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鑑賞日 2025/03/21  登録日 2025/03/22  評点 75点 

鑑賞方法 映画館 
3D/字幕 -/字幕
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ひとつの世界

この映画をひとつのキーワードでまとめることはできないが、敢えて言うなら「抱擁」か。冒頭、兄や父と別れたくないノラが涙をボロボロ流しながら抱擁するシーンから始まり、ラストシーンではまるで違う抱擁が待ち構える。抱擁と抱擁の間に、社会の暴力構造が描かれる。それは誰もが子どもの頃にいちどは感じたことなのではないか。いじめられたくないからいじめる側にすり寄る。それは正しいことを捨てて、否定されるべき政権にすり寄る愚か者たちが見える。

友達ができないノラは休み時間に兄を探すが、兄は体の大きい生徒からいじめられている。兄はそれを他言するなという。がまんしきれずノラは父親にそのことを言うが、そのことで兄は友達を失い、八つ当たりでノラのことも遠ざける。

友達を失った兄は次にほかの生徒をいじめる側になる。それを必死に止めようとするノラ。この変化には父親の存在も垣間見える。家事をしているという父親のことをクラスメートが問いただす。ここで示される格差。友達の誕生日に呼んでもらえないノラが暴れる。ノラを理解してくれた若い先生も去り、ノラは孤立する。時々プールで息を止めるシーンは、映画全体の息苦しさを象徴するようだ。ふたりにどうやら母親がいない。家事をするという父親は失業中か。学校と怒ると手をつけられない父親の両方から迫られる抑圧は、まさに逃げ場のない「ひとつの世界(Un Monde)」だ。

それにしても、この子どもたちは本当に演技しているのか。カメラが子供に近づき表情だけを追う。そのリアルな表情とセリフ。これが演技だとはとても思えない。