1968年製作公開の「さらば友よ」。今変換したら「さらば知世」が第一候補に出ました。どうでもいいけど。監督はジャン・エルマン、脚本はジャン・エルマン自身と原作者セバスチアン・ジャプリゾが担当。音楽はフランソワ・ド・ルーベであります。
今回のドロンはアルジェリア帰りの軍医・バラン。バランといつてもバラダギ様の怪獣とは無関係。彼に戦争を商売にするプロップ(チャールズ・ブロンソン)が何かと絡みます。次の儲け仕事の為にバランの力が欲しいらしい。しかし無視するバラン。
そしてイザベル(オルガ・ジョルジュ・ピコ)と云ふ若い女性もバランに近付き、モーツアルトと云ふ男を知つてゐるだらうと訪ねます。知らんと答へるバラン。イザベルは自分が勤める会社から無断で持ち出した債券を、クリスマス休暇の間にこつそり戻して欲しいと依頼します。
バランは何故かこれを引き受け、社員の健康診断を担当する医者として会社に潜入、重役の娘で医学生のドミニク(ブリジット・フォッセー)が助手につきます。そして高性能カメラを金庫のダイヤルが見える場所に設置、数字を読み取らうと云ふ訳です。しかし七桁の数字の内三つしか分かりませんでした。休暇が明けるまでの三日間で、全てのパタンを試す事にしました。
そこへ現れたのがプロップ。カネ儲けの匂ひを嗅ぎつけ、バランに絡みます。丁度社員の賞与が金庫に収納される事も知り、これも頂かうと、バランは仕方なくプロップと協力して番号を探ります。時間が無いので交代で三日三晩虱潰しでダイヤルを回します。当時は三回間違へたらロックされる仕組みはないんですかね。遂に金庫は空きますが、中は空つぽで、しかも二人は金庫室に閉ぢ込められてしまふ。
当初はいがみ合ふ二人ですが、バランが実はモーツアルトの友人で、彼を敵と見誤り射殺した事への贖罪からこの依頼を引き受けた事を語ると、二人の間には友情めいたものが芽生えます。そして遂に壁を破壊して脱出しますが、其処には警備員の死体が......
ドロンとブロンソン、今で云ふバディものでせうか。ドロンは既に大スタアですが、ブロンソンは本作でブレイクした模様です。日本ではマンダムで有名。両者同格での扱ひですが、やはり美味しい場面はブロンソンが多い。いくらカネ儲けの為とはいへ、ドロンに絡むのがしつこすぎる気はしますが。液体をコップ一杯に注いだ中に、五枚のコインを入れて溢れさせない遊びが好きなやうで、いつも成功させてゐるのに、最後の最後、肝心の場面で失敗します。
ドロンとしては迷惑千万な男で、金庫室に閉ぢ込められる羽目になります。しかもこの佐藤允、ぢやないブロンソンは「電気のある所には電線がある筈」と、壁を開けますが見事に感電、お陰で空調まで止まりドロンの足を引張ること夥しい。しかしその後、壁の一部だけ冷たい事に気付き、通風孔を発見し脱出の糸口を掴むファインプレイを見せます。
金庫破りと警備員殺しの濡れ衣を着せられたドロンを助けるためにワザと捕まり、ドロンは知り合ひではないと突ぱねる。同様にドロンもブロンソンを知らないとシラを切り、まるで友情以上の何かを持ち合せたかの二人でした。イエイ。迫るメローティス警部(ベルナール・フレッソン)には、もう少しで真相が分りさうだと、夜の12時まで猶予を申し出ます。この警部、基本的に優秀だと思ふけれど、最後に焦つたか、フライング気味に事を起こしてしまふ。「発見次第、警告後射殺せよ」なんて指示も飛ばしてゐました。治安の悪い国では当り前なのでせうか。
ヒロインはブリジット・フォッセー、「禁じられた遊び」の子役が美しく成長しました。ドロンが、自分を助けられるのは彼女だけだと信じて協力を依頼しますが、彼女こそがワルのイザベルと釣るんでドロンに罪を着せやうとしたのであります。ファーストネームが「アウステルリッツ」である事から、ダイヤルの番号はワーテルローの日付1815618の七桁。
サスペンスものとしては首肯出来かねる点もちらほら。横領した債券を戻す為に男に依頼する方もする方なら、受諾する方も大概であります。モーツアルトを誤つて殺した事への罪滅ぼしといふのも弱い。そもそもイザベルも「正直に話して自分で返さうか」と言つてゐるので、さうさせれば好いと思ひます。警備陣の警戒感の無さといふか、ザルのやうな布陣も気になります。
さはさりながら、さう云ふ点もドロン&ブロンソンの好演にかき消された感があり、寧ろ面白い映画として後味が良い印象を残しました。改めて大スタアのカリスマ性に感服するところであります。それだけに細部にも配慮が欲しかつた喃。