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スプリングスティーン 孤独のハイ ウェイ
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モノクロのシーン、冒頭で自転車に乗る少年が家に着き、暗い表情のまま母親が運転する車へ乗り込む。そして二人は、酒場に入り浸る父親のもとへ向かう。声をかけても反応もしない父。この光景はアメリカの地方の一家庭の話であるはずなのに、どこか日本の町の片隅でも見たような気がしてしまう。家庭の問題を“家庭内のことだから”と片付け、沈黙のまま放置してきた日本社会の影が重なるからだ。 「アドレセンス」で厳しい父を演じたスティーブン・グレアムは、ここでも圧倒的。スプリングスティーンの心に巣食う“父の残像”そのものが、映画全体の大きなうねりとなっている。 ブルースが読みふけったフラナリー・オコナーの小説、そしてテレンス・マリックの「地獄の逃避行」。彼はそこに登場する犯罪者たちの声を一人称で語る「ネブラスカ」という暗いアルバムへと昇華していく。創作の過程で心を寄せた女性とも関係が途絶えてしまう。(“ボーン・イン・ザ・USA”のダークサイドを覗き込むような展開には驚かされる。) 彼を支えるマネージャー役のジェレミー・ストロングも素晴らしい。「アプレンティス」で悪徳弁護士を演じた男とは思えないほど、耐えに耐えブルースに寄り添う唯一の理解者として存在感を放つ。 ブルースは幼い頃のトラウマから、ロックという手段で逃走する(ボーン・トゥ・ラン)。だが「ネブラスカ」のレコーディングのために故郷へ戻った瞬間、逃げ切ったはずの記憶が再び襲いかかる。彼は、自分も父親と同じように罪深い存在になるのではないかと恐れ、愛していたフェイとも距離を置く。日本の“男社会”でもよく見られる、負の遺産を自分もまた受け継ぐのではという恐怖だ。 そしてラスト、長年憎んできた父親の膝へ静かに頭を預ける和解のシーン。息をのむほどの静けさだ。結局のところ、父と子は“同一人物”なのだ。似ているからこそ衝突し、傷つけ合う。しかし似ているからこそ、最後に認め合える。 多くのスターが栄光の頂で転落する。「スター誕生」が教えるように、名声は破滅の入口にもなる。ブルースも例外ではなく、父の影は栄光よりも長く彼を苦しめた。そしてその現実は、決してアメリカだけの物語ではない。
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