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鑑賞日 2013/10/09  登録日 2013/10/10  評点 54点 

鑑賞方法 映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
3D/字幕 -/-
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緒形拳のためにあるような映画

 坂根藤吉(緒形拳)はダイナマイトを爆破させ,夫婦を殺したことで警察に逮捕された。更に調べてみると,彼の家の床下から妻の遺体が見つかり,さらには息子まで自分の手にかけていたことが判明する。留置場で自殺を図るが死に切れず,あろうことかその後脱獄して行方をくらませてしまう。何故,4人もの人を殺さねばならなかったのか?殺しに至る経緯は映画では少しずつ明らかになってくるのだが,結局は坂根のかっとなる性格によるもののように思われる。
 脱獄後,色々な飯場を渡り歩くうちに,飲み屋のおかみをやっていた内藤ちえ(藤真利子)と知り合う。夫に逃げられたちえは坂根と同郷(高知)であったこともあるのか,二人の間は親密になっていく。一方,刑事真壁(川谷拓三)は坂根を執拗に追いかけている。包囲は狭まり,手配書が行き渡り,坂根は頻繁に居場所を変えなければならなくなっていた。そして…。

 好色でありながら魅力ある男…本作の坂根のような男を演じさせたら緒形拳ほど適役な人はいないなと思わせられる。いつもながら,絶妙の演技だ。凄いなと思う。本作はまさに彼のための映画だと言えよう。
 坂根を取り調べ,今は引退した刑事である大村崑がふとこんなことを洩らす。坂根の周りにはろくな女がいなかった。自分のことだけしか考えないような女だ。彼はまともな女と一緒にさせてやりたかったよな,と。そのまともな女というのが内藤ちえなのだろう。しかし,それはもう遅すぎたのだ。
 彼にとって最悪の女だったと言えるのが仙波弘子(松本伊代)だろう。若さを利用して近づき,彼の金をむしり取りながら,さっさと別人の元に嫁いだ女。松本伊代は頑張ってはいるのだが…最初に二人が出会うシーン。松本伊代が転び,太ももを晒して緒形拳を誘うシーン。これはちっとあんまりなんじゃないかな。あまりに拙くて,笑ってしまいますよ。重要なシーンなのに,色気も何もあったもんじゃないよ(笑)。逆に言えば,ファンにとっては見所ではありますけど(笑)。
 緒形拳の化粧の意味が今一つよくわからないし,殺人を犯すまでに付き合った女の性悪さが今ひとつ伝わってこないのが残念な気がします。