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鑑賞日 2025/03/15  登録日 2025/03/15  評点 92点 

鑑賞方法 VOD/Amazonプライム・ビデオ 
3D/字幕 -/字幕
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芸術というファシズム

「ブルータリスト」に影響を及ぼしたと言われる映画。キング・ヴィダーの見事な映像表現はあとに譲るが、注目したいのは「ブルータリスト」のヴァン・ビューレン役(ガイ・ピアーズ)に当たるゲイル・ワイナンド(J・D・シモンズ似のレイモンド・マッセイが好演)。彼がヘルズキッチンの生まれで成り上がり新聞社の社主となり世論を動かすまでに上り詰める。まるで「市民ケーン」のように。そしてワイナンドがかつて批判した主人公のハワード・ローク(表情のないゲーリー・クーパー)の才能を認めると、世論が彼を非難し、最後ワイナンドはピストルで自らの命を落とす。このふたりを介在するのがわがまま嬢のドミニク・フランコン(パトリシア・ニール)。ドミニクはロークに惚れ最後もタワーのてっぺんに立ちはだかるロークを見上げる。

三角関係のドラマ、それはまるで「太陽がいっぱい」のような世界。

主人公のロークは個人主義者で自分の説を曲げない。逆に彼と真逆のピーターは世の中の流行を必死に追いかける。前半でロークに金を渡すが彼は受け取らず日雇いの仕事に落ちぶれる。ピーターは流行に乗ってのし上がるが壁に突き当たる。そのピーターをロークが影で支えるが、ロークの思い通りとならない建物をなんと爆破してしまうのだ。ロークほどのファシストはいない。

ポピュリズムとファシズムの対比。罪に問われたロークをめぐる裁判激を最後に置いて、ロークは陪審員に強いメッセージを送り無罪を勝ち取る。このシーンをキング・ヴィダーはカットしようとしたが、原作者のアイン・ランドが強く反対したシーン。主人公のロークが犯罪を犯してまで自分の個人主義を貫くことを支持する作品は、大衆迎合による同調圧力を強くはねつける印象を与える。