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ジョーズ
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ディズニー+で「ジョーズ」製作から50年を記念したドキュメンタリーを観た後、久しぶりに本編を再鑑賞した。スピルバーグが「この作品で予算を超過し、“映画人生は終わった”と思った。でも実は、そこから始まった」と語る言葉は、この映画の象徴のようだ。 良い映画とは、何度も観られ、異なる視点で解釈されるものだと改めて思う。 ジョーズの模型を制作するために極秘で集められた7人を、スピルバーグは「七人の侍」と呼んだという。冒頭の、女性がジョーズに襲われる有名なシーンでは、本来模型を使う予定だったが間に合わず、演出を変更した。結果的に、何が襲っているのかわからない恐怖が倍増し、映画全体のトーンを決定づけた。 ジョーズ本体と同様に、その捕獲を請け負う男・クイントの登場も、じらされる。映画の前半では黒板に爪を立てて人々を振り向かせるだけ。やがて、署長のブロディが彼に依頼し、ようやくその本性があらわになる。クイントは、サメに食われるという最期を迎えるが、それは欲望への報いとも、自らの船・オルカ号とともに沈む殉教とも読める。いずれにしても、このドラマで最も“邪悪”な人間的存在であることは間違いない。 この映画の底流には、当時のアメリカ社会の不安が横たわっている。ベトナム戦争の泥沼化、ウォーターゲート事件への不信感。その象徴が、市長のキャラクターだ。人命より経済優先という姿勢の結果、子どもが命を落とす。怒りに震えた母親がブロディ署長を平手打ちするが、本来その怒りは市長に向けられるべきだろう。 ドキュメンタリーで、映画監督ジョーダン・ピールは「この映画は資本主義崩壊のメタファーだ」と語っていた。冷戦構造の裏で、ソ連のブレジネフやキューバのカストロといった存在がプレッシャーとしてのしかかっていた時代。その影が、巨大なジョーズに重なる。 海が嫌いなブロディ署長は、ニューヨークから左遷された男だ。その彼が、最終的に命がけで海に飛び込み、ジョーズを倒す。その展開には、皮肉と救済が同居している。 「ジョーズ」は、カウンターカルチャーが退潮し、力によって悪を打ち倒すヒーロー像──つまり、体制側(警察や軍)が主導するアクション映画の時代への橋渡しとなった。 この作品の後に続くハリウッドの変化を考える上でも、忘れがたい一本だ。
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