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鑑賞日 2025/07/18  登録日 2025/07/18  評点 77点 

鑑賞方法 映画館/東京都/ヒューマントラストシネマ有楽町 
3D/字幕 -/字幕
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「演じることは、殺すことか」

「エレファント・マン」と同じく、顔という“見た目”を通して他者との関係を問う映画だが、本作「The Different Man」はより風刺的で、どこかユーモラスに「演じること」への希望とその裏に潜む矛盾を描き出す。

予告編では、エドワードが一気にハンサムな顔に生まれ変わるように見える。しかし本編では、顔が変わるまでの苦悩と葛藤が重々しく描かれる。かつては普通の顔だったが、病により容貌が変化したエドワード。社会の冷たい視線の中で彼は徐々に内向的になっていく。そんな彼の隣人が突如自殺。その死が、エドワードに“変化”をもたらす。

おそらく天井から落ちてきた腐敗した足は隣人の死体の一部であり、「演じること」が生と死をつなぐ行為であることを象徴している。以降、彼はエドワードを“殺し”、ガイという新しい自分として生きようとする。

ラストシーン、レストランで彼を見つめる女性は、自殺した隣人の元恋人らしい。彼女の姿が、ガイに向けられるまなざしとオズワルドの「相変わらず変わらないな」という言葉に重なり、過去からの逃走の無意味さが浮き彫りになる。

本作の核にあるのは、「演じること」とは何かという問いだ。それは希望であると同時に、自己を裏切る行為でもある。他者のまなざしに翻弄されながらも、内面は変わらない。醜いエドワードを“抹殺”し、ハンサムなガイとして生きる主人公は、ある意味で殺人者であり、演劇の世界で過去を再演するオズワルドに対して敵意を抱く。その狂気は、不動産会社で働き、家庭を持つ“社会的役割”としての自分にも投影されていく。

「顔を変えても中身は変わらない」──この残酷な真理を、映画は冷ややかに、だが見事に描ききっている。