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鑑賞日 2025/05/19  登録日 2025/05/20  評点 66点 

鑑賞方法 VOD/U-NEXT 
3D/字幕 -/-
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インスタント政治かどうか?

大島新監督の「なぜ君」「香川1区」ほか想田和弘監督の「選挙」そして「劇場版センキョナンデス」など、選挙の映画がこれほど面白いと思えるのはなぜだろう。

タイトルですでに結果は明らかだ。だから区長になる岸本聡子さんという人物と、撮る側の監督の意思(自分の家が開発でなくなる)が重なり合う部分をどう映画的にとらえるか?という部分だろう。岸本さんが欧州の市民運動を通して活動してきひとつの成果がここに示される。

しかし・・・

昨今のSNSを(ときには犯罪的に)駆使したインスタント政治、あるいは落下傘政治と岸本聡子に違いがあるのか?という疑問がもたげてくる。支持者の多くが「なんとなく」とか「ひらめいた」と言って岸本さんを”推し活”がごとく支援する。政策などではなく、ただただ岸本さんを妄信的に支持する女性の支えで、僅差の勝利を手にする岸本さん。

「香川1区」でも心の底から感動した選挙で勝利する瞬間を、今回はなぜか冷めた思いで画面を見届ける自分がいる。

しかし、岸本さんはそれを見透かしたかのように全く感動を表に表さず、当選しても淡々と「当選するとは思ってなかった」とか「これから」と冷静に、全く感情を交えることもなく話す姿に強さを感じた。

当選という結果のあとを追うシーンがこの映画の最も重要な部分だと思う。これがなかったらこの映画は他の選挙映画と大きく変わりはない。まず当選した区長に代表質問をする元与党側の議員に傍聴席から”恫喝だ”との罵声が飛ぶシーン。そしてこのあと区議会議員選挙で、岸本さんを応援した女性たちが様々な党や支援団体を背に選挙戦を戦うシーン。

いま政治は極めて混迷していると思う。ラストで示された「恫喝政治」と「市民運動」という二文法は、必ずしもこの映画を評価するのにふさわしくないかもしれないが、政治のひとつの在り方として、岸本聡子さんに注目してみたいと思わせる作品だった。