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鑑賞日 2026/03/07  登録日 2026/03/08  評点 73点 

鑑賞方法 映画館/東京都/TOHOシネマズ日本橋 
3D/字幕 -/字幕
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就職戦線、殺し合い

製紙会社をクビになった中年男性(イ・ビョンホン)が、次の就職先面接のライバルを次々と殺し、就職した先に同僚はなくAIの操作だけの仕事だったというコメディ。

パク・チャヌクの極めて計算し尽くされた見事な演出が光る。チャヌクらしい残酷さとカメラワーク、そして音。とくに音響効果がすさまずい。歯が痛い、風が吹く、タバコの火、酒を注ぐ音など、音が過大に印象を強める。

犯罪を犯した夫の家に、警察が来る。夫は覚悟して連行されようとするが、実は息子の万引きの捜査だった、というようなコミカルなシーンが次々と出てきて笑わせる。主人公が犯す殺人も素人っぽくてドタバタしている。殺人現場の家をカメラが引いて、そのまま上に移動して家を見下ろす、というカメラワークも強烈。アルコールを飲み干したグラスから見える表情。トイレのガラスに映る夫と妻の多重性など。

「お嬢さん」もそうだったが、人体を極限まで追い詰める表現。例えば殺した人物をチェーンソーで刻むのをやめて、ワイヤーで塊にしてしまう造形など。美術的な表現が見事だ。

妻(ソン・イエジンン)が体当たりの演技を見せていて美しい。夫の犯罪に気づいて、それを支える決意をし、息子にも嘘を教える。美しさとコミカルさ、そして貪欲なまでに家庭を守ろうとするクールさ。

殺す男も殺される男たちも、製紙業という同じ仕事でしか生きられない。ある妻が夫に「クビになったことより、クビになって何もしないことが問題だ」と大音響でチョー・ヨンピルの曲が流れる中で言うシーンがテーマを抽象化する。

ここに出てくる選択肢が限られた男たちの存在、それは中年男性のある種象徴でもある。社会に適合できない者たちがドロドロになって生きていくしかない現実を残酷且つコミカルに描く傑作だ。