1962年アメリカ・ルイジアナ州生まれのケヴィン・オークイン。彼は幼い頃から「男らしさ」を象徴する野球のようなスポーツには目もくれず、美しいメイクや女性の絵を描くことに夢中だった。しかし、封建的な60年代のルイジアナの人びとにとって、規範を逸脱した彼の行動は理解不能。彼はアイデンティティを求め、ゲイ差別から逃れるため、ニューヨークへと旅立つ。やがて、雑誌『ヴォーグ』の仕事を皮切りにファッションの世界に居場所を見つけた彼は、細眉やリップライナーを流行させ、光と影を駆使して立体感を出す「コントゥアリング」などの革新的なモードメイクで世界を席巻する。資生堂のブランドINOUIの全盛期のクリエイターとしても活躍するなど人気絶頂を迎える。だがその一方、頭痛や精神的苦痛にさいなまれ、鎮痛剤の服用過多による肝障害で40歳の若さで突然の死を遂げる。彼の人生の光と闇にスポットを当て、どんな人をもメイクで個性を際立たせたようとした「美の哲学」に迫る。