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みんな元気(1990)
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失礼かもしれないが、のちに作られたアメリカ版とはまるで別物だ。比較すること自体ナンセンスに思えるほど、トルナトーレの狙いは小津の『東京物語』にあるという。タルコフスキーやアンゲロプロスと活動したトニーノ・グエッラの脚本を得て、若干34歳のトルナトーレが極めて芸術色の濃い映画に仕立てている。 マストロヤンニ演じるマッテオの瓶底眼鏡越しの視線には、過去と現実が交錯する。夢に現れる子どもたちが黒いクラゲのように引き上げられるフェリーニ的幻想、大量の鳥が舞い飛び死んでいく衝撃的な光景、道路に現れる鹿が巻き起こす渋滞、孫とホタルに囲まれ街を見下ろす幻想的なシーン……どの場面も偶然ではなく、すべてがマッテオの内面と家族の真実を映す意思を持っている。 さらに、群衆が電話の前で止まるモブシーンの緻密さも特筆に値する。途中で登場する、テレビアンテナを破壊しようとする自殺志願者の男もまた、長男の死という知られざる現実を予告する伏線として静かに効いてくる。これらの象徴的瞬間が、物語の終盤に向けて緊張感を静かに高める。 孫に「子どもができた」と告白されたとき、マッテオが伝える「赤ワインはぶどうでも作れる」という言葉も印象的だ。理想の家族像を子どもたちに求め続けた父が、孫には人生の選択肢の多さと柔軟性を伝えようとする瞬間である。 シシリーという土地は、映画の文脈では日本でいう沖縄のような感覚かもしれない。本土で活躍する子どもたちを誇りに思う父親と、隠れるように自分たちの人生を生きる子どもたちの対比。マッテオの目線は常に家族を包み込み、最後に「普通の子どもを育てろ」と孫に伝える。 ラスト、赤ん坊に札束を握らせるおまじないのような場面は、希望に満ちた未来の象徴だ。若き監督が大物俳優やスタッフと向き合い、描き切った普遍的な家族の物語の重みを、改めて感じさせる映画である。
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