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鑑賞日 2025/04/19  登録日 2025/04/19  評点 88点 

鑑賞方法 映画館/東京都/TOHOシネマズシャンテ 
3D/字幕 -/字幕
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Himself

予告編は見ていたが、ほぼ予備知識ゼロで鑑賞。冒頭、ささやかな音のあと、ステージに並ぶ人たちが一歩踏み出してお辞儀をして大喝采を浴びる。受刑者が並び独房に向かい、シンシン刑務所の廊下を下から見上げるカメラが映すいびつな世界。刑務所の中を時々通る記者の風景など、アクセントが利いた素晴らしい映画。最初から最後までウルウルしながらドラマを追いかける。

コメディではない。予告編からは、刑務所の人々が舞台を成功させる物語のように感じさせるが、まるで違う。すでに彼らは舞台経験がある人たちだ。そこに新たに現れるディバイン・アイ。

紆余曲折がありながら、オリジナルのドラマを成功させようとする彼らの熱意に終始心が奪われる。しかし新たに加わったディバイン・アイの心を開かせようとするディバインGとその仲間たち。

中でもGの大親友だったマイク・マイクが突然亡くなるシーンのショック。そして恩赦尋問でGに支援されたアイの出所が決まり、Gが取り残される残酷。冤罪で受刑しているGはまるで旧約聖書の「ヨブ記」。よい行いをしても救われない、神から与えられた試練。

実話であるこの映画は要所に実際の舞台映像を取り込み、臨場感をより高めようとする。自暴自棄になったGを今度はアイが慰めるシーンは胸が張り裂けそうだ。

映画を鑑賞中、それぞれのキャラを見事に演じる彼らを冷静に見つめることができなかった。何より全てが終わってテロップに流れる俳優の名前の下に書かれる”Himself”の文字。この映画を構成するほとんどの俳優が実際の受刑者であることを知ってとめどなく涙があふれる。聞けば受刑者の8割は判決が下されていないアフリカ系の方々だという。

そうか、

この映画はそのことを示そうとした映画だったのだ。