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ブルーボーイ事件
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最後に裁判長が「幸せですか」と問い、サチが「皆さんの幸せとは違う」と応える──この余韻の深さが、本作のテーマを最もよく示している。 映画の素晴らしさは多岐にわたるが、とりわけ検察官の一貫した姿勢の背後に、戦争の影が丁寧に忍ばされている点が特に印象的だった。彼は出兵し、多くの戦友を失った。その体験が「この国の未来を守る」という頑なな正義感へと結びついている。しかし、その正義がそもそも“お門違い”だったことに、彼自身は気づいていない。国家の嘘によって戦地に送り出され、仲間を失ってきた。その構図は2025年の今も変わらない。国家の論理に組み込まれ、その一部としてブルーボーイを「ゴミ」のように見下ろす検察官を、安井順平さんは驚くほど精緻な演技で体現している。本当に素晴らしい俳優だ。 また、検挙された医師がサチに残す言葉にも、普遍的な祈りのような重さがある。「体を変えても変わらないものがある」。それは個人ではなく、むしろ社会そのものの姿なのかもしれない。排外主義が蔓延する現代において、山中崇さん演じる医師の言葉は鋭い危機感とともに胸をえぐる。 中村中さん、イズミ・セクシーさんの圧倒的な存在感も作品を支えているが、サチのパートナー・篤彦(前原滉さん)の揺れ動く立場も実に人間的だ。親に嘘をついてまでサチと生きる道を選ぶ。その二人が最後にテーラーで向かい合い、弁護士の視線に気づいたサチが浮かべる笑顔は、近年まれに見るほど美しいショットだった。性別を越えた「生の肯定」をこの瞬間に置くことで、映画全体が大きな救いを得ている。 この事件から国内で性転換手術が施行可能になるまで、さらに30年の歳月が必要だったという。その重みを我々はどれほど理解しているだろうか。そして憲法13条「幸福追求権」が、多くの人にとってどれほど重要な権利なのか──この作品は静かに、しかし強い力で問いかけてくる。大傑作である。
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