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鑑賞日 2025/12/05  登録日 2025/12/06  評点 30点 

鑑賞方法 映画館/東京都/新宿ピカデリー 
3D/字幕 -/-
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『野良犬』の影ースズキと類家

在日として生まれた原作者、呉勝浩氏の話題作。

原作者が在日であることで様々なビハインドがあった、という背景が佐藤二朗さん演じるスズキタゴサクに投影されているとしたら、彼が内面に持つ怒りが爆発(爆弾)による破壊衝動だというのは納得できる。この国は生きづらい三流国になりさがった。そのことで貧しさに麻痺してしまった。

スズキという名も意味深い。どこにでもある名前とは、これが誰にでもあることだ、という象徴とも読み取れる。どこにでもいる破壊衝動にある貧しいスズキがなにかに突き動かされて肥大化するのは正常だ。

対する山田裕貴さん(名古屋生まれドラゴンズファン)演じる類家というあまり聞かない名前の警部。彼はスズキを尋問し対峙する。しかし、お互いの中には世の中からスポイルされている内面が重なり合う。一方は爆弾魔となり一方は警察へ。この対比は黒澤明監督の「野良犬」に似ている。戦争に負けて返ってきた刑事と殺人鬼の二人は、同じ境遇だった。人間は根底が同じなのに、何をきっかけに命の価値に格差をつけるようになったのか。

渡部篤郎さんが尋問にしびれを切らしてスズキが自分に向けた指を掴んで骨折させてしまうシーンも印象的だ。怒りや憎しみで対立すると相手を殺める。さらに、加藤雅也さん演じる変態行為がバレて自殺する刑事も極めて印象的。そしてこの二人もまた、刑事という仕事で内面が崩壊している。市民の命を守るべき警察の多くが病んでいる、という前提条件があまりにもリアルだ。だから刑事になりたい巡査が命がけで働き、自分の足が切れるほどの危険を犯してまで手柄を立てようとする姿勢に見る側は酔いしれる。

しかしである。

この映画は危険な映画だ。多くの人がこの映画を高く評価していることを危険に思う。まさにテレビ業界のプロパガンダに乗せられた印象操作だ。爆弾魔が貧困から生まれ、それを阻止しようとする警察が心理戦で互角に渡り合うという物語は、エンタメとしていかにも高揚する部分もあるが、スズキが警察が及びもつかないモンスターであることにしないと物語として破綻している。警察が市民を守ったような印象を与えているとしたらお門違いだ。このドラマの本質はもっとほかにあるはずだ。