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ワン・バトル・アフター・アナザー
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冒頭、黒人女性がカメラに向かって歩いてくる。その瞬間からこの映画の方向性が決まる。彼女はディカプリオ演じる主人公の妻となる革命家であり、物語の核を握る存在だ。前半は彼女を中心に展開し、後半は娘ウィラへと焦点が移る。つまり、この映画は政治劇であると同時に、母と娘の物語でもある。 母はまるでブラックパンサー党の象徴のようであり、ショーン・ペンが所属を望む秘密結社はKKKやネオナチを想起させる。だが、これはアメリカの話にとどまらない。移民を排除し、異質な存在を恐れ、狭い国民意識に閉じこもる傾向は、まさに現代日本にも重なる。排外主義を掲げる政党が支持を集める現状は、決して他人事ではない。 革命を志す者たちの姿に、私は強く共感する。ウィラが師事するメキシコ人のカラテ先生(ベニチオ・デル・トロ)の存在感も圧倒的だ。政府軍との対立が激化する中盤のクライマックスは、PTA作品の中でも屈指の緊張感を放つ。教会に匿われたウィラが見せる恐怖と希望が交錯する表情が忘れられない。 そして、ネイティブの殺し屋がウェラを守るために命を捧げる場面。彼は「未成年は殺さない」と宣言しながら、一度は組織に従い、やがて心変わりして彼女を救う。彼の中で、自身の出自と少女への希望がせめぎ合い、最終的に人間としての尊厳が勝つ。アメリカ社会が抑圧してきた“他者”の象徴として、彼の死は深い意味を持つ。 ラストのカーチェイスは圧巻だ。かつてのニューシネマが直線的なハイウェイを疾走したのに対し、この映画は上下に曲がりくねった道を選ぶ。混沌とした時代の象徴だ。血まみれのショーン・ペンが生き延びる姿は、ツーフェイス(バットマン)のように分裂した現代人そのものを映す。最終的に彼が組織に焼かれる瞬間、革命の夢もまた燃え尽きる。 なぜ今、PTAはこの映画を撮ったのか。それは、世界が再び抑圧と排除に傾いているからだ。「シビル・ウォー」「ウィキッド」「スーパーマン」など、近年の作品群が描くのは権力による暴力と沈黙への抵抗。アメリカが愚かであるのは確かだが、その愚かさを映画で告発できる自由を持つ点で、日本よりはるかに健全である。 日本には、この映画のような“怒り”がない。権威に屈し、沈黙を選び、異端を恐れる国。だからこそ私はこの作品を革命の寓話として支持する。たとえ日本で理解されなくとも、この映画が突きつける問い――「あなたは何に抗うのか」――を、忘れてはならない。
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