気狂いピエロ

きちがいぴえろ|Pierrot Le Fou|Pierrot the Madman

気狂いピエロ

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レビューの数

93

平均評点

73.5(540人)

観たひと

879

観たいひと

127

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー / ドラマ
製作国 フランス
製作年 1965
公開年月日 1967/7/7
上映時間 111分
製作会社 フェリックス・フィルム
配給 日本ヘラルド映画
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

アメリカの小説家ライオネル・ホワイトの『十一時の悪魔』をもとに「軽蔑」のジャン・リュック・ゴダールが監督した。撮影は「二人の殺し屋」のラウール・クタール、音楽はアントワーヌ・デュアメルが担当。出演は「カトマンズの男」のジャン・ポール・ベルモンド、「スタンダールの恋愛論」のアンナ・カリーナのほかグラジェラ・ガルバーニ、レイモン・ドボスなど。日本初公開1967年7月7日(配給:日本ヘラルド映画)。デジタルリマスター版2016年7月23日公開(配給:オンリー・ハーツ)。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

フェルディナン(J・P・ベルモンド)は通称“気狂いピエロ”と呼ばれるカッコいい、愛すべき、反面また憂愁にみちた男である。彼は金持の妻に退屈し、無為な都会生活を逃げだしたい衝動にかられていた。そんなある夜彼はパーティで昔馴染の女性マリアンヌ(A・カリーナ)に出会い、一夜をともにした。翌朝、目覚めた彼は彼女の部屋に、首に鋏を突きたてられて死んでいる見知らぬ男の死体を見つけ驚いた。だがマリアンヌは一向に気にする様子がなく、口笛を吹きながら朝食をつくるのだった。面倒な事件であることは確かである。「わけはあとで話すから」と、彼女に手をとられた時フェルディナンはごく自然に彼女と行動を共にし、パリを逃げ出す決心をした。彼は昔よりも一層魅力的になったマリアンヌを愛しはじめていたし、愚劣な生活から抜け出せるチャンスと考えたのだ。フェルディナンはマンガ“ピエ・ニクレ”を持ち、マリアンヌは銃を持ち、着のみ着のままに彼女の兄がいるという南仏へ向けて、出発した。それは金のない、やぶれかぶれの強盗行脚で、ギャング団の争いに捲き込まれたりしたが、ふたりにとっては素晴らしい旅であった。フェルディナンの顔は底抜けに明るく、飄々とおどけてさえしていた。ある海岸ではロビンソン・クルーソーのような自給自足の生活を送っていたが、深い充実感を味わうフェルディナンと違って、マリアンヌは嫌気がさして来た。そして街に来た時、彼女は奇妙な小人を鋏で刺し殺すと、煙のように消えた。するとフェルディナンはその小人の仲間と思われるギャングに捕われ彼女の居所を言えと拷問された。マリアンヌが殺人を犯し五万ドル持ち逃げしたというのだ。居所を知らない彼は解放されて、マリアンヌを探し歩いた。やっと探しあててみると彼女は密輸団のボスと関係を結んでいた。この彼女の裏切りはフェルディナンを深い絶望に突き落した。彼はふたりのいる島へ行くと拳銃で撃ち殺してしまった。間もなく青い海をのぞむ岩壁から、フェルディナンがダイナマイト自殺をとげた白い煙が見えた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2022年4月下旬号

「勝手にしやがれ」4Kレストア版/「気狂いピエロ」2Kレストア版:「勝手にしやがれ」論

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「勝手にしやがれ」4Kレストア版/「気狂いピエロ」2Kレストア版:ウェブ時代のJLGの肖像

