北海道からわずか16キロに位置し、かつては四島全体で約17,000人の日本人が生活していた北方領土。しかし、戦後の1947~48年にかけて強制退去が行われ、現在、日本人は一人もおらず、日本政府は問題が解決するまで、日本国民に入域を行わないよう要請している。本作は、日本人が容易に足を踏み入れることができないこの北方領土の国後島で暮らすロシア人島民らの生活、島の様子をありのままに映し出す。寺の石垣、欠けた茶碗、朽ち果てた船や砲台など、島のいたるところに第二次世界大戦の痕跡があり、島民らはそれらを土から掘り返すのと同時に、記憶の中から日本人との思い出も掘り起こし始める。日本人墓地は土に埋もれたまま無残に放置されており、島民らの生活圏も整備が行き届かない家やゴミが散らばり、荒れ果てるなど、忘れ去られたかのように寂しい風景が広がる。政治に翻弄され、複雑な思いを抱える島民たち。現状を嘆き、率直に生活苦を口にする彼らの厳しい暮らしについては、日本ではあまり知られていない。ロシア側の主張に偏ることなく、島に暮らす人々の証言や生活の実態を映した本作からは、本当に解決すべき問題や住民たちの真の願いが見えてくるはずだ。