壮大なる輪環構造

このドラマに出てくるおびただしい数の旧家の人々、陣内家は真田家をイメージしているという。いわば負け戦を経験してきた血筋で、ここが「七人の侍」と重なる部分。そしてもうひとつは「旧家」の考え。

古くて広い屋敷が示され、大勢で食事するシーン。あるいは栄おばあちゃんが亡くなって朝顔が並ぶ縁側をカメラが移動しながら、人々背中を映すシーン。こうしたシーンは、なかなかアニメで描かれてこなかった貴重なシーンだと思う。

反面、物語は架空の世界ですべてのアカウントがＡＩに乗っ取られるというもので、これは現実でもすでに起きていることだ。その名も「オズ」は、言うまでもなく「魔法使い」からきていて、実はあの魔法使いは人間だった、というオチもこの映画の示唆するところだ。人間が作ったＡＩに社会が脅かされる輪環構造。昨今のありとあらゆる映画や小説などでも扱われている現実世界。デジモンからここにフォーカスしてきた細田守監督の意思が伝わる。

「儀式」で中村敦夫さん演じる輝道はこの映画の侘助であり、旧家の重たいしきたりからドロップアウトした人物が、旧家に対して反乱を起こす。（ここでは侘助の罪は最後に問われないが・・・）侘助が古い因習や慣習、あるいは固定観念というものを破壊する行為が、最後に衛星が古い家の近くに落ちて温泉が出る、というのはいかにもアニメらしい結末ではあるが、科学の進歩が人類に刃を向けるのを、旧家の落人が団結して守り切るという美談には、もう少し複雑で深刻な社会の病巣を示していると見ることもできよう。