UPCOMING 新作紹介:「気狂いピエロ」

キネマ旬報増刊 大人のシネマ・ライフ 2016Summer→Autumn

スクリーンの中の女優とともに:「気狂いピエロ」移り気な、天衣無縫の魅力―アンナ・カリーナ

1998年10月上旬号

COMING SOON【新作紹介】:気狂いピエロ

1967年7月下旬号

特集 ゴダール映画の真実:にせもの《気狂いピエロ》

外国映画批評:気狂いピエロ

1967年3月下旬号

新作グラビア:気狂いピエロ

外国映画紹介:気狂いピエロ

2024/01/31

2024/01/31

88点

選択しない 


ポップな前衛アート風「勝手にしやがれ」

80年代のリバイバルロードショーで鑑賞した時も赤、青、黄色といった原色の色使いが印象に残ったが、今回、リマスター版を観て改めてその色彩の鮮やかさに感心した。
ドラマ自体は「勝手にしやがれ」の系譜と思えば良いかと。ただ、その見せ方がポップな前衛アート風で詩の朗読や観客への語りかけ、絵画やイラストのインサートなど刺激的で面白い。作中での死体のある風景などはシュールで可笑しい。ラストのダイナマイトによる壮絶な自殺(最後は導火線の火を消そうとしている)とその後の余韻も中々良い。
普通の映画ではないが、難しく考えずにアートとして楽しめば良いと思う。

2023/12/02

2023/12/03

60点

レンタル/沖縄県/ゲオ/ゲオ与那原店/DVD 
字幕


この映画のラストは「山椒大夫」のオマージュだけど「イメージの本」では「雨月物語」の一場面を挿入していた。

「勝手にしやがれ」よりは分かり易いとは言え、やっぱりよく分からない作品である。だから大雑把に考えて「勝手にしやがれ」と本作は若者の無軌道ぶりを支離滅裂に描いたものと解釈しておく。

しかし遺作の「イメージの本」を観ても相変わらずのゴダール節にはまいった。普通なら歳を重ねると人間丸くなったりして優しく分かり易く描きそうなものを、解説の暴力についての映画というのを知らなかったら、一体この映画は何を表現しているんだ?ということになる。老いてもこんなに尖がった映画を撮るんだから、このブレない作家魂、好きな監督じゃないけど恐れ入りましたと頭を垂れるよ。

わかりにくい映画だけど、ジャン・ポール・ベルモンドのカッコよさとフランス映画らしくファッションは古くてレトロ感覚でおしゃれに思うところは理解できた。ベルモンドは娯楽映画派でこのゴダールの作品には否定的である。この頃はベルモンドも若手であったから、素直に仕事をこなしていくという姿勢を取っていた模様。その後、スタントマンに頼らず、自らアクションをこなすアクション・スターになりました。

2020/04/18

2023/10/05

85点

選択しない 


これぞゴダールだ! 良く分かんないけど

 没後一年となつたゴダール監督の代表作と目される「気狂いピエロ」であります。テレビなどでは「キグルイピエロ」と読まれる事が多いけれど、飽くまでも「キチガイピエロ」が正しい邦題。尚、わたくし好みの表記では「気狂ひピエロ」と書きたいところですが、固有名詞なので仕方がありません。そんな事どうでも良いですね。

 主演はジャン=ポール・ベルモンドとアンナ・カリーナで、ほぼこの二人が画面を独占してゐます。ベルモンド演じるフェルディナンは、妻(グラッツィラ・ガルヴァーニ)との夫婦生活に飽き足りない思ひを抱いてゐます。そんな彼が或る夜、パーティで昔の恋人・マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と思ひがけず再会します。そのまま一夜を過す二人でしたが、翌朝その現場で見知らぬ男が殺されてゐました。二人は無一文のまま逃避行の旅に出るのです。

 マリアンヌは「兄を見つけてお金を借りやう」と、フェルディナンと行動を共にします。カネが無いので車を盗んで(ガソリンスタンドでの盗み方が秀逸)カネを盗んでの無頼行脚であります。ギャングと警察に追はれる日々の中、二人は海岸で自給自足の生活を始めます。しかし毎日変化のない生活に、マリアンヌは忽ち飽きてしまひ、姿を消してしまふ。

 フェルディナンはギャング団に捕まり、マリアンヌの居場所を吐くやうに拷問を受けます。彼女はギャングの一人を殺害し、その仲間がマリアンヌを探してゐたのです。再び会つたマリアンヌは、フェルディナンを裏切りギャングの男と愛し合つてゐました。男とマリアンヌを射殺するフェルディナン。そして彼は顔にペンキを塗りたくり、ダイナマイトの束を二重に顔に巻き、点火します。忽ち爆発するダイナマイト、残つたのは煙だけでした......

