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アイの歌声を聴かせて
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AIがもたらす未来とは? この問いに「AIの脅威」で答えた作品は少なくない。ある種の定番と言える。『アイの歌声を聴かせて』はそんな「AIもの」に一石を投じつつ、ミュージカル映画というジャンルにも新たな可能性をもたらした。 監督は『イヴの時間』『サカサマのパテマ』の吉浦康裕。舞台は近未来の日本、多くのAI機器が身近に存在する実験都市。主人公の女子高生サトミはクラスで孤立していたが、シオンという少女の転入により転機をむかえる。シオンはサトミに「いま、幸せ?」と問うと、唐突に歌いだす。彼女の正体はサトミの母が作ったAIの実験機で、サトミは母の実験を成功させるべく、気づいてしまったクラスメイトと関わっていく。 まずこの導入がお見事! 舞台や人物、AIの設定、サトミの状況や動機など、必要な情報を短時間に過不足なく詰めている。それが説明的でなく、映像と最小限の台詞とを通じて、自然に提示される。さりげなく伏線まで張るという周到ぶりだ。 そして何と言っても「歌」が印象的。本作は近未来SFかつ青春群像劇で、それをミュージカル風に仕立てた点がミソ。「いきなり歌うよ」というお約束を、SF的な設定を利用しつつ逆手にとったアイデアは秀逸だ。また終盤に歌とシオンにまつわる「秘密」が明かされると、それまでの伏線や違和感が、気持ちいいくらいにつながっていく。シオンを演じる土屋太鳳の名演と歌声も相まって、感情が激しく揺さぶられる。めちゃくちゃエモい。私はボロボロ泣いてしまった。 幸せとはなにか。シオンはなぜ歌うのか。そうプログラムされたロボットだから? AIがもたらす未来とは? 「アイうた」の答えは「希望」である。「そうはならんやろ」と言いつつ、「でもそうなったらいいな」と思わずにいられない未来。尊く美しい可能性を描いた。「最後にきっと、笑顔になれる」――コピーに偽りなしの本作を「愛と希望のSF」と呼びたい。
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