中近東からシルクロードを経て中国に渡り、日本に伝わった紅花(べにばな)。皇室で珍重されたその色は、明治時代に入り化学染料の台頭によって、また第二次大戦中では食料増産を理由に国から栽培を禁止され、継承の危機に瀕してきた。しかし誰に頼まれるでもなく、山形の小さな農村の片隅で密かに守り継がれていたことによって、今では世界的な農業遺産として注目され始めている。手間暇を惜しまず栽培された紅の染料からは、ごくわずかな紅色しかとれない。紅花をめぐる農家、染色家たちの様子、染色用に手作業で作られる《花餅》や《烏梅》といった独特の工程、紅花から作られる化粧品・紅猪口など、知られざる紅花の魅力が目の前に広がる。