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草原の椅子
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”なぜ、自分はこうなんだろう”と、悩むときは誰にもある。とかく人生も半世紀を生き、漫然と毎日が過ぎ、それでも家族や仕事で思い通りにも行かない日々。それが不惑の時でもある中年期というものなのか。。この映画はそんな中年期に差し掛かった世代と、生き難い今の社会とを向きあわせるという難しいテーマに挑んでいる。 今の社会に漫然とした閉塞感があるのは、きっと多くの人が感じているだろう。景気もよくないし、給料も上がらないのと同時に、世間はグローバル化によって仕事がなくなるとはやり立てる。何気ない切迫感を感じながらも、それでも会社勤めな人はそんな世情を見て見ぬふりをしてやり過ごそうとする。そんな見ざる聞かざる状態でいると、なんとなく人間としても小さくなってしまう。映画の主人公、遠間憲太郎もそんな男なのだ。それでも、いきなり親友になろうという冨樫や、美人オーナー貴志子の出会いで徐々に周りが彩られていく。 物語は遠間とひょんなことから出会う少年・圭輔と、周りの大人たちとの関わりを中心に進んでいく。親から虐待を受け、口もきかない圭輔に、周りの大人たちの抱えるドンヨリとした闇の部分がうまく投影されているのだ。圭輔との関わりが、大人たちにとっては自分の心との対峙となる。よくその人を理解するには、その人の友達を見るとよくわかるというが、それと同じ構図が物語の大きな軸になっているのだ。ラストで、遠間が圭輔にかける「走れ、飛べ」という言葉は、そのまま自分自身にかけられているエールともとれるのだ。 難しい作品だが、全体的によくまとめあげられている。西村雅彦演じる冨樫というキャラクターが実にいい。飄々としていながらも、人としてこうありたいという芯の強い部分が、遠間に大きな影響を与えているのだ。カメラや写真という小道具も実によく使われていて、カメラ好きな僕にとってもたまらない作品にもなっている(笑) でも、非常に残念なのが、桃源郷であるフンザに舞台を移してからが全く拡がりを持たないことだろう。物語としても非常に重要なはずなのに、フンザという場所が主人公たちに何を与え、決別させた場所なのかが全く伝わらないのだ。前半の組み上げが見事すぎるだけに、この後半がとても残念でならない。
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