『N・P』は、アメリカで暮らした日本人作家・高瀬皿男による97話の自伝的短編集。だが、その著者・高瀬皿男は48歳で自殺を遂げていた。そこに未収録の98話目では、高瀬の娘・翠との近親相姦を扱っていると噂された。さらに、翻訳家の戸田庄司もこの本の翻訳中に自殺。庄司の自殺から4年後、庄司の恋人だった風美(クララ・スピリアールト)は、高瀬の遺した子どもたちと出会う。まずは双子の乙彦(宮村周志)と咲(ヴァン=デ=ステーネ・サールチェ)、それから異母姉の翠(川村美紀子)。社会的、倫理的、性的な規範を超えて生きる翠は、過去には実父・高瀬と関係を持ち、異母兄弟である乙彦とも恋仲になっていた。さらに翠は、庄司の形見の98話目の原稿を狙っていた。3人は本の中の物語の舞台である超現実的で閉ざされた世界に生きているかのようだ。そして彼らに寄り添う風美を通して、それぞれの脱出口を見つけようとしているようにも見える……。