 と云ふ風に、一応ストオリイはあるのですが、余り意味を持たない映画です。徹頭徹尾ゴダール節が炸裂する110分。冒頭はアルファベの「A」がランダムに並んだかと思ふと、そのまゝ主要キャスト・スタッフのクレジットへと変化。凝つてゐます。

 セリフやナレーションは詩の朗読かと思ふやうな文学的なフレーズが散りばめられてゐます。時には、歌ふやうに。「高性能と気品は両立する」「寂しい男はおしやべりさ」「人生は未解決のミステリー」「観光客は現代の奴隷」「人間は夢で出来てゐる、夢は人間で出来てゐる」「言葉は暗黒に光をともす」など、何処かで引用したくなる断片。この映画全体がアフォリズム集とも申せませうか。

 時期的に「ベトナム戦争」への言及も多い。アメリカ人に芝居を見せておひねりを貰はうとして「米人好みの芝居=ベトナム戦争だ」と言ひ放つベルモンド君。戦死した115名についての考察も、ゴダール流の風刺となつてゐますね。

 主演二人のキャラクタアにも注目であります。ベルモンドのフェルディナンは、文学に造詣が深いやうですが、女性たちがそれを解さないので不満に思つてゐます。しかし基本的に楽天的で、マリアンヌと一緒なら何でもいいや、てな感じも見せてゐます。マメに日記を付けてゐます。ラストの行動で、漸く気狂ひピエロの真骨頂を見せるのです。本当に訳分らん。

 一方アンナ・カリーナのマリアンヌは刹那的な享楽を追ふ女に見えます。自給自足の生活に忽ち飽きて「ここから出たい」と繰り返します。フェルナンドを何故か「ピエロ」と呼び、その都度訂正させられてゐます。彼の文学趣味に辟易してゐて、映画も「ペペルモコ(望郷)」を知りませんでした。しきりと「兄に会つてお金を借りやう」と言ひますが、その兄の実体は○○○○でした。殺人も平然とこなします。

 「私の運命線は短い」と、ミュージカル風に歌ひます。彼女が「運命線」と云へば、フェルナンドが「(マリアンヌの)身体の線」と返す。ここでも水と油の二人の対比が感じられます。ゴダールはマリアンヌ役にシルヴィ・ヴァルタンを希望したさうですが、確かにこのシーンは彼女だつたらどう歌ふかを見たい気がします。

 ほかにも、パーティ会場での色の使ひ方や、クルマの運転シーンで、いかにも合成然としたわざとらしさなんかは、我が国の鈴木清順を思はせる演出で興味深い。映画監督サミュエル・フラーが本人役で映画論を語つたり、港の男としてレーモン・ドボスが出てきたり、最後はランボーの詩で締めくくると云ふ、良く分からないが如何にもゴダールらしさが随所に見られるシャシンと存じます。無理矢理寓意を探る必要もありますまい。因みにわたくしは筋金入りのスノッブですので、かういふ映画にはニンマリするのでした。

