「赤色」の奔流・39年ぶりに鑑賞する・2Kレストア版
2022年10月8日に鑑賞。島根県民会館・中ホール。テクニスコープ・テクニカラー。100分。一部、英語。当日1000円。『2015年2Kレストア版』
映画館で観て以来、39年ぶりに鑑賞する。この会場は、完全にスコープサイズに合わせたマスキングは出来ず、上下に大きく「黒味」が残っている。よって、スコープサイズでも画面は小さい。
先日、ライオネル・ホワイト(1905-1985)の原作『気狂いピエロ(Obsession)』を読了した。
ジャン=リュック・ゴダールは、2022年9月13日91歳でスイスの自宅で亡くなった。「安楽死」である。理由は「疲労困憊」であるという。ゴダールは過去に幾度か自殺を図っているが、恐怖で出来なかったと言っている。スイスでは患者自らが致死薬入りの液体を飲み干すことなどで自死する「自殺幇助」が容認されている。スイスとの二重国籍者だったゴダールは、同国最大の自殺幇助団体「エグジット」のフランス語圏支部の医師から致死薬を貰い永眠した。
カラーが実に鮮明である。「赤色」の奔流。随所に「赤色」が使用されている。アンナ・カリーナ(マリアンヌ・ルノワール)の赤いドレス、ベルモンド(ピエロ=フェルディナン・グリフォン)の赤いシャツ、赤い車、赤い椅子・テーブル、ボートの赤い縁どり、車の赤いハンドル・内装、ピエロの日記の赤い文字・赤い紙、赤い血、ラストの赤いダイナマイト・・・。ベルモンドの虹色のシャツ。
本作は物語を語ろうとしていない。映像のコラージュである。そして映画へのオマージュがちりばめられている。
サミュエル・フラー「『悪の華』をパリで撮る。映画は戦場のようなものだ。愛、憎しみ、バイオレンス、死・・・つまりはエモーションだ」
この開巻のパーティー場面で、青一色の画面、黄色一色、金一色、薄い緑一色、青一色、各場面で女性たちが上半身裸でおっぱいが見える。
[登場する映画・文学・風俗など]
「大砂塵」(1954・監督:ニコラス・レイ)、ピエロ「セザル・ビロトー(著:バルザック)を読め」、『失われた時を求めて』、ベトナム戦争(ベトコン115人を殺害)、ルノワールの絵、モジリアニの絵、OAS(極右軍事組織)、アンナ「ローレル&ハーディでやるわ」、ラズロ・コヴァックス(1936年1月25日サントドミンゴ生れ)画面に登場する→撮影監督のコヴァックスではない。→「勝手にしやがれ」(1959)のミシェル・ポワカール(ベルモンド)が使う変名もラズロ・コヴァックスである。「弟のパスポートだ。離婚した母の名字だ」
「ニコラ・ド・スタールの自殺」=ロシアの貴族の息子でパリに亡命。1955年自殺。『ウィリアム・ウィルソン』、『地獄の季節』、『ポールとヴィルジニー』
ピエロが読むマンガ本『L'EPATANT, La Bande Des Pieds Nickeles ラ・バンド・ピエド・ニッケル、エピソード(1908-1912)』=クロキニョール、リボルディング、フロイシャール3人の冒険物語。
ピエロ「ミシェル・シモンが若い娘に狂う映画があった」→「パニック」(1946・監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ)→私の評価は「66点」今ひとつの出来、「My Girl Friday」
アンナ・カリーナの歌2曲目『私の生命線は短いの~』、カリーナがいつも持ち歩く「犬のぬいぐるみ」は背中にファスナーがあって中からピンクの口紅を取り出す。なるほど、ハンドバッグなんだ。オウムと小キツネ。
トゥーロン港→後ろに巨大な軍艦が見える。映画館のピエロ→ベトナム戦争の映像。次に、ムービーカメラを回すジーン・セバーグの白黒映像が流れる。映画館の少年は、ジャン・ピエール・レオである。
レバノンの亡命王女、「TWAのニース発タヒチ行」、ボーリング場。
ピエロ「俺は何者だ?大西洋にうたれた巨大な疑問符だ」