1933年2月、ベルリン。9歳のアンナ(リーヴァ・クリマロフスキ)は、兄マックス(マリヌス・ホーマン)や友人とともにカーニバルを楽しんでいた。しかし、その夜、クラシックのコンサートに行く準備をしていたはずの父(オリヴァー・マスッチ)と母(カーラ・ジュリ)は、出掛けないまま深刻な顔で話し込んでいた。翌朝、アンナは母から「家族でスイスに逃げる」と告げられる。実は、新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開する辛口演劇批評家だった父はユダヤ人であったため、“次の選挙でヒトラーが勝ったらヒトラー反対者への粛清が始まる”という忠告を受けていた。選挙が近づきヒトラーの勝利が現実味を帯びてくるにつれ、身の危険を感じた父と母は密かに逃避行の準備を始めていたのだ。持ち物は一つだけと母に言われたアンナは、大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみ、お手伝いさんのハインピー、食卓、書斎、ピアノ、台所……ひとつひとつに別れを告げる。それまで何不自由なく暮らしていたアンナの平和な家族の風景は一変、過酷な逃亡生活が始まった……。