人種のるつぼ

冒頭、白い教会にかけこむ人物が最後に悪魔と契約するギターの音を奏でる。天才ロバート・ジョンソンを現代に蘇らせ、バディ・ガイにダブらせる演出は言葉を失う驚きだ。この映画はまるで人種対立を描いたと見せかけて、”人種のるつぼ”と化したアメリカそのものを描くものではなかろうか。

禁酒法時代、アル・カポネの部下として名を馳せたスモークとスタックの二人が開店するダンスホールで、ファンクからメタル、ラップなどが入り乱れて狂うように演奏されるシーンがある。この突拍子もない演出こそアメリカそのものだ。ちなみにバンパイアたちは、疎外されたアイルランド人だ。

移民の国にあって人種を超えて結ばれた音楽の絆が、混沌とした社会を如実に描き切る。吸血鬼だろうがなんだろうかこのカオス（混沌）こそがアメリカであり移民の国なのだ。

ライアン・クーグラー監督が対立を演出しながらまるで違う世界へ我々を誘おうとする映画は、たったいま世界に落とされているミサイルの音を反響させてはいないだろうか。