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鑑賞日 2026/03/22  登録日 2026/03/23  評点 98点 

鑑賞方法 その他/大島渚賞 
3D/字幕 -/-
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家父長制を支持する民主主義

映像の美しさ、子役を含む俳優たちの美しさを物語の複雑さがかき消すというアンバランスな作品。武満徹の音楽も強烈。

大島渚らしさとは何か?を考える。それはおかしなこと(矛盾)と真剣に向き合うこと。「絞死刑」のコミカルさは、演じている役者の真剣さの裏返し。本作「儀式」では、花嫁のいない結婚式が真剣に執り行われる。しかもその矛盾を政治とか権力を前に支持する人々がいる。花嫁のいない結婚式、誰も疑問を言わない参列者、それを成立させる権力という三層構造。

久しぶりにこの映画を見て最も恐ろしくなったのはこのシーン。家父長制がもたらす停止した思考。

権力がおかしなことをやっていても、権力者(この映画では佐藤慶さん演じる祖父)が決めたことを大勢が支持してしまう。まさに日本の家父長制を象徴するような現実。家父長制を支持する民主主義とでも言おうか。政財界は婚姻関係でその組織を盤石化し、戦争責任も取らず政権に居座り続ける者たち。

この映画に出てくる人物の意図的に消された眉毛は、まさに個人をかき消すものだ。個人を消すことで、矛盾する組織に隷属する者たちの象徴。

大島渚は、「戦後は終わった」と宣言され、高度成長に進み浮かれる社会に対し、すでにこの頃から警鐘を鳴らしてきた。しかし現実は核家族化が進み、ここに示す家族という組織すらもなくなり、その代わりに都市化がカルト宗教を生み出す。これらの教団の票で与党政権が維持されている現代。

中村敦夫さん演じる圧倒的な存在感を示す輝道は、こうした現実を自らの死をもって断罪する。まるで三島由紀夫のように。

2020年代のいま、戦前が再び始まろうとする時代、この映画が示す矛盾は、戦後の折り返し点で示される日本のぶざまな結論だ。

ちなみに、この映画に時々出てくる野球はアメリカの象徴だ。アメリカから与えられたルールに拘束される現実をも示す。近代(野球)と前近代(家制度)のねじれ。

大島渚は、家が崩壊した後に、より見えにくい“儀式”が社会に拡散することまで見抜いていたのかもしれない。