの過程を描いた映画。力作である」と、めずらしく褒めている。柳町作品のそれとは対象的な反応が、どうにもこそばゆい。かわりに、佐藤忠男の鼻持ちならない寸評に噛みついていた。
 中上は、事件の記事から受けたインスピレーションだけで、超極短編小説を書き上げた。他方の長谷川和彦は、千葉地裁に通いつめて裁判を傍聴、調査し、田村孟にシナリオを依頼した。映画は、地理的な整合性だけでなく、事件の正確性においても、そのリアリティで小説より優れている。

 ダイアローグといえば、順がケイ子に別れ話を切り出すやり取りが好きだ。
「そうか、ケイ子はそういう調子か」
「いけないの? 順ちゃんは、もしかしたら未練が残りますでしょうか…」
 中上の原作にも漂うような、じつに甘っちょろくてキュンとくるじゃれ合いだ。ケイ子があまりに順ちゃん順ちゃん、うるさいから数えてみた。総計113回だった。

 市原市で起きた事件の被告は、裁判で冤罪の主張を貫いた(最高裁上告審で6千頁にわたる文書を提出)が、'92年に死刑が確定している。32年を経たいまも刑は執行されていない。おそらく再審請求中と思われる。'95年に「尊属殺人罪」の規定が刑法から削除された現代において、極刑という量刑は時代錯誤と言えるのかもしれない。

 情状に多くの点で類似する「神奈川金属バット両親殺害事件」では、懲役13年の量刑が下されている。森炎著『司法殺人』の中で、この2名の青春の殺人者を比較する考察がとても興味深い。死刑判断の確定裁判を「死刑差別」「絶対的真実主義の欺瞞」と強く非難し、死刑基準をめぐる司法正義の聖域に一石を投じている。

2022/09/20

2022/09/20

70点

テレビ/有料放送 


これまで縁がなく

シニア になって見る映画じゃないな。
とはいえ、1970年代の空気感は思い出したよ。
みんな熱演。いいね。
市原悦子さんのリアリティがすごいね。

2021/07/25

2021/08/06

70点

レンタル/神奈川県/TSUTAYA 


当時の空気が分からないと理解しづらいし、当時の評価が高かったことも疑問になってしまう

ネタバレ

親が与えたスナックで働く青年が、父親を刺し殺したことをきっかけに、自分を縛ってきた現実から逃れようする。
話は車を親に取り上げられ実家に直談判へ行ったところから始まる。大型車両のタイヤ交換・販売業を営む実家の両親は、青年を歓迎する。車を取り上げたのは青年を呼び寄せるためのワナだった。スナックで同棲する恋人と別れろと言う。
母親の買い物中にかっとなって父親を刺し殺してしまった青年は、最初は冷静でまともだ。買い物から帰宅した母親に「警察へ連絡する」と言う。
しかし、母親がこの殺害に乗ってくる。今のような貧しい生活はもう嫌だ。2人でどこかへ行って新しくやり直そう。できないなら一緒に死のう。(この辺の母親役の市原悦子の鬼気迫る演技がすごい。並のホラー映画では太刀打ちできないほどだ。)
恐らく青年は自分の望みが分かっていなかった。親が与えたスナックを幼なじみの恋人と暮らす日々を送っていただけだ。それが母親の「2人でどこかで…」で気付く。彼こそ、今の現実から出て行きたいのだ。それゆえに母親の命も奪う。
さらに恋人からも逃れようとする。
だが、恋人は別れを拒み、ついてくる。両親の死体の始末を手伝う。青年は恋人という現実からも逃れられなくなっている。もう彼には自ら命を絶つことしか残されていない。しかし、失敗に終わる。
1976年の作品。この作品は当時の空気が分からないと理解しづらいし、当時の評価が高かったことも疑問になってしまう。
この頃は、学生運動が影をひそめ、若者はシラケ世代と呼ばれながらも既成の制度や規律には反発を抱き、しかし同時に無力感をどこかに抱えていた。
そんな時代の青年がどこかに、多分 無意識に抱えていた現実から脱出したいという欲求に気付く。しかしそれは両親の殺害というあってはならないことが発端で、その行く先には暗闇しか見えない。荷台に青年が乗り込んだトラックが暗い道を去って行くラストに暗示されている。

2021/06/09

2021/06/09

88点

VOD/U-NEXT/レンタル/PC 


親の壁

3回目ですか、懐かしいです。

 成田空港が開港する前の話で、デモを取り締まる機動隊に、お前が親を殺そうとどうしようと関係がないと追い払われる場面があります。この青年は、社会からは相手にされない無名の存在です。まぁ、ごく普通といっていいかな。

 青年には親の壁というものがあり、それを超えていくのが青春のひとつの意義と思います。水谷の父親は欲しいものを与えてはくれますが、すぐ規制して自由にはさせてくれません。彼女、自動車、スナック。そのやり方に反抗して、殺してしまいます。その衝動的殺人の様子はいちじくの場面で出てきます。シナリオのうまさですね。

 血の海に浮かぶ父親の死体にキャベツが転がります。ここでの市原悦子の演技は本当に凄いです。母親そのもの、女そのものです。心中しようとしてくるので、やり返して殺してしまうのです。痛くないようにしてよ。これで働かなくて済む。大学に行きなよ。カタツムリの動きで、我に帰ります。

 友達が来ても相談しようなどとは思わない水谷青年です。死体の後始末で、大したことなかった、ばちが当たればよかったのに、アッハッハ。この後、アイスキャディーを食べながら、父の苦労を思いを馳せます。いいシーンです。

 やはり、死ぬしかない、スナックに火をつけます。やっぱり、死ねません。原田美枝子の演技は、今回は全く棒読みには感じませんでした。この年齢で大したものです。彼女は要らない。一人抜け出て、トラックの荷台に乗るのです。こうして、青年は、自立するのです。

 音楽は、ブレークする前のゴダイゴが担当です。これが見事に当たっています。監督のセンスでしょう。物語に鮮やかな色合いを添えています。

2021/05/17

2021/05/23

20点

選択しない 

若かりし水谷豊。
人殺しすぎ問題。
市原悦子との殺し合い?のシーンが全良投球で見応えがあった。

2020/07/26

2020/07/26

76点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/スマホ 


今の水谷豊からは想像できないギラギラとした若者。原田美枝子のザラザラした声と、体当たりの演技。二人とも若くて危うくて眩しい。内田と市原の両親の甘やかしと気まぐれが息子を衝動的な殺人に駆り立てる。スナックの炎上シーンがリアル。