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スイート・イースト 不思議の国のリリアン
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日本人が見てもわからない。町山智浩さんの事後解説があってもいまひとつしっくりこない映画だが、主人公のリリアンがたどるアメリカの東海岸には、さまざまなこの国の問題が潜んでいることを教えてくれる。そのほとんどは陰謀論だ。 セックスのあとのシーンから始まり、パンクな仲間に紛れ、ネオナチの教師の家から大金を巻き上げると、映画出演のスカウトを受け、撮影現場の銃殺事件から命からがら逃げ延びると、ムスリムの新興宗教団体に連れ込まれ、最後に戻った家のテレビでは戦争のような事件が起きている。 家を出るとアメリカ国旗が飾られていて、リリアンはカメラに向かって笑顔を示してカメラの前を横切る。 コメディではあるが、心底笑えるシーンはない。 しかしそこで展開されるヒヤヒヤしたシーンの連続は、アメリカという国そのものだ。手のつけられないヒヤヒヤ感。「鏡の国のアリス」をモチーフにしたロードムービーは、そのあまりの美しさに舌を巻く。 ところどころで赤い色が印象的に使われるが、この赤は左翼的で血の通った熱さを感じさせる。リリアンの美しい表情の中心にある赤い唇から放たれる言葉にはどんな意味が込められているというのだろうか。
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