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鑑賞日 2025/07/05  登録日 2025/07/05  評点 89点 

鑑賞方法 映画館/東京都/Bunkamura ル・シネマ 
3D/字幕 -/字幕
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Break a leg

なぜ「ロミオとジュリエット」なのか?主人公のダンがシェイクスピアのラストにいちゃもんをつけたり、妻が庭に花を植えるのに怒りを爆発させたり、大の大人が内気で引きこもっている理由が全く語られずにドラマは進む。まるでミステリーだ。

妻ともぎくしゃくし娘は学校で先生を突き飛ばして退学。そんな娘がすらすらとシェイクスピア劇がこのドラマの大きな背景にある。この家族が対立するものとはなんだろう。

演劇とは型にはめることから始まるが、途中でグループセラピーのような遊びが行われる。劇団で主人公が自分の家族のことを告白するシーンは胸に迫る。劇団員がひとりひとり彼に抱きついてひとつになる。娘に浮気を疑われて演劇であることがバレたあと、カラオケで娘がはち切れるシーンも素晴らしい。全体に暗く地味な印象だがコメディ仕立てになっていてとても親しみやすい映画。

家族三人で遊園地で遊んでいると、向こうにキリンの大きなぬいぐるみを持っている少女がいる。このあたりから後半は裁判と演劇の両輪になり、主人公の本音が少しずつ語られてゆく。

こうした試練を乗り越えて、最後に「ロミオとジュリエット」が演じられ、ロミオを演じた主人公が舞台の袖を見ると影が見える。原題「Ghost light」に照らされて影になっている人物を追いかけて、主人公はまさに生まれ変わるのだ。全て終わって最後に平凡な日常の家に帰ってなんの説明もなく映画は終わるが、この溢れ出る余韻を止めることができない。

きっと世の中には家族や恋人との問題を命がけで悩んでいる人たちがいることだろう。そういう方たちにこの映画を捧げよう。そして

”Break a leg”(成功を祈る)