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鑑賞日 2013/02/16  登録日 2013/02/16  評点 80点 

鑑賞方法 映画館/東京都/丸の内ピカデリー 
3D/字幕 -/-
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現代っぽくないところに映画らしさがある映画

山田洋次監督作品は「おとうと」以来だけど、ほんま凄いなと思った作品。かいつまむと田舎から両親が出てきて、帰っていく、ただそれだけの物語(後半に少し展開はあるけど)。でも、東京で田舎の両親が起こす行動や、家族の対応の細々としたところが、ああ、あるよねーと思わせる光景ばかり。こうしたありがちなエピソードを紡ぐことで、後半の味わいが大きく出てくるのだ。

僕はこの映画で注目したいのが、妻夫木聡演じる末っ子・昌次とその彼女・紀子の描写。末っ子の典型である、デキの悪そうで、最後まで両親に心配をかけるタイプ。それを彼らは好演はしてるのだけど、今どき、こんな子いないでしょと正直思う。デキが悪いけど、コツコツ真面目で、紀子のようないい彼女(演じる蒼井優の魅力もそうなのだけど)もいる。親との会話もすごくしっかり丁寧。天真爛漫を絵に描いた様。長男や長女は家庭もあり、それなりに自分たちのことをやらないといけないという保身的な描写はある程度理解できるけど、対比となる末っ子もいい子過ぎて、現代(いま)という時代から見れば、桃源郷のような幻想家族に思えてくるのだ。

でも、山田監督はあえて、こんな桃源郷のような家族像を今の時代に描いているのだと思う。前作「おとうと」のほうがどちらかと言うと世知がない今を捉えていただけに、今一度、小津の「東京物語」のような家族像を現代という舞台で描かねばと思ったのだと思う。作品の現実感云々ではなく、そういう狙いを考えると、この作品は120%上手くいっている。素直に人を想い、好きになっていく。こういう純な気持ちに今、立ち返ってもいいのではないだろうか。