2023/10/01

2023/10/01

68点

VOD/U-NEXT 
字幕


蒼乃桔梗57歳、名作の宴

予想通り難解。映像オリエンテッドの作品と解釈し早々にストーリーの詳細把握を放棄。フランス語の心地好い響きが眠気を誘う。

男女の逃避行の体裁をとるが要は気狂いピエロ(ジャン・ポール・ベルモンド)の自分探しの旅なのだろう。

現実的な女性とセンチメンタルな男性の対比は充分に普遍性がある。ラストの爆死シーンは唯一、リアルさを放つ。それでも、海と太陽は変わらず美しい。

色彩は極上でアンナ・カリーナはキュート。遅れてきた映画中年の私にはお洒落な雰囲気映画とも思えた。

2023/08/04

2023/08/04

75点

レンタル/大阪府/TSUTAYA 
字幕


うーん

ストーリーはシンプルで、主演の二人が生き生きとしていて魅力的。1960年代の話題作らしいが、いま観るとそれほどの印象はないなあ。

2023/04/03

2023/04/04

75点

映画館/東京都/キネカ大森 
字幕


別題「まぬけな馬鹿ピエロの最期」

金持ち妻と結婚し、娘をもうけ、有閑階級たちと退屈な日々を送るフェルディナン(ジャン・ポール・ベルモンド)。
ある夜の退屈極まりないパーティを切り上げてひとり自邸へ戻ったところ、昔の女マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と再会した。
彼女はベビーシッターとして妻の兄に連れて来られたのだ。
退屈な日々から刺激的な日々へ・・・そう思っていたフェルディナンはマリアンヌと自邸を出てホテルで一夜を共にし、翌朝、彼女が暮らしているという政治結社の部屋へ向かうとそこには死体が転がっていた。
マリアンヌの兄がいるという南仏へ、フェルディナンとマリアンヌの逃避行がはじまる・・・

といったところからはじまる物語で、物語的には『勝手にしやがれ』と大差がない。
ファム・ファタル(運命の女)によって事件に巻き込まれるノワール映画だが、ノワール(黒)といいながらも、明るくカラフルでめちゃくちゃペラい。

ペラいなんて言っちゃいけないのかもしれないけど、このペラさは狙いだろう。

ペラい画面の隙間を埋めるのが、哲学的(にみえるが、単なる言葉遊びにしか見えないこともない)なモノローグと短文。
フェルディナンがしたためるメモの言葉、それに絵画のショット。

フランス語がわからない日本人なのが残念に思えて仕方がないのは「言葉遊び」の方で、「愛」「死」「戦い」など思わせぶりな単語の羅列と組み換え・変化は、落語でいうところの「地口」のようなものなんでしょう。

高尚なようで高尚でない。
そこがミソ。
『気狂いピエロ』なんて思わせぶりな日本語タイトルが実はあまりよろしくなく、マリアンヌが何度も何度もフェルディナンをそう呼ぶのだけれど、ニュアンス的には「おバカなピエロ、馬鹿ピエロ」といった愛嬌を込めての呼び方。

ジャン・ポール・ベルモンド演じるフェルディナンは、『勝手にしやがれ』のミシェルの延長線上にあるように思えるが、決定的に異なるのは、フェルディナンがインテリ志向で軟弱、根性なしのヘタレ、だということ。
タフガイにあこがれるインテリヘタレ。

だから「馬鹿ピエロ」。
「兄が助けてくれる」というマリアンヌの言葉を信じてしまう「お間抜けピエロ」でもある。
(兄ではなく情夫だった)

最後は自暴自棄でダイナマイトを頭に巻き付け自殺を図るが、火のついた導火線から爆発へと瞬時にカットは変わるが、あそこは火を消そうとして焦ったんだよね、実は。
ということで、「まぬけな馬鹿ピエロの最期」というのが相応しい。

30数年前にフィルムで観たときには(ニュープリントだったが)あまり発色が良くなかったが、今回のデジタル2Kレストア版では明るくカラフルで画面の魅力が増大。
特筆はラストシーンで、「海と空が溶け合って・・・」というのが、フィルムではカメラがパンし始めたときから海と空の境界線がはっきりしない感じだったのが、パン当初は境界線がくっきりと浮かび、太陽をとらえた時点で「溶け合って」とひとつになる感じがよく出ていました。

笑うとときどき下品になるアンナ・カリーナは、ファム・ファタルにうってつけですね。